表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

絶望の果てに

今日の投稿はここまでです。

日曜日、昨日は戦うことがあんまり出来なかったな。



今日はとことん潜って、レベル上げとできれば、ダンジョン攻略しよう。


そう意気込んで、元気よく家を出発した。


そしてダンジョン内、マッドプラントを倒しながらぐんぐん進む。


階段を見つけて下の階層に降りる。


2階層には来た事無かったが、マッドプラントしか出て来ないので、たいして警戒する必要もない。


攻略は極めて順調だ!


だが階段を降りて、3階層に入った時、事件は起きた。



「シュシュシュシュシュシュ」


「いてっいてっいてっくそっ」



3階層には別の植物モンスターがいた。


名前はリトルスナバコノキ、爆発したように種を飛ばしてくる。


数が多すぎて対処し切れないな。


よし!1度退却だ!うん、命大事に行こう。


僕は急いで階段まで逃げる。基本的に階段は、セーティエリアになっている。


そしてF~Dランクまでのダンジョンは、階段以外にはセーティエリアは存在しない。


Cランク以上になると、10階層おきにあるようだが。


ダンジョン内の魔物は、他の階層に原則、移動出来ない。


なので階段が一番の安全地帯になるのだ。


ただしスタンピート時だけは、勝手が違う。


魔物は、他の階層にも自由に移動ができ、地上にも溢れ出してしまう。


研究者の話では、モンスターを生み出し続ける迷宮を放置することによって、モンスターが飽和状態となり一定の値を超えた時に決壊するとのことだ。


だからこそ国は、民間人にダンジョンを解放し、積極的に冒険者を集める。


そしてその冒険者が全国各地のダンジョンに入る。


冒険者がモンスターを間引くことによって、スタンピートをの発生を未然に防ぎ、被害を最小限に抑えることができるのだ。



閑話休題



階段まで撤退した僕は、昼になったので弁当を食べていた。


今日はダンジョン攻略を考慮して、母さんに作ってもらっていたのだ。


そして作戦を考える...


盾があるなら無理矢理ごり押ししても行けるかもしれないが、今の僕には厳しい。


逃げに徹すればどうだろうか?


横に移動しながら種をかわせば...

そうだ!種をかわしつつ敵の周りを、ぐるぐる回り少しずつ距離を詰めていけば...うん、それなら完璧にかわせるはずだ!


せっかくだし、カッコいい作戦名を付けるとするか。


うーん回る...回転、渦、渦巻き...


よし!オペレーション「ボルテックス」と命名しよう!


そして仁は、リトルスナバコノキにオペレーションボルテックスを発動する。



「シュシュシュシュシュ」


「ふふっ遅い遅い」



渦を巻くようにくるくる回り、射程距離まで近づいたら一気の飛び掛り金蔵バットで撲殺した。



「ふぅ...なんとか倒したけど、近づくまでにかなりの距離走る必要があるな。体力的にかなり厳しいぞ」



そのあとも、リトルスナバコノキを倒し続けた。


5体を倒し終わった所で、バテバテになったので、1度階段まで戻って休憩を取ることにする。


息が整ってきたら、今度は階段の上まで戻ってマッドプラント狩りに戻る。



(今日は悪運スキルを使いたいからAP稼いでおかないとな)




それから夕方まで狩り続けて、階段で一息つきながらステータス画面を開く。



海道仁 16歳 男 レベル:7

職業:なし SP:224 AP:1650

HP28/31 MP24/24 

攻撃力:26

耐久力:24

魔防:19

速度:24

感性:23

精神力:27

知力:23

運:292

スキル:悪運 隠密 身体強化 金剛力

装備品:なし

称号:なし



ダンジョンに1日中潜っていたおかげで、かなりのAPを獲得できたようだ。


それでは早速検証を始めようか。


前回はスライムに使ったから、今回はリトルスナバコノキにしよう。


僕は階段を降りて、リトルスナバコノキを狩りに行く。


すぐにエンカウントしたのでボルテックスで攻撃する。


倒しきる前にAPを1650注ぎ込み悪運スキル発動、ドロップアイテムはいつも通りか。


じゃあそろそろアイツが出る頃だな!金色に光輝く...あれ...




僕は驚愕して目を見開いた...



そこにいたのは金色ではなく、禍々しいほどの漆黒。


この世の終わり体現したかのような不気味な容姿で、悠然と佇む絶望だった。



「シュ」


「ぐはああああ」



漆黒のリトルスナバコノキが動き出す。


小手調べとばかりに飛ばした種子が僕の肩に風穴をあけた。


奴とっては、軽いジャブのつもりだったんだろうが、僕はもうすでに重症だ...


それでも僕は走り出す。


もちろん後ろではない横へ!


今コイツに背中を見せ逃げようとすれば、一瞬で蜂の巣にされる。


僕にはその確信があった...



(漆黒のレアモンスターは戦闘力が跳ね上がると聞いていた。

だが、まさかここまで規格外の存在だとは...

この化物相手には逃げることすら許されないのか...戦う?でもどうやって...)



僕は死にもの狂いで思考し、走り出す。


僕がさっきまで居た所に種子の雨が降り注ぐ。


まるでマシンガンの一斉掃射。


物凄い轟音と共にダンジョンの壁は崩れ落ち、すぐに修復を始める。



(あんな攻撃反則過ぎるだろぉぉ!!!

1発でも生身で受けたら一溜まりもないぞ!

上半身に当てれば重症か即死。下半身に当たれば動けなくなり、即座に蜂の巣、どちらにしろ待っているのは死だ)



大量に連射され徐々に近づいてくる無数の種子。


圧倒的な力の暴力を前に仁の顔は青ざめ恐怖する。


それでも彼は駆け出す。



生き残るために、絶対に思考は放棄しない。



(最初の攻撃、ほとんど反応できなかった。

射程距離、連射性、射速、破壊力、全てにおいて桁外れじゃないか...)



僕は全力疾走しながら覚悟を決める。


どのみち体力がいつまでも続くわけ無い、逃げた所でじり貧だ。


だったらやるしかない、オペレーションボルテックスを発動させる。


なんとか少しずつ距離を詰め、金剛力のスキルを使い、敵の隙を突いて金属バットで思い切り殴りつける。


普段のリトルスナバコノキであれば、間違えなく倒せる一撃。


しかし...まるで鋼鉄の塊を殴りつけたかのような感覚。


手は痺れ、危うくバットを落しそうになるがなんとか耐える。



(ぐっなんて耐久力だ、そりゃそうだよなぁ。

攻撃力があれだけ上がっているんだ、他の数値が上がっていない道理はない...

それでもやらなければ、死んでしまう...)



僕は、漆黒のリトルスナバコノキの周りを懸命に走り回りながら、隙を見つけては攻撃を仕掛ける。そしてそれをひたすら繰り返す。


何度も何度も殴りつけるが、効いてるかどうかすらもわからない反応。


まるで終わりの見えないマラソンを、走らされているような感覚。


迫り来る種子、徐々に削られていく体力と精神力。


失っていく血液、終わりの見えない道。



僕は発狂しそうだった...




(怖い怖い怖い怖い怖い怖い死にたくない...死にたくないよぉ...死ぬことがこんなに恐ろしいことだったなんて知らなかった...)



「あ、諦めて...諦めてたまるかああああああああああ」



やけくそ気味に大声を張り上げ、必死に自分自身を鼓舞する仁。


だが、そのむなしい抵抗も長くは続かない...


そしてその時は迫ってくる。



敵の圧倒的な火力に追い回され、すでに満身創痍。


肩からは止まらない出血、速度を緩めれば即座に死という、ギリギリの緊張感と体力の限界。


極限状態の中で、仁の頭の中に浮かぶのは、家族の笑顔と復讐すべき奴らのにやけ顔。



(くそッ こんなところで終わる訳にはいかない...

僕はまだ何一つとして成し遂げてはいないじゃないか...)




纏わり付く濃密な死の気配を振り払い、僕は走る。



一体どのくらい経っただろうか?10分の気もすれば、30分の気もする、はたまた1時間か...もう時間の感覚はない...



すでに限界は、とっくに超え、体は血塗れ汗まみれになっている。


全身は鉛のように重く、つつけば倒れそうな状態の体。


気息奄々、それでも懸命に走るが...



(もう...だめだ...ごめん怜...母さん... )



そしてついに限界は訪れた...



倒れ行く体、手放そうとする意識の中で...







「死ぬなああああああああああ!!!」


「ご主人さまああああああああ」


「いやぁ死なないでぇ...」






遥か遠くで叫んでいる女の子達の声...


僕の意識は一瞬覚醒する。



「ま...まだだあああああああああああああ」



最期の力を振り絞って、敵に飛び掛る。


金属バットを握り締め、全身全霊の一撃、一撃でダメな二撃、三撃、無我夢中でバットを振り下ろす。



(撃ちたきゃ撃てよ!どうせ僕には逃げる力も残っちゃいない...

ただお前も道連れだ!

たとえ体中、穴だらけにされようと、お前だけはあの世へ連れて行く)



永遠にも思える一瞬の攻防、腕に足に腹に何発も種子を食らいながら、それでもバットを振り下ろす。


意識朦朧、息も絶え絶え...


だが血が滲み出るほど、強く握り締めた金属バットを決して離すことはない...


なおも仁は、戦い続けた。


そしてついにその時は訪る。


バットが空を切り、地面を叩く、完全に消滅する魔物。



そしてそこには、2振りの剣が残されていた。


そしてその場に倒れ込んだ仁は、かすれゆく意識の中で、悪運スキルを発動させるのだった...


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ