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それぞれの思惑

~蓮上海 視点~



俺の名前は連上海。


俺は今、私立天聖学園に通っている。


この学校は国で1,2を誇る名門校だ。


大企業、財閥、政治家、資産家など一部の特権階級の者。


そういった権力者の子息、子女しか入ることが許されない。



「ごきげんよう、連上様」


「ごきげんよう、篠原さん」


「今日は午後から雨が降ると天気予報で言っておりましたわ」


「へ~そうなんだ、道理で曇ってる訳だね。まあこんな天気の悪い日でも篠原さんは輝いてるけどね」


「相変わらず連上様はお上手ですわ。おほほほほ」


「良かったら、今日のお昼一緒にどうかな?」


「ええ、もちろん。是非ご一緒させてくださいまし」


「うん、それじゃあ楽しみにしておくよ」


「ええ、それではまた」



彼女の後姿を見送った後、心の中で海は毒づく。



(クソつまんねぇ!何が人脈を作ってこいだ。親父の奴、こんな学校入れやがって)



海は父親の指示で。この学校に通うことになっていた。


だが退屈な日常に辟易していた...



(どいつもコイツもお利口さんばかりだ、刺激が足りねぇ。

ストレスは溜まる一方だ!中学の時は良かった。

専用サンドバックにいつ壊しても問題ない玩具がゴロゴロ転がってたからな)



海がしばらく考え事してると、チャイムが鳴った。



「おっと急がねぇとな」



(まあいい、この学校に入る条件として、親父に頼んでおいた。

あれも、もうすぐ完成するようだし、来月になれば、俺の誕生日だ。

冒険者になれば、全てが変わる)



図らずとも2人の因縁は絡み合う。


交わらない光と闇のように、決して相容れる事は無い。


そして一度食らい付いたが最後...


相手の存在を食らい尽くすその時まで、離れる事もまた無いだろう...




~海道仁 視点~



僕は今、ゴリラのような男、担任の黒川に扱かれている。



「おら!どうした1本くらい入れてみろ」


「やぁ!はっ」


「うほっ、いいぞ!筋は悪くない。だが筋肉が足らんな、筋肉が」


「き、筋肉ですか?」


「そうだ!お前たちは成長期だからな!しっかり体づくりをしていけよ」


「わかりました...」


「いいか海道、大事なのはカルシウムとタンパク質だ!とりあえずプロテインはとっとけ!」


「はぁー了解です」



そして周りのクラスメイトは笑いながら見ている。


何でこんなことになってしまったのか、時間を少しだけ巻き戻す。



「それでは今日の訓練は男女合同で行う。まだ武器で打ち合うのは危険だから今日は竹刀と防具をつけてやってもらうぞ!それではまず手本を見せる。先生と稽古したい人いるか?」



シーン...



(あんな暑苦しそうな防具つけてやる奴はいないよなぁ。

剣道部じゃあるまいし...そうだよ!剣道部がやればいいじゃないか)



「せっかくだし、先生は強い人と戦いたいなぁ」


そこで勇者藤宮が手を上げる。


「はい!」


「おお藤宮がやるか?」


「いえ、私は強くないので、ですが海道君はもうダンジョンに潜っている、冒険者なので1番強いかと」


藤宮さんが天使のような笑顔で、悪魔のような提案をする。


「おおそうか、冒険者の先輩としてしっかり鍛えてやるぞ」



現在に戻る。



「おらぁもう1本だ!」


「ぜぃ..ぜぃ...はぁはぁ...」


「どうした、だらしないぞ!」


「か、勘弁してください」



なんとか、黒川の扱きから解放された僕は腰を下ろす。


そこへ藤宮さんともう1人、立花さんがやって来た。


立花さんは藤宮さんの親友で読者モデルをやってるらしい。

藤宮さんと正反対のギャルっぽい容姿。

髪は茶髪で腰まで長いロング化粧もバッチリしている美人。


そしてなにより胸がデカい!

藤宮さんのサイズには多少負けてるが、それでもDカップはあるのではないだろうか...



「ごめんね、私のせいで酷い目に合わせちゃって」


「いや気にしなくていいよ。いい訓練になったし」


「その割には海っち目が死んでるけど」


「う~ホントごめん」


「ホント気にしないで!」


仁は無理やり笑顔を作る。


「ありがとう」


「そういえば海っちは冒険者になったんだよね?」


「うん!そうだよ」


「実は私も4月生まれで冒険者登録できるけど、1人でダンジョン入るの怖くて...海っちさえよければ1回だけ一緒に入ってくれない?」


「そうだね、藤宮さんがバイトしてるコンビニ知ってる?」


「うん、知ってるよ」


「コンビニのすぐ近くにあるFランクダンジョンにいつも入ってるんだけど、そこでよければ付き合うよ」


「ありがと!冒険者登録しないといけないし、ゆっくり入りたいから今週の土曜日でいいかな?」


「いいよ!じゃあ10時にダンジョン前、集合でいい?」


「うん、それでオッケーだよ」


「涼子ちゃんずるいよー」


「ふふっ紫苑おっ先」


「うー海道君私の時もお願いね?」


「ぐはっ了解いたしました...」



仁は天使の上目遣いのあまりの破壊力に危うく意識を持って行かれそうになったが、なんとか踏みとどまって、約束を交わした。



そして放課後ダンジョンに来てマッドプラント狩に勤しんでいる。


それにしても今週末は立花さんとダンジョン探索か。


ついに僕にもモテ期がきたのでは?


いやいや勘違いしてはいけない僕はモブだ。


身の程弁えず行動すればまた地獄をみるぞ!


自分自身を戒めながら、歩みを進める。


そして21匹目を倒した時レベルが上がった。


ステータスオープンっと。



海道仁 16歳 男 レベル:6

職業:なし SP:53 AP:210

HP19/28 MP15/22 

攻撃力:23

耐久力:21

魔防:17

速度:21

感性:20

精神力:25

知力:21

運:124

スキル:悪運 隠密 身体強化 金剛力

装備品:なし

称号:なし



今日は探索はここまでかな。


それにしても金剛力使いこなせるようになってか大分戦いが楽になった。


薬草のストックも30個近く溜まったし、そろそろダンジョン攻略に挑んでも良さそうだな!


Fランクダンジョンは、だいたい3~5階層と言われており最深部にはボス部屋がある。


ボス部屋は、1度閉まったら戦闘が終わるまで、決して開くことはない。


まあ転移石があれば、脱出すること自体は出来るが。


ボスは基本的にワンランク上の魔物が出ると言われている。


このダンジョンならEランクの植物系モンスターかな。


たまにエクストラボスなんていう物騒なのも、出て来るみたいだけど。


そうやって僕は、ダンジョン攻略に思いを馳せながら、家の帰路を急ぐのであった。



~藤宮紫苑 視点~



今日は、学校で男女合同の訓練があった。


海道君には悪いことしちゃったな...怒ってないよね?


海道君は優しいし、大丈夫だろうけど一応もう一度、謝っておこうかな。


そういえば海道君の連絡先まだ聞いてなかった...女の子の方から聞くのは...


そうだ!涼子ちゃんが聞いたら教えてもらおう。


今度の土曜、海道君と涼子ちゃん2人でダンジョン探索行くんだよね...何もないよね?...まあダンジョンの中は危険だし、浮ついたことはないだろうけど。


私は2人とも怪我なく、それ以上のこともなく。


無事に帰ってきてくれることを信じているよ。


ダメだ...最近は海道君の事ばかり、考えてしまう...


ベ、別に好きってことじゃないよ?...そう、ただ放っておけないというか...


危なっかしい感じがして...そう、弟を見ている気分かな。


私の家は、両親と弟の綾人、4人家族だ。


ウチは貧乏で私が家事全般をやっている。


今日はスーパーの特売日だし、卵と鶏肉ともやしは買っておかないとね。


夕飯は親子丼にしようかな。


久しぶりのお肉だし、綾との喜ぶ顔が目に浮かぶ。


最近は野菜炒めばっかりだったからね。お肉食べて栄養つけないと。



母は魔力過剰症という病を患っている...



世界が魔素というものに覆われて、ダンジョンが発生した。


そしてその魔素によって、人はその体に魔力を宿し、魔法を発動する事ができるのだ。


ただし、もちろん弊害もある...


体に急激に大量の魔素を取り込むことによって、機能不全を起し、魔力の循環に支障をきたしてしまう。


特級ポーションやエリクサーを使えば、肉体を正常な状態に戻し、体に魔力を定着させることができるらしい。


ウチにはお金がないから難しい。


そんな感じで、お父さんは必死に働いて、お母さんの入院費を稼いでいる。


私もバイトしたり、家の事したり協力している。


助け合っているので、うちの家族仲は非常に良い。


私は、家族を幸せにするためにも冒険者になる。


お父さんは危険な職業だから無理してなる必要ないと、言ってくれてるけど。



たくさん稼いでお父さんの負担を減らしてあげたい。


それに一流の冒険者になれば、自力でポーションを手に入れる事もできるかも知れない...


だから私は強くなるよ。誰よりも強く...


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