~プロローグ~
初投稿です。よろしくお願いします。
轟く轟音と魔物の足音…響き渡る悲鳴…逃げ惑う人々…
親とはぐれて、さまよう僕達…
妹の手を取り、歩く僕…
人混みに飲まれないように…潰されないように…
絶対にこの手は離さないと…
懸命に歩き続ける僕…
そんな僕の前に奴は現れた。一つ目の巨人、山のような怪物。
圧倒的な膂力は、全てを粉砕する。奴は棍棒を振り上げ、邪悪に嗤う。
僕は妹を抱きしめ、目を瞑る…
目を開けると、怪物は消えていた…
かわりにいたのは、1人の男、その背中はとても大きい。
男は振り返りこう告げた。
「坊主、女を命懸けで守るとは偉いじゃねぇか。お前はきっといい男になる」
「おじさんが助けてくれたの?おじさんだれ?」
「俺の名は鬼堂雅虎、冒険者だ!坊主名前は何だ?」
「海道仁だよ。僕も冒険者になる」
「そうか、海道仁。お前の名前は覚えておくぜ」
それは光だった…強烈な眩い光…
僕はその光に憧れた…
そして必死に手を伸ばした…
朝日が眩しく、小鳥のさえずりが聞こえる。
ゆっくり目を覚ました僕は、時計を確認する。
2022年4月7日、今日は私立清英高校の入学式だ。
新一年生となる僕、海道仁は朝早くからドタバタしている。
「ったくなんで今日に限って目覚ましが鳴らないんだよぉ...って電池とれてるし、はぁ~今度からは携帯のアラームにしよう」
「仁、いつまで寝てるの!今日は高校の入学式でしょう!楓ちゃんは先に行ったわよ」
「わかってる、わかってるからもう起きていくよ」
ああ、今日も朝から母さんは元気いっぱいだ。母さん怒声が1階から2階の僕の部屋まで木霊する。
急いで制服を着て、カバンを抱え階段を駆け降りる。洗面台で顔を洗い、寝癖を直し、黒縁の伊達眼鏡をかけて準備完了。
ちなみに楓とは小学生からの僕の幼馴染だ。
隣と言う訳ではないが、歩いて5分くらいの所に住んでいる。
家族ぐるみの付き合いということもあって、一緒にキャンプに行ったり、食事に行く事も多い。
そして、図々しい事にちょくちょく朝ごはんを食べに来るのである。
「うんよし、どっからどう見てもただの冴えないモブキャラだ」
鏡の前で1人つぶやく。
「仁!ちょっと何してんの!」
「わーってるわーってるから」
まだ母さんが叫んでいた。これ以上時間をかけて、ヒステリックになられても困るな。
さっさ学校へ行くとするか。
台所に行くと、母さんが忙しなく料理をしていた。
「おはよう母さん」
「おはようってあんた起きるの遅いわよ!怜はもうとっくに学校行ったわよ、あんたもすぐに出ないと間に合わないでしょ?」
「うん、そうだね。だから朝飯いらないや、行ってきます」
「ちょっと待ちなさい!朝から食べないと元気でないわよ。パンだけでも食べて行きなさい」
「わかったよ、マヨネーズとって」
「はい」
「ありがとう」
マヨネーズをたっぷり塗って、それを食べながら家を飛び出す。
「もう!行儀悪いんだから!」
「じゃあ行ってくるよー」
「はい、行ってらっしゃい」
学校まで徒歩20分ぐらいだし、走っていけば何とか間に合うかな。
それにしても母さん朝から元気だったな。あれなら100歳までは生きるだろう。
走る前に急いでパンを咀嚼し飲み込む、さすがに走りながら食べるのはきつい。
それにしてもパンとマヨネーズの組み合わせは最強だな。
怜のやつはイチゴジャムとか塗ってたっけ?朝からあんな甘ったるいものよく食べられるよな。
男ならマヨネーズ一択(勝手な偏見
怜とは1つ下の妹で、家から歩いて、30分くらいの中学校に通っている。
昔からお兄ちゃんお兄ちゃんと引っ付いてくるし、かなり懐かれてる。
もうお互いにいい年なんだからそろそろ兄離れしてほしいものだ。
まあ最近は少し喧嘩してるが...この前妹の下着姿を見たのは不味かったな...
も、もちろんわざとではない(汗
帰りが遅くなった日、脱衣所の洗面台で手を洗おうとしたら運悪くバッティングしてしまったのだ。
いやぁあれは幸...不運だった。それにしても怜の奴いつの間にあんなに大きくなったんだ?
怜の成長は著しかった。ある一点において、それは顕著に表れていた。Eカップ?いやFカップかもっと上か...わからん。彼女いない歴=年齢の童貞男に、ぱっと見ただけで、どのサイズか見極めろというのが、土台無理な話である。
おまけに怜はかなりの美少女で、ものすごくモテるみたいだ。
毎月2、3人には告られると愚痴をこぼしていた。良かったな!
母親似で父親似の僕の顔は...不細工ではないよ?平凡というか何の特徴もない顔である。
少し話しがそれてしまったが、こんな調子で家族3人仲良く暮らしてる。
親父はいない。僕と怜が小さかった頃、弟を連れて、出て行ったらしい。
母さんに一度そのこと聞いたときとても悲しそうな顔をしていたのを、今でもよく覚えている。
それ以来父親の話はしていない。
去年は僕にとって最悪の1年だった...
様々な事件が起きて、身も心もズタズタにされた...
僕の考え方も価値観も大きく変わった...
でも1つだけ変わらなかったものがある。家族の優しさだ。
母さんと怜だけは僕の味方であり続けてくれた、支え励まし続けてくれた。
だから僕は立ち直ることができた、前向いて歩き出すことができた。
これからは僕が2人を守って行かなくてはいけない。
だから僕は清英高校の冒険科に入って、冒険者になると決めた。
強くなっていっぱい稼いで2人を守り、養っていくんだ。
そしていつかは、ダンジョンルーラーになる!!それが僕の夢だ...
私立清英高校、都心から少し外れた郊外にある高校。ウチから通える高校の中では、1番近い所にある。だから僕はこの高校に進学することにした...という訳ではなく、もちろん理由は他にある。
1つは3年前から設立されるようになった、冒険科の存在である。全国的に見ればこの導入はかなり遅い、やはり進学校故であろうか。この高校は偏差値がかなり高めな有名進学校だ。東大や慶大にもたくさん合格者を出しているらしい。まあ僕には関係のない話だが。そしてこの高校に進学した最大の理由がある。
中学のクラスメイトがほとんどがここを受けないことを知っていたからだ。




