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9996日:恋愛感情など理解できない童貞の僕にモテ期は呪いかもしれない

この物語は実在の人物や国家、宗教とは無関係です。

 見えた数字が切りの良い数字だったおかげで、僕はミナの右上の数字が、日没と共に1ずつ減っていることにすぐ気付くことができた。何かをカウントダウンしているようで不快で、そして、少し怖かった。それ故に、僕は数字が見えることを周りの仲間達に、もちろんミナ本人にも隠すことにした。


 かくして、王都ソルまでの帰りの旅路だ。魔族の王たる魔王が滅びたことで、魔物の発生は止まり、残った魔物の力も弱まっていた。もはや魔物に怯えることはない。僕らは帰りの道中で幾度となく人々の感謝の言葉を聞いた。そんな旅の中、僕は2つ目の変化を実感していた。


「隣いいかい?」


「は、はいぃっ!? よ、喜んで!」


 リルムの変化だった。リルムは明確に僕へ意識をしているように感じられた。おそらく、好意を向けられている。しかし、それを素直に喜ぶことは難しかった。理由は単純に僕にそういった色恋沙汰の経験がないことだ。他人から好きだと思われるのも、他人を好きだと思うのも、僕にはよくわからなかった。だから。


「あ、あの!」「あのさ」


「あ、ご、ごめんなさい! ノル様のお話、聞かせてください!」


「こちらこそすまない。リルムこそ、何か話したいことがあったんじゃないの?」


「い、いえ、とりとめないことですので!」


「そうかい? いや、僕も、最近いい天気が続くなと思って」


「あ、は、はい! そうですね! 私もそう思っていました!」


 こんな会話しか出来ず、結局この後カロルに絡まれるまで沈黙が続く有様だった。


「リルムの気持ちに答えてやれよ!」


 その日の日の入り後。僕はカロルとケニスに酒場に誘われる。酒は苦手だったが、酒を入れないとしにくい話があったことは事実であり、おそらく2人の目的もそうなのだと感じていた僕は、喜んでその申し出に応じた。が、まもなくして、この2人の酒癖の悪さに僕は後悔する。散々リルムをデートに誘えだのなんだのと煽られること数時間。そんな中だった。


「じゃがのぅ、わしもリルムの気持ちは理解できてしまうのぅ。ノルめ……男らしくなりおってからにぃ!」


「ケニス師匠ぉ! そりゃないっすよぉ! せめて俺に!」


「100年早いわ、小童め」


「どうじゃ、ノル。その子種を、龍神であるわしに注いではみぬか?」


 酒のせいだろう、顔を赤くしたケニスに僕はため息をつきつつ答える。


「冗談だしてもあまりいい気分はしないですね。リルムのことを考えると、余計にです。お酒、飲み過ぎでは?」


 ここでケニスの動きが止まり。


「……冗談で言うような女に見えたか?」


 真剣で、かつ、寂しそうな目を向けられてしまったので、僕はただ「すみません」というしかなかった。結局この一言で酒の席はしらけ、解散となる。


 1人になった後で僕はふと考える。この変化に理由があるのではないか、と。確かに僕はリルムに好意を向けられているように感じた。しかし「いきなり」が過ぎたのだ。そして今回、ケニスからも求愛されてしまった。つまり僕は、呪いのような何かによって、異性から好意を向けられているのではないかという可能性だった。


(……ありえないか)


 冷静になる。呪いをかけられたのが魔王の死に際であると仮定して、傍目に見て僕にメリットしかない。「後悔しろ」と最期の言葉を残して死んだ魔王が、そんなことをするはずがないのだ。と、そんなことを思案していると、先に数字が目に入り、後に物陰からミナが体を表した。


「居たんだ」


「居ちゃいけないみたいな言い方だね」


「別に」


 ミナは今日もマイペースだった。断りもせずに僕の隣に座り、一言。


「あのさ、私と付き合わない?」


 僕は真剣に魔王の呪いの可能性を検討することにした。


――彼女が死ぬまであと9996日

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