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10001日:私が倒れても第二第三の後の続きは聞いていない

この物語は実在の人物や国家、宗教とは無関係です。

「何故私を倒してしまったんだ」


 膝をつき、首元に剣を突きつけられた魔王はそう命乞いをはじめた。


「おい! そんなやつの話なんか聞くことないぞ! さっさとやっちまえ!」


 戦士カロルはいつもの熱意をそのままに僕に伝える。事実だ。僕らはこいつを倒すために長い旅を続けてきた。今更その暴虐的な支配に意味があると言われようが、この剣を下ろすことはできない。


「あの、でも、少しお話を聞くことは、できないんでしょうか……? その……」


「リルム、お前のやさしさは理解できる。じゃが、優しさは誰にも向けるべきものではないことを知るべきじゃの」


 僧侶リルムは、持ち前の純粋さと優しさを持って魔王の言葉を聞こうとするが、龍神でもある賢者ケニスはそれを制した。これから魔王が何を述べたとして、それはおそらくリルムの心に傷跡を残すことになるだろう。ケニスの制止が、リルムに対するやさしさであることを僕には理解できた。


「さっさと終わらせなさいよ。それとも、私がやる?」


 最後に魔道士ミナがため息混じりで語りかけた。魔王を倒したという中でも彼女はマイペースで、喜ぶ素振りもなかった。ただ、当たり前のこと。出来たからやった。それが名実ともに世界最強とも言える力を持つ魔道士ミナの日常であり、それはこの最後の場面を前にして崩れることはなかった。


「すまない、話を聞くことはできない。その罪、命を持って償ってもらうぞ」


 それが僕らの結論であり、僕、勇者ノルの意思でもあった。魔王を殺すことができるという唯一の剣。僕はそれを振るいあげる。これで終わりだ。


「そうか……だが、私が滅びたとして世界に安息など訪れない。いずれ、いや、すぐに第二第三の」


「話は聞かないと言ったぞ!」


 剣を振り下ろす。その瞬間だった。魔王が僕の目を見て。


「後悔しろ」


 それが魔王の最期の言葉となった。魔王の首は落ち、同時に、剣の力なのだろうか、魔王の首も体も霧のように雲散霧消していった。ついに終わった。そう感じた瞬間に、僕の体は一気に疲労を感じたように思えた。それを察したのだろうか、カロルが僕の背中を強くはたく。


「お役目ご苦労! 救国の勇者サマ! はっはっはっ! 胸を張れよ! それだけのことをしたんだ!」


「はい! お疲れ様ですノル様! これから王都ソルへの凱旋ですよ!」


 続いたリルムの言葉に笑顔で振り向き、ケニスを見て頷きあう。ここでもまた、いつものようにマイペースに杖の手入れをしていたミナが目に入り。違和感を憶えた。


(なんだ、あれは?)


 僕はミナの右上に数字が見えるようになった。それが、魔王を倒してから僕に訪れた、1つ目の変化だった。


――彼女が死ぬまであと10001日

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