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俺の始まり


目が覚めた時、記憶は無かった 音もなく鉄と血の匂いだけがした

『図太くなったな、俺も…』

ここが何処かも分からない、ただただ地下を目指している

頭の中にある言葉は一つだけ…


( 名前を手に入れろ )


気が付いたのは…多分7日程前だ

突然、ここにいた


それまでの事は一切覚えていない

ただ、そこにいた

目の前には今にも飛び掛かろうとする獣

暗闇でも赤く光るその目には、何故か懐かしさも感じた


手の中には一本のナイフ…

銀色に光るそれは、酷く冷たく鈍く光っていた


身の危険を感じ身構える…

『そもそも、俺は戦えるのか?』


疑問に感じたが…

敵は待ってなどくれない、不意に飛び込んできた…首を狙う様に!


躱せた


思ったよりは身軽で慣れているらしい

次々と攻撃を仕掛けて来るが、あくまで単調だ


次の攻撃で首を狙うか…

そう考えた瞬間、向こうから飛び込んできた


身を躱し、首にナイフを突き立てる

そのまま地面まで叩きつけ、ナイフを捻っていた


……


獣は動かなかった


『やれたか…』


安堵してはいたが、負ける気はし無かった

何故か獣の首を落とし、中から魔石を抉り出す

無意識の内の一連の動作…身体が覚えているのか?


そんな事を考える余裕も無く、次の獣の気配と足音が聞こえた


『全く、ここは何処なんだ…』



ーーーーーーーーー



そんな事を毎日繰り返していた


人は食べたり、眠らずに活動を続けるのは不可能だ

幸いにも獣は食べる事が出来た

飢えていたのか、血の味のする肉も我慢は出来た


睡眠は無防備になる

何故か罠や仕掛けを設置する事が出来たので

自分の寝床の周りに設置してナイフを握って…眠った

だが、熟睡など出来ない

嫌な感じがして目が覚めると、大抵…獣が目の前にいた


『やれやれだ…』


傷を負う事は出来ない、治療する物は何も無かった

服も一般的かは分からないが、簡素な気がする

凡そ戦闘向きの服装で無いことだけは、分かった


何故、ここに居て戦闘を続けているのか…

たまに疑問に思う事もある

生きるため

そうだろう…でも何のために生きるのか?

答えは無い


『取り敢えず、最下層まで降りるしか分からないな』


自分が初めていた階層では下る階段しか無かった

何度も念入りに調べたつもりだが発見出来なかった


初めて階層を一段降りた時、頭の中で声がした


( 残り9階 )


どうやら、地下10階には何かがあるらしい

それからも戦闘を続け階層を降りた

その度に残りの階層が減っていく…


『一体、何があるんだろうな』


そう思いながらも、下るしか無い

何故なら

下った瞬間…今降りてきた階段が消えたからだ

後戻りは出来ない

しかも階層を1つ下る度、相手は強くなっていった

実力がギリギリで下るのは危険すぎる…そう思っていた


あれから、何日経ったのかは分からない

ただ毎日戦闘するだけ


残り7階まで来た時に相手は複数になった

残り6階では魔法も使う様になった

残り5階では毒や麻痺などの状態異常を


毒や麻痺は、かなり苦しめられたが…長時間の継続はしなかった

一定の時間で異常は消えた

思ったよりも頑丈な体をしているのかも知れない


また、一度受けた攻撃は二度目はかなり軽減された

受けた魔法の中には使える物もあった

相手が使った威力よりはかなり落ちるのだが…


それも、何度か使う内にそこそこの威力になって来ていた

身体が順応していくせいだろうか…

発動スピードも使う程に早くなっていった


『これで回復系が使えれば良いんだが…』


相手が回復を掛けてくる事などあり得ない

なので、睡眠と休憩以外に体力も魔力も回復は出来なかった


魔力は睡眠して回復すると使える回数が伸びていた

体力もそうだ

今ではかなりの長時間、戦闘を継続していられた


『それでも、眠らないと無理なんだよな…』


今までに誰にも出会ってはいない

獣やアンデッドなどの人以外の者達だ

地下へ降りれたら、同じ様な者に出会うのだろうか?


今や目的は最下層へ下る事だけ

毎日は戦闘と睡眠の細切れの連続だ

最初は疲弊してた気もするが、今ではもう慣れた


残り1階まで来ていた


『次の階には何があるのか』


最後の階の手前で既に何日かを過ごしていた

当初に比べてたら敵はかなり強くなっていた

攻撃も多彩で体力、魔力もかなり多い

1回の戦闘時間も次第に伸びていた


『ここで楽勝になるまでは降りれないな…』


俺自身はそう思っていたのだが、頭の中に例の声が聞こえた


( 残り240時間 )


この階に居られる時間なのか、それとも最後の階も含まれるのか

いつも一方的に聞こえて、それ以後はカウントダウンだけだ

もう残された時間はそんなには長く無い

眠る時間もカウントされるなら早めに降りるべきか…


まだこの辺りの敵が楽勝とは言えなかったが

それなりの時間で戦闘を終わらせる事は出来ていた


『時間切れでは、何も分からないだけだな』


そう思って明日には降りる事にした

睡眠を取ってなるべく良い状態で挑みたい

そう思って、いつも通り浅い眠りについた


眠っては戦闘を何度も繰り返していた

何度目かの浅い眠りからの覚醒


『さて、そろそろ行くか…』


そう思って下り階段を目指す

階段では敵と遭遇はしなかったが、絶対ではない

気をつけて一段ずつ確認する様に降りていった



床が見えて、左足を踏み出す…


『頭の中に声はしないのか…』


何も聞こえないまま、階段はいつも通り消えた…

この階は左程広く無いのか、扉が既に見えていた


このまま、じっとしていたら危険かもしれない

状況を把握して対策を考えないとな…そう思って一歩を踏み出した

そう思った瞬間


頭の中に幾つかの数字や記号の様な物が思い浮かぶ

それが何なのかは分からないし、記憶出来る程短くも無かった


『これは…一体…』


そう思って暫く思い出そうとしていると、また声が聞こえた


( ああああ )


『一体、今のは何だったんだ?』


今回も何もそれ以外には聞こえなかった

暫く辺りを窺っていたが何も起きない

扉の前まで来ていた


この先に何があるのか…意を決して扉を両手で開いた

見た目は重厚だったが、思いの外軽く扉は奥へと開く

目の前には幾つかの箱、敵らしき者の気配は今は無い

そして、その向こうにまた扉が見えていた


手前の箱の中には何故か装備品が入っていた

全ての箱を順番に調べてみる…全て装備品だった


『これは?装備しろと言う事か?』


一つずつ装備してみるが、全て自分の大きさに合っていた

全てを装備し終えると次の扉が勝手に開いた


『先へ進め…って事か』


慎重に進んでいくが何も気配は感じない

暫く廊下の様な通路を進むと、またも扉が見えた

今回は自分で開かないとダメらしい、…扉を開いた


中には床に文字や模様の様なものが、描かれた物があるだけで

部屋自体も狭く他には何も無かった

模様に近づいてみるが何も起きない

部屋の壁や床も調べたが、何も仕掛けは無かった…


『ここの中心に立ったら、戦闘かもな』


そう思いながら、模様の中心へとゆっくり進む

丁度、真ん中に来た時 光に包まれて声がした



( ああああ よ、お前はこの世界を自由に生きろ )



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