28章 紐解かれた真実
私の家族に2人の来客を加えた6人で迎える妙な日曜日。
遂に健さんまでも家に呼んでしまった私の判断はきっと正しい。
順ちゃんの些細な質問から、一気に暗いムードになってしまった我が家のリビング。
だからと言って、別に順ちゃんのせいじゃない。 いつまでも過去に囚われ、勢いのままに全てを話してしまった私が全て悪い。
そう理解しつつも、洋太の胸で溢れる涙を抑えられずにいた私は、次に起こすべき行動を考える余裕も無かった。
「こんな状況で聞くのはどうかと思うんですが・・・・・・」
悲しい雰囲気が渦巻くこの場面で最初に口を開いたのは、私の打ち明け話に身動き1つせず耳を傾けていた健さんだった。
「お亡くなりになったお子さんは、お2人だけでしょうか?」
「・・・・・・えぇ、そうです。」
泣き崩れ、顔も上げられない私に変わって答えてくれる洋太。
その答えを聞いた健さんは、少し俯きジッと何かを考え込んでいるように見えた。
この場面で感情に流されないのは流石の健さんと言ったところだけど、そんな事を確認して何を考える必要があるのかと、私は少々の不信感を抱く。
「つまり、本当なら4人のお子さんがいたと。」
「そうですが・・・・・・何か気になる事でも?」
私と違い、健さんの様子に興味を惹かれたのは他でもない洋太。
「関係無いとは思いますが、これから探そうとしているのも4人。」
「え?」
「それが奥さんに関わりのある4人かもしれないというのなら・・・」
「いや・・・・・・」
続きを言う前に、洋太によって遮られた健さんの言葉。
でも健さんの言いたかった 「仮説」 は、私にも理解出来たし、きっと順ちゃんにも理解出来たと思う。
だけど、どう考えてもそんな事は有り得ない。
「栗原さん、残念ですがそれは有り得ないです。」
「まぁ・・・・・・そうでしょうな」
「でも4人というだけで、そう思われたんですか?」
「いえ、実はもう1つ理由があります。」
完全否定した洋太ではあったけれど、興味深い意見だと思ったのか、健さんの次の言葉を真剣な眼差しで待っていた。
決して頭の悪い人だとも思えない健さんの考えには、私も興味をそそられる。
「双子というのを聞いて思い出した事があります。」
「・・・・・・?」
「あの4人の中に、双子としか思えない2人がいました。」
「あ!」
健さんの言葉を聞いた私は思わず声を上げた。 今頃になってある事を思い出したから。
そして、それは全て話したつもりの洋太にも完全に言い忘れていた事。
「遥? どうした?」
「洋太ごめん・・・・・・私、言い忘れてた。 タクヤって子とレイカって子は顔が凄く似てて、2人は双子じゃないかって・・・・・」
「ふむ・・・・・・それは安田さんの記憶でも同じですか?」
「あ、はい。」
3人に一致する確かな記憶を聞き取った洋太は私をソッと引き離し、また健さんの横に座ると2人の子供達の顔を見ながら何かを考え出した。
完全否定したとはいえ 「双子」 という共通点が見つかった事で、流石に聞き流す事が出来なくなったのかもしれない。
でも、私からすれば単なる偶然に過ぎないとしか思えなかった。 そんな奇想天外な発想を信じられる訳が無いのだから。
沈黙が続く中、泣き止んだ私が順ちゃんの横に座ると、目の前にいた清久が今度は私の膝の上に乗ってきた。
対面する位置のソファに並ぶ洋太と健さんは、それぞれに険しい顔をして物思いに耽っている。
「やはり、記憶が無いのに4人とも下の名前だけを覚えていたのは不自然だ。」
唐突にそう言い放った洋太は、その場にいる全員の視線を浴びながら発言を続けた。
「それが本名かどうかも分からない。 もしかしたら、唯一の手掛かりであるその 『名前』 にヒントがあるのかもしれない。」
その洋太の考えを斬新な発想だと思ったのは私だけじゃないかもしれない。
当たり前の様に4人が名乗っていた名前。 言われてみれば、記憶の無い4人が揃って名前だけを覚えている事なんて有り得るのだろうか。
仮に本名じゃないとしても、偽名を使う理由も無ければ、誰か知り合いの名前を覚えていたとも考えられない。
あの島で様々な出来事を体験している内に、全く気にしなくなっていた彼らの余りにも不自然な共通点。
それは本人達に会った事も無い、部外者の洋太だからこそ追求したくなった違和感なのかもしれない。
洋太の言葉をきっかけに、子供達を除く全員で彼らの名前について考えてみる事になった。
マコト。 ヨシアキ。 タクヤ。 レイカ。
よくある名前。 どれも特に風変わりな名前では無い。 漢字でどう書くのかは誰にも分からない。
それなら試しに考えられる漢字を紙に書き出してみようと洋太が言い出したので、私がメモ用紙とペンを取りに行く。
戻った私がそれを渡すと、透かさず洋太は紙に漢字を書き始める。
テーブルに注がれる全員の視線。 面白そうだと思ったのか、興味を抱いた子供達まで覗き込んでいる。
誠 真 実 真琴 眞琴 麻琴 摩琴 麻古都 麻古戸
ここまで書いて、3文字だと変わった名前が多く男性の名前になりがちなのと、1文字でも男性の名前に多い事に気付く。
つまり女性の名前として考え、思い付く限りだと意外に少ない事が分かる。
他の3つの名前については思い付く漢字が多過ぎて、この時点で洋太が 「やっぱり意味無いか」 と言って書くのを止めてしまった。
「洋太、苗字も分からないんだし書いても意味無いと思うよ・・・・・・」
「私もそう思う・・・・・・」
私と順ちゃんは既に諦めムード。 でも、洋太と健さんは違った。
「ひらがなとカタカナで書いてみてくれませんか?」
「はい」
謎解きモードに入ってしまった健さんが洋太に提案する。
2人の否定意見が全く耳に入らないかの様に真剣に考えている男2人。 特に言葉遊びやクロスワードが好きな影響なのか、洋太は夢中になってしまっている。
まこと よしあき たくや れいか
マコト ヨシアキ タクヤ レイカ
とりあえずこの場は、知識豊富で頭の回転も早いであろう男2人に任せてみることにした。
洋太が書いた名前を見つめる一同。
その結果、やはり何も分からない。
「なぁ遥・・・・・・昔の知り合いにこの中の名前の人がいたんだっけ?」
「うん、同級生の女の子に 『麻琴』 って子が1人と、男友達にも 『誠』 って人が1人いた。」
「他には?」
「同級生で 『タクヤ』 って名前の人はいたと思うけど、知り合いでも何でもない。」
「みんな別人だよな?」
「似ても似つかないよ、関係無いと思う。」
私の返答を聞いた洋太は大きな溜め息を1つ漏らし、テーブルに肘を付いた利き腕でお得意のペン廻しを始めた。
この仕草をしているという事はまだ諦めておらず、その頭をフル回転させているという証拠。
「試しにローマ字で書いてみるか」
私の思った通り、まだ次の策を練っていた洋太は紙に4つの名前をローマ字で書き始めた。
MAKOTO YOSHIAKI TAKUYA REIKA
こんな事をしても絶対に意味が無いと思っているのは私だけだろうか。
もしこれらの名前が彼らの唯一覚えていた自分の本名だとすれば、今やっている事は何の意味も持たない。
洋太はこれを書き出す事で、一体どんな手掛かりを見つけられると思っているのだろうか。
そうは思いつつも、書かれた文字を黙って見つめる全員に便乗し、私もそれをジッと凝視する。
「何か分かった・・・・・・?」
「ん・・・・・・」
その場の誰もが全く反応を示さない中、洋太の目つきの微妙な変化を読み取った私が尋ねてみたところ、これと言った返事も返って来ない。
それでも、真剣に何かを考え込む表情の中で、僅かに大きく見開かれたその目が何を意味するのか、私にはとても興味深かった。
「全員に確認したいんですが、この書いた順番って年齢の順になっていますか?」
確認する意味が全く分からない洋太の質問。 全員と言うからには、きっと私にも聞いているのだろう。
「当時の外見でしか判断出来ませんが、おそらく左から歳の順になってますな。」
「・・・・・見た限りではその順番だったと思います」
「その中ではマコトさんが最年長で間違いないよ。 次はヨシアキで合ってると思う。」
健さんも順ちゃんも素直に答えたので、私も思ったままに答えておく。 洋太は何かに気付いたのだろうか。
「母音が似てる・・・・・・まさか・・・・・・・!」
「洋太?」
「遥! この下に子供達全員の名前も書いていいか!?」
「?・・・・・いいけど・・・・・・」
私にはまださっぱり分からないけど、洋太は何かに気付いたに違いない。
興味深げに洋太の手元を凝視する一同。
MAKOTO YOSHIAKI TAKUYA REIKA
TOMOKA KIYOHISA YUTAKA ERIKA
「どうゆう事だ・・・・・・」
「あら・・・・・文字数が同じ・・・・・・」
「そうじゃない遥! よく見ろ!」
「え・・・・・・」
洋太に怒鳴り付けられてしまったけど、私にはそれ以上の事に気付けない。
首を捻りつつ健さんの顔を見ると、目を見開いたまま硬直している。 順ちゃんの顔を見ると、これまた驚愕の表情を浮かべていた。
「アナグラムだよ・・・・・・文字を並べ変えてみろ・・・・・・」
「アナ・・・・・・」
どこかで聞いた事のある様な単語を言われつつ、もう1度その文字を確認する。
「え・・・・・・・え・・・・・・・・うそ・・・・・・・えぇぇぇぇぇっ!!!」
私は気付いてしまった。
この中では子供達を除いて1番最後に気付いたであろう私が、何故か1番手でその驚きに比例する調子の声を上げてしまった。
信じられない事に、並べ替えると4つの名前が全て一致してしまう。
「ねぇ洋太! これどうゆう事!? 偶然で有り得ること!?」
「・・・・・有り得ないよ」
「じゃあ何!? 説明して! みんなと子供達にどうゆう関係があるの!?」
「落ち着けって、遥・・・・・・」
意味不明な事実を前にして完全に混乱してしまっていた私は、何故か落ち着いていられる健さん達が不思議でならなかった。
健さんも、順ちゃんも、全く言葉を発しない。 その場で文字に視線を送ったまま微動だにしない。
酷く取り乱す私は2人に問い質した。 けれど何も答えてはくれない。
痺れを切らした私はもう1度洋太に詰め寄る。
「教えて・・・・・・! どうゆう・・・」
「遥・・・・・・もう関係あるとか無いとかって問題じゃないみたいだ・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「・・・・・遥が出会った4人は・・・・・・・・遥の子供達だったんだ。」
洋太がそう告げた正にその直後。
私はあの時の感覚に襲われた。
(こ・・・・・・これって・・・・・・)
それは15年前に体験したあの感覚。
白い光に包まれ、歩く事も出来ず、喋る事も出来ず、まるで自分が空気になった様な不思議な感覚。
でも、今度は少し違う。
何も出来ないけれど、周りの景色は我が家のリビングのまま変わらない。
洋太がいる。 健さんがいる。 順ちゃんもいる。 でも、何故か静止画像の様に身動き1つしない。
しかも、視界がぼやけている。
(絵里香は・・・・・・清久は・・・・・・!?)
子供達が何処にも見当たらない。
自分の姿形は確認出来ないのに、何故か周りは見渡せる。
リビングをぐるりと一周見渡し、必死に子供達を探す。
(どこ・・・・・・どこ行ったの・・・・・・・!)
何処にも見当たらない。
他の部屋へ探しに行きたい気持ちはあっても、この場から動く事は出来ない。
今の自分が置かれている状況よりも、子供達の行方の方が気に掛かる。
気持ちだけで我が子を探し続ける私が 「あの声」 を聞く事になるまで、時間にして僅か10秒にも満たなかったのかもしれない。
『心配しないで』
(!?)
『誰だか分かる?』
(・・・・・マコトさん!?)
『嬉しい。 私の声、覚えててくれたのね。』
私の目に映る景色は先程までと何も変わらない。
相変わらず子供達だけが見当たらないリビングにいる私は、余りにも懐かしいその声が誰のものなのかすぐに理解出来た。
『色々と心配かけてごめんね』
(マコトさん! 何処!? 何処にいるの!?)
『私は何処にもいないわ』
(え・・・・・・)
決して声に出している訳でもない筈なのに、何故か思った言葉で会話が出来てしまう。
その不思議さに驚くことも忘れて、私は 「心の声」 で 「マコトさんの声」 と会話を続けた。
(生きてるの!? 無事だったの!?)
『・・・・・生きてたわ、あなたのおかげでね。』
(・・・・・どうゆう事!?)
『全てを話すには私だけじゃ足りない』
(・・・・・・!?)
『どうか私を許して、他のみんなも責めないで。』
(・・・・・・??)
『おーい! 元気ないぞ~! 1人で話を進めるな~!』
(・・・・・・あ・・・・・・ヨシアキ!?)
『ちゃんと覚えててくれたんだね、嬉しいよ。』
(当たり前でしょ・・・・・・忘れる訳ない・・・・・・)
『あのさ、マコトさんの言った通り誰も責めないで。 みんな子供だから不器用だっただけ。』
(え・・・・・・)
『あんたが子供なだけでしょ! 私は色々と考えた末に・・・・・・!』
(あ・・・・・・マコトさ・・・)
『あはは! 自分だって子供だろ~! 泣き虫でさ~!』
(ヨシアキ・・・・・・)
『もう! うるさいわね! あんたはいっつも一言多いのよっ!』
(マコトさん・・・・・・)
『そうやってすぐ怒る所が子供なんだって~! ほら~聞かれてるぞ~!?』
(ヨシアキ・・・・・・)
『全くもう・・・・・・ねぇ、聞いてる?』
(あ・・・・・・うん)
『こんなやり取り、昔もよく見せちゃったわよね。』
(うん・・・・・・! うんっ!!)
『でも、それも今ので最後。』
(え・・・・・・)
『こうして話すのも、もうこれが最後。』
(なんで・・・・・・マコトさん!)
『残念だけど、そうなるね。』
(ヨシアキ・・・・・・! なんで!?)
『気付いてくれたからだよ』
(・・・・・・!!)
『オレの声、分かるかな?』
(・・・・・分かる! 分かるよ! タクヤ君でしょ!?)
『良かった。 あんまり話せなかったから、覚えてなかったらどうしようかと思った。』
(タクヤ君は!? 生きてるの!?)
『もう分かってるなら、そんな質問しないで。』
(え・・・・・・)
『・・・・・もっと生きたかったかな、でも仕方ないんだ。』
(・・・・・なんで・・・・・・なんで仕方ないの!?)
『それが運命だったから』
(運命・・・・・・)
『でも、少しの間でも生きられて良かった。』
(・・・・・少し?)
『少しの間でも、温もりを感じさせてくれてありがとう。』
(何言ってるの・・・・・・!? タクヤ君!?)
『タクヤは感謝してるんだよ』
(あ・・・・・・)
『私の声も覚えてくれてるかな?』
(レイカちゃん!!)
『やった』
(え・・・・・・?)
『親しくなれないままだったのに、覚えててくれて嬉しい。』
(どうして・・・・・・みんなどうして姿を見せてくれないの!?)
『あの時のみんなは何処にもいないからだよ』
(・・・・・そんな・・・・・・でもこうしてちゃんと喋ってる・・・・・・!)
『これは心の会話だもん』
(心の・・・・・・)
『でも、私にはまた会えるよ。』
(ホントに!? ホントなのレイカちゃん!?)
『会えるよ、オレにもね。』
(ヨシアキ!!)
『会えるけど、あの時のオレ達に会えるのはまだずっと先。』
(・・・・・・?)
『その時に私達の姿を覚えてくれてるか分からないけど、いつかまた同じ姿で会えるよ。』
(・・・・・レイカちゃん!? それってどうゆう・・・)
『もう謎は解けたんでしょ?』
(え・・・・・・)
『そうだよ、解いてくれたじゃないか。 お父さんが。』
(お父・・・・・・って・・・・・・・ヨシアキ教えて! じゃあやっぱり・・・・・・!)
『うん』
(そんな・・・・・・じゃあレイカちゃんは・・・・・・絵里香・・・)
『うん』
(そんなこと・・・・・・ある訳・・・・・・)
『『お母さん、よく聞いて。』』
それは2人の声。 ヨシアキとレイカちゃんの重なった声。
『『あの世界に行ったのは、お母さんを助けたかったから。』』
あの世界。 それが15年前に私が降り立った 「あの島」 の事であるのは間違いない。
『『あの世界はお母さんが作り出したモノ』』
(え・・・・・・!?)
『『お母さんが現実から逃げたくて、自分から逃げたくて作った幻想の世界。』』
(そんな・・・・・・私が・・・・・・)
『でも、逃げちゃダメだって伝えたかった。』
(ヨシアキ・・・・・・)
『逃げてほしくなかったの。 向き合ってほしかったの。』
(レイカちゃん・・・・・・)
『色んな事と向き合って、もっと強くなってほしかったの。』
(マコトさん・・・・・・!)
『辛い事や悲しい事、全部を乗り越えたらもっと強くなれるからさ。』
(タクヤ君・・・・・・!)
今、私は洋太達からどう見えているんだろう。
静止画の背景と化してしまっている3人には、私の姿が認識出来ていないのだろうか。
もしかしたら、私以外の時間が完全に止まっているのかもしれない。
これは自分の心の中での会話なんだと割り切りつつ、私は全てを聞いた。
そして、真実を知った。
あの世界は私が作り出したモノ。
まだ自分が大嫌いだった頃の少女の私が、自分自身で作り出した逃げ場所に過ぎなかった。
もしあのままだったら、私はどうなっていたのか分からない。
自分が作り出した幻想の世界に迷い込んだまま、永遠に抜け出せずに彷徨っていたかもしれない。
でも、私の子供達が助けに来てくれた。
今から何年後の姿なのかは分からないけど、成長した姿になって会いに来てくれた。
私の作り上げた幻想の世界を使って、生きる事の全てを教えてくれた。
そして、あらゆる意味で私を救ってくれた。
そこまでは全て理解出来た。
だけど、私の頭の中にはまだ数知れない程の謎が残っている。
それまでと同様、心の声で思い付く限りの疑問をぶつけた私。
そんな私の幾つもの問いに対し、4人は 「答え」 ではなく 「想い」 で返してくれた。
仲間であり、我が子でもあった彼らの 「想い」 の全てを知ったその時。
私はそれまでの肉体が無いかのような不思議な感覚から解放された。
同時に、猛烈な疲労感に襲われた私は完全に意識を失い、リビング中央のカーペット上に倒れ込んでしまった。
「遥・・・・・・! おい遥!! どうしたっ!!」
抱き起こされ、耳元で呼び掛けてくる洋太の声も今の私には届かない。
私と4人との会話の時間。 それは周りの人間にとって、ほんの一瞬の出来事だった。
動き始めた時間は 「心の会話」 が終わった合図。
そして、次に私が2人の仲間に 「大切な想い」 を伝える為の合図だった。