20章 涙
書いてて気付いた。 最近悲しい場面ばっかりで楽しい場面がちっともない・・・・・
そうか! だから私の気分が乗らず、更新ペースが2日間隔から3日間隔になっちゃってるんだ!
言い訳です、スイマセン。
これ書き終わったら楽しいファンタジー書こうと思います・・・・・
「オレは・・・・・・本当に馬鹿だった」
遥と順子の2人から許しを得た健一が、次に発した言葉。
悲しみに沈み切ったこの場所で、自らの罪を心から悔いている1人の男を誰も責めることはしない。 当人にとっては、簡単に許される事の方が
辛かったのかもしれない。 だが、責めようと、恨もうと、状況は何も良くならない。 自分の心が醜く汚れるだけ。 そう知った遥と、それを知って
いた順子は、怒りよりも哀れみを感じていた健一に対し、必要以上の言葉を掛けない。
言ってみれば、それは冷たい態度と言えるものだったのかもしれない。 だが、当然と言えば当然。 「許した」 からと言って 「慣れ合う」 こと
など出来る筈がないのだから。
「タクヤ・・・・・・だったか・・・・・・無事だろうか?」
遥と順子、どちらにという訳でもなく健一は問う。
「酷い傷だったけど・・・・・・多分・・・・・・」
「・・・・・そうか」
遥の返答を聞くや否や、透かさずその場から歩き出し、今もまだ横たわるタクヤの元へ近寄る健一。 傍らに存在するは昨夜から座ったまま
付きっ切りのレイカ。 今は俯き加減でタクヤの頭を撫でているが、これまでの遣り取りを聞いていたのかどうかは分からない。
健一にはもう1つ、やるべき事が残っていた。
あと2人への謝罪。
「・・・・・ケガの具合はどうだろう?」
健一が近付く気配に気付いていなかったのか体をビクッとさせ、すぐさま警戒態勢を取ったレイカのその目は、敵意を剥き出しにした鋭い目。
「心配無い、もう何もしない・・・・・・謝りたいだけなんだ」
丁重に話す健一の背後からレイカのことを見ていた遥は、その真っ赤に充血した瞳に加え、頬に未だ残る涙の跡を確かに見た。 仮にそれが
先程のマコトの件で流した跡だとしても、自分より泣き続けた筈もないレイカにしては、まだどこか真新しい潤いがある。 それは、自分も大泣き
した遥だからこそ気付いた 「何となく不自然な点」 に過ぎない故に、この時はさほど気にする事も無かった。
尚も睨み付けるレイカに対し、健一は深く頭を下げて言った。
「許して欲しいとは言わない。 だが、本当にすまなかった。」
下げた頭を動かさない健一。 そのまま暫しの時間が流れる。 憎き男の素直な謝罪にレイカは正直、戸惑っていた。
レイカは想う。
『私は、大抵の事なら何をされたって怒らない。
脅されたって、傷つけられたって、謝ってもらえれば別に許せる。
タクヤにさえ手を出されたりしなければ・・・・・・
この人はタクヤを傷つけた。 それも、深く傷つけた。
それなのに・・・・・・それなのに・・・・・・
こんな、たった一言で・・・・・・
たった一言だけ謝られて、この人を許すなんて私には絶対に出来ない。
この人が憎い。 殺したいぐらい憎い。
でも・・・・・・でも・・・・・・・』
頭の中で必死の葛藤を続けたレイカが、苦心の末に絞り出した一言。
「・・・・・謝るなら・・・・・・ちゃんとタクヤに向けて言って下さい」
レイカはその気持ちとは裏腹に、どうしても健一の事を許すしかなかった。 許さなければいけない理由があった。
唇を噛み締めながらその場で俯くレイカを余所に、言われた通り謝罪の言葉を掛ける為、気絶しているタクヤに少しでも目線を近付けようと
腰を下ろした健一。
意識も無く、血の気も引いたタクヤの顔を見た健一は、改めて自分のした事の愚かさを思い知らされた。 その衣服は上下ともに乾いた血で
赤黒く染まり、脇腹にある傷口付近には大量の出血の跡が見られる。 流石にもう出血は止まっている様だが、これだけの出血量で全く手当ても
出来ず、命に別状が無いというのは有り得る事なのだろうかと内心、疑問を抱く。
「まだ・・・・・・意識は戻らないのか?」
「・・・・・さっき、目を覚ましました。」
レイカの返答を聞いた健一は、内心ホッとしていた。 何故なら、自分のした質問には 「本当にまだ生きているのか?」 という隠された意味が
込められていたから。 1度目覚めた上で、また眠っているというなら一先ずは安心出来る筈。 運良く内臓を傷つけずに済み、出血も見た目ほど
多くなかったのであれば、安静にして食事さえきちんと取れば、傷痕は残るが死ぬ事はまず無い。
(だが、きっと血が足りない・・・・・・早く肉や栄養のつく物を食べさせ・・・・・・消毒していないと化膿する恐れが・・・・・・黴菌が入っていたら・・・・・・)
自分が負わせてしまった深手を前に、健一が感じた責任の重さは計り知れない。 足りない知識で精一杯の考えを巡らせ、自分が成すべき事を
必死に考える償いの心。 何としても助けたいという健一の想いは、次のレイカの言葉によって叶わぬ願いとなる。
「お願いがあります」
「オレに出来る事なら何でもする」
「・・・・・タクヤに謝ったら、ここから消えてください。」
レイカの願いを聞いた健一は、その意味をはっきりと理解出来ずに少々戸惑う。 後ろで聞く遥と順子も、先程の経験から 「消える」 という言葉
には敏感に反応し、その意味に興味を持つ。
結果、余計な質問をされる前に、出来る限り言葉を交わさず済むように、レイカは伝えるべき全てを改めて言葉にした。
「何もしなくていい。 ここから出て行って。 2度と現れないで。 これが、さっき目を覚ましたタクヤと私からのお願いです。」
「・・・・・・!!」
その意味をしっかりと理解した健一は何も言わず、目の前のタクヤに土下座した。
地に着いた両手は小刻みに震える。 地に伏した顔には苦痛の表情を浮かべる。 それらは沸き上がる悔しさから来たもの。 もはや償う事も
許されない。 彼らの願いを聞き入れる事しか許されない。 自分に出来る事、それはここから去る事のみだった。
『2度と現れないで』 それは皮肉にも、最初に受けた警告と同じもの。
遥と順子は、タクヤ達の願いに込められた悲痛な想いを読み取った。
もう健一とは関わりたくもない。 2度と顔も見たくない。 心も体も傷つけられた相手を、まず遠くへ引き離したい。
それが 「彼らの想い」 であると。
そして。
復讐などしたくない。 罪の重さを感じさせる事が復讐。 決して行動で償わせない事が復讐。
それが健一に 「謝罪だけをさせた理由」 なのだと。
彼らの家で、彼らからの最後の警告を受けた健一。 そして、同じく部外者である遥と順子はこの時、3人とも同じ事を考えていた。
『いい加減、彼らを2人きりにさせてあげよう』
周りの人間から見れば長く、本人にとってはまだ短過ぎる土下座を終え、顔を上げた健一は透かさず立ち上がり、何も言わずその場を離れる。
遥や順子にも一切声を掛けること無く、その前を通り過ぎて行く。 洞穴の入口に程近いその場所から外へ出るまでは僅か数秒。 俯いたまま
陽の光に照らされた健一は全く立ち止まる事も無く、深い森の中へ去って行った。 徐々に消えゆく後ろ姿。 以前は大きく見えたその背中も今は
小さく、儚く見えた。
そんな健一を決して追い掛けようとはせず、その姿を只見送るだけの順子。 遥もそれは変わらない。
だが、遥にはどうしても頭の隅で引っ掛かる事があった。 それまで殆ど気にしていなかった 「何となく不自然な点」 が 「どう考えても不自然な点」 に変わった1つの光景。 健一を追うにしても、追わずに立ち去るにしても、その前にどうしても確認しておきたい事。
「・・・・・どうしてまだ泣いてるの?」
レイカは泣いていた。
健一がこの場から立ち去った後、彼女の目からはまた涙が溢れ出していた。
遥の質問に対し、レイカは何も答えない。 もしくは、答えられないという表現の方が正しいのかもしれない。 必死に涙を堪えながら、それを隠す
ように俯いてしまう。 何かに感付いた順子。 イヤな予感が的中してしまったかもしれないと、顔を顰める遥。
「タクヤ君は・・・・・・本当に意識が戻ったの?」
「・・・・・はい」
次の遥の質問には、少しの間を置きつつも答えたレイカ。 だが、その顔はこちらに向けない。
「じゃあ、それからまた気を失ったの? それとも・・・・・・眠ってるだけ?」
この状況でレイカを問い詰める様な行為はしたくない。 そう思いつつ、遥は疑っていた。 本当にタクヤの意識は戻ったのだろうか、と。 もしか
すると、未だに1度も意識が戻らず危険な状態なのかもしれない、と。 健一を確実に遠ざける為、レイカは嘘を付いていたのかもしれない、と。
またしても何も答えをもらえない事で、遥は最後の質問を投げ掛ける。
「レイカちゃん、本当の事を教えて・・・・・・タクヤ君はまだ・・・」
「あの人に・・・・・・」
途中で遮られた遥の言葉。 レイカは何かの決心をした。 それは真実を話す決心。 答えを求める2人は黙ってそれに耳を傾ける。
「あの人にまた会っても、絶対に言わないって約束してくれますか・・・・・・?」
顔を上げ、2人の方を真っ直ぐに見たレイカ。 その瞼はすっかり腫れ上がり、充血した真っ赤な目からは絶え間なく涙が零れ続ける。 彼女の
言う 「あの人」 というのが、他ならぬ健一の事を指し示しているのは問い返すまでもなく理解できる。 遥は迷わず頷いた。 同じく、真実を聞く
ことになる順子も黙って深く頷いた。
2人の無言の返事をしっかりと確認したレイカは、静かに口を開く。
意識が戻ったのかどうかを確認したかっただけの遥は、固唾を飲んでその言葉を待つ。
だが、一言で済む話だと思っていたレイカの発言は、意外にも回想の語りに入る。
それはマコトが消えた直後の、2人が全く知らない真実の出来事。
「タクヤは・・・・・・」
――――――――――
「・・・・・うっ」
「!!」
「・・・・・レイ・・・・・・カ・・・・・・」
傷口からの出血が止まってから、ずっと握り続けていた血だらけの手に初めて力が伝わって来た。 ゆっくりと目を開くタクヤ。
嬉しかった。 本当に嬉しかった。 やっと目を覚ましてくれた。 もう目を覚まさなかったらどうしようって、ずっと不安だったから。
私は思わず声を上げてその名を呼びそうになった。
「タク・・・」
そこで声を出すのを止めた私。 何故なら、横たわるタクヤが精一杯に首を振ったから。
「いるん・・・・・だろ・・・・・・・・・そこに・・・・・・あいつ・・・・・・が・・・・・・・」
苦しそうだった。 痛そうだった。 そんな辛そうなタクヤなのに、周りの状況をすぐに把握してた。 改めてタクヤのこと、凄いって思った。
私は無言で頷いた。 そう、タクヤを傷つけた相手はまだ近くにいる。
タクヤの態度から私はその意向を察した。 自分が目を覚ました事を悟られないようにしろってこと。 大きな声を出すなってこと。
「・・・・・レイカ・・・・・・ケガ・・・・・・ないん・・・・・・だな・・・・・・?」
「うん・・・・・・! 大丈夫だよ、私は元気だよ・・・・・・!」
ずっと泣いてたけど、私はちょっと無理して笑顔を作った。 タクヤを安心させたかったから。
「よか・・・・・・った・・・・・・」
安心してくれた。 それと同時に目を閉じたタクヤは、私と繋ぐ手を強く握り直した。
「いいか・・・・・・あまり・・・・・・しゃべれ・・・・・・ないから・・・・・・よく・・・・・・きけ・・・・・・・」
止めようとした。 「じゃあそんな状態でもう喋っちゃダメ」 って言いたかった。 「タクヤこそ大丈夫なの?」 って聞きたかった。
でも、何も言えなかった。
今の内に、私に何か伝えたい事があるんだって、その表情を見て分かったから。 だから邪魔せずに聞かなきゃいけないって思った。
タクヤの事は顔を見れば何だって分かるんだから。
「あいつが・・・・・・まだ・・・・・・おそって・・・・・・くるなら・・・・・・いますぐ・・・・・・にげろ・・・・・・ひとりで・・・・・・・・」
否定したかった。 タクヤを置いて1人で逃げられる訳ない。 でも、まだ続きがあるって分かったから私は黙って聞いた。
「・・・・・もし・・・・・あいつが・・・・・・われに・・・・・・かえって・・・・・・あやまったら・・・・・・ゆるして・・・・・・やれ・・・・・・・」
「・・・・・どうして・・・・・・そんなこと・・・・・・」
本当に、どうしてタクヤがそんな事を言うのか分からなかった。 その時は、後でまさか本当に謝られるなんて思ってなかったし、あんなに酷い
目に会わされて、どうしてあの人を許さなきゃいけないのか理解出来なかった。
「それで・・・・・・にどと・・・・・・ここに・・・・・・くるなって・・・・・・つたえろ・・・・・・」
そこまで言ったタクヤは、音を殺すように小さく咳き込んだ。
「・・・・・れいか・・・・・・おれ・・・・・・また・・・・・・ねる・・・・・・から・・・・・・」
「うん・・・・・・うん・・・・・・」
「あいつ・・・・・・には・・・・・・いうな・・・・・・・・・あいつ・・・・・・いっしょう・・・・・・くる・・・・・・しむ・・・・・・から・・・・・・・」
その言葉の意味が分からなかった、その時は。
タクヤがもう1度寝たことを、あの人には言うなって事だと思った。 じゃあどうして、あの人が 「苦しむ」 のか分からない。
眠ってしまう前に、それだけ聞いておきたかった。 でも本当に苦しそうなタクヤに、もう喋らせたくなかった。
その時。
どうしようか迷ってた私の手を握るタクヤの力が、一段と強くなった。
力無く開いた目で私の方をジッと見つめる。
「・・・・・げんき・・・・・・でな・・・・・・れいか・・・・・・さいご・・・・・・まで・・・・・・・まもれ・・・・・・なくて・・・・・・・・ご・・・・・・・・め・・・・・・・・・・」
「!?」
言葉が途中で途切れた。 薄く開いてた目が閉じた。 強く握り返されてた筈の手の力が抜けた。
どうしてそんな事を言うの?
どうしてお別れみたいな言い方なの?
そこは 「おやすみ」 でいいんじゃないの?
どうして最後までちゃんと言わずに寝ちゃうの?
そんなに眠かったの?
やっぱり傷が痛むの?
痛過ぎて、どうしても意識が保てなくなったの?
不吉な予感が胸を過った。
私は、恐々(こわごわ)とタクヤの胸に手を置いた。
でも、動揺してるせいか、自分の手が震えてるせいか、ちゃんと鼓動を感じ取れなかった。
そう信じたかった。
必死に心を落ち着かせて、今度は自分の耳をタクヤの胸に当ててみた。
まさか まさか まさか まさか まさか
オトガキコエナイ
「タ・・・・・・ッ」
(タクヤ!!!!!)
心臓が動いてない。 呼吸をしてない。 体が全然動かない。
(・・・・・・う・・・・・・そ・・・・・・・・・・・)
信じられない。 信じたくない。 タクヤが死んじゃった? そんなの有り得ない。 そんな訳ない。 死ぬ訳が無い。 だって、タクヤは言ってた。
(だって・・・・・・だって・・・・・・だって・・・・・・・)
タクヤは 「また寝る」 って言ってた。
(・・・・・・!!)
私は全部を理解した。 分からなかったあの言葉の意味も。 全部。
この事を決して言ってはいけないんだと。 タクヤが死んだ事を言ってはいけないんだと。 あの人が知ったら一生苦しむから。
(タクヤ・・・・・・タクヤ・・・・・・タクヤ・・・・・)
これまでなんかとは比較にならない程の涙が溢れてきた。 止まらない。 声を上げて泣きたい。 タクヤの名前を叫びたい。
でも、声を出せない。 あの人に知られてはいけないから。 タクヤに言われた事だから。
タクヤが私にどうしても伝えたかったこと。
それは遺言だった。
そして、必死に涙を堪えている私に、程無く聞こえてきたあの人の声。
「・・・・・ケガの具合はどうだろう?」
――――――――――
「・・・・・うっ・・・・・・うっ・・・・・・・ぁぅ・・・・・・・ダ・・・・・グヤ・・・・・・・・ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・・・・・!!!」
横たわるタクヤの胸に泣き崩れたレイカ。
2人に全てを話した事で、 「もう思い切り泣いてもいい」 という安心感と、 「タクヤが死んでしまった」 という実感、そして胸に秘めていた深い
悲しみが、荒れ狂う波の如く一気にレイカに押し寄せた。
遥と順子は、自らの頬を伝う涙を拭おうともせず、ただ言葉を失うばかり。 自分達は完全な思い違いをしていたのだと、己の考えを心から
恥じていた。 そして、今度こそ間違いの無い 「真実の答え」 を思い知らされた。
健一が罪の深さを思い知って、それを悔んでいるなら、決して咎めない。
復讐など何もしない。 これ以上、罪の重さを感じて欲しくない。 人を殺めてしまった事を知ってほしくない。
謝罪をしたのなら、後は何もしなくて構わない。 相手が既に死体だと気付かない内に、この場を立ち去ってほしい。
それが 「タクヤの真の想い」
それが健一に 「謝罪だけをさせた真の理由」
順子はここまで考えて、その思考を停止させた。 タクヤの死を心から悲しむ為に。
だが、遥は違う。 まだ更にその先を1人で考えていた。
タクヤはおそらく、最初から分かっていた。 健一が根っからの悪人ではないことを。 まだ出会って間もない健一を見て、単に 「帰りたい」 と
いう一心から狂っているだけの人だということを見抜いていた。
レイカを連れ去られ、脅され、挙句の果てには自分に重傷を負わせた健一の事を、殺したい程に憎んでいてもおかしくない筈。 にも関わらず、
そんな健一の事を心配している。 いや、心配していた。
目の前のタクヤはもう亡くなっている。 健一が去る前から、既に亡くなっていた。
そして、レイカはきっと健一を憎んでいる。 大事な人の命を奪われたのだから。 だが、許すしかなかった。 それがタクヤの遺言だから。
(レイカちゃん・・・・・・)
ここで遥も漸く、タクヤの死と共に、レイカの苦しみを心から悲しむ事になる。
この場の全員が、もはや今日これで何度目になるのか分からない涙をひたすら流し続けていた。 少なくとも遥にとっては、今日が人生で1番
泣いた日であることは間違いなかった。
「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん・・・・・・・・ヒッ・・・・・・・・・ダグヤァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・!!!」
タクヤの体に抱きついたまま、もう滅茶苦茶に泣き叫ぶレイカ。 2人に見られている事など全く気にしない。 悲しみのままに、只ひたすら泣き
続けた。 まるで、どれだけ泣いても涸れる事の無い涙に憎しみをぶつける様に。
当分は泣き止む気配も無いレイカに、どう声を掛けていいのか分からない遥と順子は、彼女が落ち着くまでは黙って傍で見守ろうとお互い心に
決めていた。 自分達の涙も止まらない。
同じ場所で、同じ時を過ごしながら、同じ事に悲しむ。 それが2人に出来る唯一の 「慰め」 だった。
ここまで来て初の後書きしちゃいます。
前書きにも書いたんですが、シリアスなシーンを固め過ぎて、主人公の性格を際立たせる
楽しいシーンが書けなくなっちゃいました・・・・・
次回作への良い反省点が出来ました、ホント。
何かご意見があったらお聞かせ下さい。 あ、悪い指摘やアドバイスも大歓迎です。