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隠居爺放浪記  作者: 西尾みゆき
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雷に打たれる……中々イカす死に方じゃろ? byグレゴリウス8世

ずぶの素人である私『西尾みゆき』がお送りする処女作です!


どうか、温か~い目で見守って頂ければと思います!ⅴ

年明けの聖暦601年1月1日。時の皇帝グレゴリウス8世による年始の言葉から1年は始まる。


皇都の西端に位置する、かつて同じ場所に存在した巨大な石山から当時の大魔法使いが一人で削り出し、それを帝国の祖である初代皇帝グレゴリウスに献上したという謂れのある居城。芸術的な美しさと荘厳さを兼ね備えた城の大広間にてその年始めの儀式は行われる。


扉の両手前には白銀のフルプレートを纏い、手にはシンプルながらも細かな装飾が施された槍を持った騎士が直立不動で佇む。


中に入れば中央を鮮やかな深紅のカーペットが奥へと続き、両脇には帝国貴族の当主、またはその代理の者達がズラリと並ぶ。奥には5段ほどの段差があり上には豪奢に宝石や金銀などで飾り付けられた猫足の椅子があるが、まだその椅子に主人の姿は無い。


ある種恐ろしくなるほどの静寂が続くなか、扉前の騎士が声を張り上げお決まりの文句を言う。


『皇帝陛下、ご入場!!』


その言葉と同時にズラリと並んだ貴族達がバッと一斉にその場にひざまずくと、両脇に並んだ騎士の手によって重厚な音と共に扉が開く。


すると開いた扉から広間へと入る影が11つ。ひざまずく貴族達の間を1歩1歩ゆっくりと、重々しく歩き進めて奥へと足を進めていく。そして5つの段差それぞれに二人ずつ左右に別れて残り、他と同じようにひざまずいて頭を下げる。最後に先頭を歩いていた一人が椅子の前で体を翻して堂々と、しかし静かに気品高く腰を下ろす。そして一言。


『一同、面を上げよ』


静かながらに重いその声が広間に響くと、貴族達が片膝を立てたまま頭を上げ、声を発した自身の上位者を見上げる。


70という歴代皇帝の中でもトップクラスの年齢を表すかのように顔に深いシワが刻まれているが、今でも衰えの見えないその引き締まった身体と鋭い眼光が未だに彼が現役の皇帝であることを主張している。


「宰相よ」

「ハッ」


皇帝陛下により直々に声を掛けられたこの帝国の宰相、シュツェアーリン侯爵が立ち上がる。そして「適度に貴族たちを鼓舞するとともに今年のより一層の勤労を呼び掛ける」といった、ある種の決まり文句のような文言を、しかし貴族らしい長々と飾り立てた口上が宰相の口から述べられる。


そろそろひざまずく貴族たちの腰が悲鳴をあげるかといったところでやっと口上が終わる。


「陛下」

「うむ」


宰相のかける声に皇帝がスッと立ち上がり一言、


「……大義であった」


そう一言皇帝が参列した貴族たちに声をかけ、再び一行が大広間を出て例年通りに年始の式典が終了する。







………………はずだった。






フッと大広間が暗くなる……


採光に必要な陽光が厚い黒雲に覆い尽くされた。そうかと思えばすぐさまにゴロゴロという音が聴こえだした……異変に気づいた貴族たちの声が静かに大広間に満ちる頃には激しく雷鳴が響き稲光が素早く走っていた……。


近衛騎士団長であるヘルガー子爵が配下に貴族たちの混乱を治めるよう命じ、自らは皇帝の身を案じ駆け寄ろうとする。


しかし、その時であった……一筋の雷が皇帝の頭上にあるステンドグラスをすり抜けるように侵入し、皇帝を貫いたのだ……。


「陛下……ッ!」


誰の声だったのか、大混乱の中にあってはわからない。駆け寄ってきたヘルガー子爵の物なのか、それとも側にいたシュツェアーリン侯爵の物か、はたまた別の貴族や騎士だったのか。


しかし例え誰の声であろうとも意味はない。最早皇帝の耳には入りはしないのだから……。


こうして、始皇帝から第26代を数える皇帝グレゴリウス8世の治世は、突然に幕を下ろすのであった……。

一話一話は短いですがなるべく毎日更新していきたいと思います(*^^)v

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