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悪の味方

悪の味方 -2-


全身に痛みが走る。


怪人化する時はドーパミンが脳内を駆け巡る。


直ぐに痛みは消え、ある種の快感へと変わっていく。




「あぁ……ああぁ!!!」




体の感覚は遠くなり、分厚い皮膚が体を覆う。


意識はぼんやりとし、視界は膜がかかったように白まっている。




(今、助けてやるからな!)




自分が思っているのに、自分が思っている気がしない。


この感情は、恐らく怪人にしか理解できないだろう。



暴走した感情を、冷静に俯瞰する自分がどこかに居る。



変身が完了しきる前に、俺は敵陣に駆け出していた。





*****************************





(なんだ、何が起こった?)




俺は、現状を理解出来ずに……いや、理解することを拒んでいた。


さっきまで、桃の首を掴んで持ち上げたはずの緑は、逆に首根っこを掴まれ、宙に浮かされている。




「す、すまん。お、おれが悪かった。た、助けてぇ」




それが緑の最後の言葉となった。


ゴキッと大きな音が鳴って、緑はようやく地に戻った。


ただし、彼の首の骨は折られており、魂はそこから抜けていた。




(こんなに強いのか……デーモン矢倉!?)




かくいう私も彼の一撃であばら骨を、何本か折られ、身動きが出来ずうずくまっていた。


隣では黄色が頭を潰され、絶命している。




「く、くそぉ。ち、近寄るな!こいつがどうなってもいいのか!?」




青色が一瞬の隙を突いて、気絶した桃色を羽交い締めにした。


槍を桃色の首筋に当てて、矢倉を脅している。



「馬鹿、青色!矢倉をこれ以上刺激するな!」



「うるせぇ赤色!こんな時までリーダー面してるんじゃねぇ!」




私が忠告するも、青色は聞く耳を持たない。



矢倉は指先を真っすぐに青色に向けた。




「おい、動くんじゃねぇ!こいつがどうなっても……」




それが青色の最後の言葉だった。


矢倉の指先から発せられた黒い光線は、青色の脳天を貫いた。



青色がその場に倒れ込もうとする。


すると、矢倉は目にもとまらぬ高速で青色の傍に近寄り、一緒に倒れ込む運命だった桃色を支えた。


そして、ぐったりとしている桃色を抱きかかえて立ち上がったのだ。



デーモン矢倉は、どす黒い血管のような波打つ筋肉に全身を覆われている。

体格は変身前の2倍くらい大きくなったように見える。

頭からは角が生え、目は充血して真っ赤に染まり、血の涙が頬を伝っている。


―――まさに、彼は怪人と呼ぶに相応しい。



しかし、私はその姿を見て思ってしまった。

思ってしまったのだ。




彼こそが、ヒーローなのではないか、と。









悪の味方 -2- -終-

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