大草原のちっぽけな八百屋
「いらっしゃい! いらっしゃい!」
「今日は大根が安いよ! 人参もお買い得だよ!」
そんな掛け声も虚しく、大平原に一軒の八百屋が建っていた。
この異世界で来て既に十日ほどたっていた。
俺ことタナベは、ちょっとした事故で体を失いこちらの世界で生きる事になった元日本人だ。
えっ?それでなぜに八百屋だって?
これは俺の能力: スキル・八百屋
何故に八百屋とか聞かれても、この能力は思いの外いい感じだ。
そりゃそうでしょ?
スキルを発動すれば店舗が現れる。
これが日本国ならなんの事はないが、異世界だぜっ異世界!怖いし、危ないじゃん!
広大な平原での深夜とか、ガクガク ブルブル
ユンピョルが群れをなし徘徊している
ハイエナの様な肉食獣だよ
そしてこの数日、この能力を把握する事に夢中になっていた。
店舗の陳列棚には、野菜が三種類ありザルに入れられていた。
これは販売と言う意味らしく、何処かの町の一角で店舗がオープンされていると言う事だった。
野菜は三種類!
・ニンジン
・ダイコン
・ハクサイ
なぜと言われれば分らないが、これが一日に三個ほど出現し販売が出来た。
始めの三日は全く売れなく、どうしたものかと思っていたが、それを過ぎると売れだし金銭となったのだ。
そのお金は一日の最後に売り上げとして計上された。
このスキル八百屋には、キッチンと風呂場が設置されている。
これには驚いたね。
蛇口から水が出るし、コンロでは火がつき調理が出来た。
それを考えれば至れり尽くせりなスキルと言える。
空腹は売れ残った野菜を茹でては腹を満たしていた。
スキル欄には拡張わくが多く、金銭を使いどんどん商品や販売枠が増やして行ける事が分かった十日間だった。
よく来たね。この世界は現実世界では起こり得ない事が起こる異世界・別世界!
君の肉体は想定を反した力により、こちらの世界の扉を解放した。
そして君の国に伝わる職業を君の力とし、この異世界で生きていく事を認めるよ。
「じゃあ頑張ってね」
簡単に手を掲げ挙げた先に女性らしき姿が見えた。
空気を切り裂き空間を飛び越えワープする。
気が付けば広大な平原が広がる世界に舞い降りていた。