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「そこにお座りになって。貴方に質問をするから答えて頂戴」
僕は、御堂美矢に言われるまま、座卓の前に腰を下ろした。正面には御堂美矢が座る。
「貴方のお母様はどんな方?」
僕は自分自身の母を想像した。だが、上手く思い出す事が出来なかった。僕の母は、僕が三歳の時に亡くなっている。唯一覚えている顔は、写真の中の母だった。
「僕の母は、あまり覚えていなくて。でもきっといい母でした」
「そう。亡くなったのね。お母様」
「ええ」
「お気の毒に。お母様もさぞ悲しいでしょう。母親に甘えたいと思った事はある?」
僕は考えた。甘えたいと思った事は、少しはある。だが、それを世間や周りの人間は許してはくれない。いつしか押し殺すようにして、僕は他人に迷惑のかけない人間を装った。そうすれば、いつか誰かが僕を褒めてくれるんだと言い聞かせながら。
「よく分かりません。他人に甘えるという事自体、あまりした事がないので」
「そう。それじゃあ最後に。最後まで私と一緒に居てくれると約束出来る?」
その時、御堂美矢の瞳が、心に迫るものだった。ここで引き返さなければ、終わりまでの間、僕はずっと彼女の子供を演じなくてはならない。だがこの仕事を断って、僕は何が出来るだろう。仕事仲間にハメられ、クビにされた僕なんかを、必要としてくれる場所などあるのだろうか。
「はい」
僕は気がつくと、首を縦に振っていた。




