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※気分の悪くなる描写があります。

いくら時間が経っても、彼女はやって来なかった。僕は空腹と、膀胱が限界に達していた。何度かフェンスから顔を覗かせて、唸った。やがて唸りはどんどんと大きくなり、喉が張り裂ける位、言葉にならない声で叫んだ。

ようやく扉が開くと、彼女は先程の怒りが晴れたように澄んだ顔で僕の元へと歩いてきた。僕は苛立ちの募った顔を彼女に向けた。

「あら、不機嫌ね。よしよし、お腹がすいたの?」

彼女の両手はトレイで塞がっていた。トレイの上には、お粥のようなものが入った皿が乗っている。

「タマをペンチで潰そうと思ったのだけれど、止めたの。だって愛する我が子を傷つける母がどこに居て?」

彼女は淡々と言った。僕は自分の玉が、らっきょうのように潰される様を想像して、縮んだ。それから、トレイを一度サイドテーブルに置くと、彼女はスプーンを取り出し、僕に食事をさせるようだった。それは一体何ですか?と、聞きたくなる思いを抑えていると、僕の首には白いナプキンがつけられた。

「ご飯の時間よ。いっぱい食べてね」

彼女の細い手に持たれたスプーンは皿の中の食べ物をすくった。白いどろどろの液体の中にオレンジが混じっている。それを僕の唇へと押し付けた。匂いは微かに甘い。人参の香りだろう。僕はそれを食した。噛む必要がなく、ただ飲み込むだけの作業。食材の微かな味のみが舌に残った。正直に言って、美味しくはない。温く粘り気のある感触が喉を通る。

「よく食べられました。はい、あーん」

彼女は何度もスプーンで僕に、食事と言う名の作業を強要した。それを繰り返している最中、僕の身体は身震いをした。そう、今にも小便を漏らしそうだったのだ。僕は内股を擦り付ける動作をして、唇を噛み必至の形相を浮かべながら、喉の奥でンー、ンーと唸った。それに気づいた彼女は、スプーンを持つ手を止めて、凝視した。

「どうしたの?陽一。もうご飯はいらない?」

「……!!」

僕が目で訴えると、御堂美矢にはそれが伝わったらしい。

「ああ、おしっこね。ごめんなさい。忘れていたわ」

そう言うと、彼女は背中を向けて、さっき床に置いていた箱を開けて中から、紙オムツを取り出した。

「でも、今取り替えたら、私におしっこがかかってしまうかもしれないわ。そのままなさい」

冗談じゃない。僕は思った。この歳になって、人前で小便を漏らすなど、いくら僕でも小さなプライドが許さない。だが、我慢をしている僕を見て、御堂美矢の顔にはまた苛立ちが露になってきていた。

「私の言うことが聞けないの?このままなさいったら」

御堂美矢は僕の肩を掴んで思い切り揺さぶった。その途端、ズボンに温かい感触が広がって、尻にまで届いた。小便を漏らしてしまったのだ。僕は恥ずかしさと、情けなさで、顔を真っ赤にした。

「今オムツを取り替えてあげるわ」


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