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僕の返答にも耳を傾けずに、彼女は黄色の服を床に捨てると、青い服を持って僕の股の下へ移動した。そうして僕のシャツのボタンに手をかけた。白く細い指と、御堂美矢の顔が僕に近づく。思わず喉が動き、鼓動が急ぎ出す。僕は平静を保とうと努めた。シャツを脱がし終えると、御堂美は今度はズボンのボタンに手をかけた。僕は思わず彼女の手を掴みそうになった。全くの赤の他人に下半身を見られるなんて事は、銭湯などの風呂以外では経験した事がない。それも女性に。僕の動作に、彼女は不審そうな顔を浮かべて一瞬だけ手を止めたが、直ぐに何事も無かったかのようにズボンを脱がせ始めた。だが、その顔は石のように固まった。まるで虫でも見るかのような、嫌悪感を顔中に集めたような顔をしている。僕は反応してしまっていた。
その途端、彼女の態度は急変した。彼女の顔は白から青へと見る見る変わっていく。
「何なのこれ……」
僕は咄嗟に口から漏れた。
「す、すみません」
「しゃ・べ・る・な!!」
彼女の声は部屋の中に響き渡った。僕のそれは直ぐに萎えたが、彼女の怒りは治まらず、瞳の裏側から睨みつけている。
「ふざけるな。赤ん坊なのに、こんな風になる訳が無いでしょう」
声は低く、強く結ばれた拳から伝わるように体が震えていた。僕は謝ることも出来ず、どうしようもなく、とにかくこの状況が早く終わって欲しいと、仕切りに唇を舐めたり噛んだりしていた。
「もういいわ。しばらく、こうしていなさい。反省するまで許さないから」
そう言って、彼女は僕一人を残して部屋から立ち去った。梟が空中で揺れているのを見ながら僕は、気持ちを落ち着かせた。もう既にここから逃げたくて仕方がない。だが、さっきの失敗を二度としなければ、一ヶ月後に金が貰えるのだ。そうすれば、彼女とは一生お別れをすればいい。




