悩んだ結果
そうやって話をしている時、電話が鳴った。
俺が電話に出ている間に、王様は色々考えたようだ。
戻ってきた時には、覚悟を決めたような顔をしていた。
「今日聞いた話は、なかなか考えさせられた」
「そうですか。良かったです」
「しかしすぐに出来る事ではない。
そこでまずは身近な所から始めようと思う」
「ほう? それは?」
「国が運用している孤児院がある。
他にクラウス教の教会にも孤児院がある。
それらをまずは統合し、教育を始めようと思う」
あぁ、孤児を教育するのね。
現在も国がやってるなら、少しやり方を変えるだけで良い。
そこに民間がやってるのも足すだけか。
さすが、考えてるね。
「そこで結果を見せれば、スラムにも取り掛かれるだろう。
ところで、君の案なのだから、少しは協力してくれるね?」
「まぁ出来る事があれば協力しますよ。
現状では寄付くらいですかね」
「寄付か。どれくらい?」
「会計の仕事で稼いだお金くらいですかね」
「……お前、破格な値段で受けてるだろ?」
「知ってましたか。でもそれくらいですよ。
ちなみにシロやクロが討伐などで稼いだお金は、シロ達の物なので。
それが欲しかったら、本人と交渉してください」
「教育で協力してくれないかね?」
「う~ん、そこは難しいですねぇ。
まぁ、少し考えてみますよ」
「頼む」
一応10進法だったので、算数くらいは教えられる可能性はある。
でも九九みたいに語呂合わせな教え方は難しいんだよなぁ。
言語違うし。数字も違うし。
後、どこまでのレベルにあるのかも知らない。
商人が和差積商のどこまで暗算で出来るのだろうか?
ソロバンとか電卓とかあるのか?
そもそも識字率はどうなってる?
こんな感じで知らない事が多すぎるので、気楽に受けられないんだよな。
それを言うと、長々と教えられそうだから言わないけど。
その日の晩は、酒を飲みながら王様は悩んでた。
悩むなら帰れば良いのになぁ。
帰ったのは翌日の朝だった。
さて、今日は忙しい。
原因は昨日の電話にある。
なんと! 社員が来るというのだ!
昨日は王様の相手をしていたので適当な返事をしてたのだが、そこで今日行きますとなってしまったんだ。
生返事ばかりしてたのが良くなかったのかも。
なんか新しいソフトが出たけど、使ってみても良いか的な話だったと思う。
とにかく、社員には異世界の事を知られるのはマズい。
こっちの世界で日本の事を知られるのは別に良いんだ。
結界に入れないしな。知った所でどうにも出来ない。
でも、日本の場合は違う。
SNSとかで一気に情報が広がるだろう。
異世界に自衛隊が行く話のように、外国まで目をつけてくる可能性も大。
日本でも結界が有効かも判らないので、注意する事に気をつけたい。
話を聞くだけ聞いて、さっさと帰ってもらおう。
そんなにプライベートに踏み込んでくるようなヤツじゃないので、大丈夫だとは思うが。
「こんちは~!」
「来たか!」
ちゃんと離れの方に来るように言っておいた、俺エラい!
早速出迎える。そう言えばあんまり日本側に行くなと言われてた気もする。
……うん、気にしない。問題有れば言ってくるだろ。
「おう、久しぶりだな」
「社員でも、自宅でパソコンだけで仕事になりますからね。
会わなくても問題無いですし」
「話があるんだってな。まぁ、上がれよ」
「お邪魔しま~す。ところで、何で離れを作ったんです?」
「え~……シロの家だ」
「猫に家を与えたんですか?! どんだけ金持ちなんですか!」
「いや、最近犬も飼い始めたんだよ。それもあってね」
「ペットの為に買う大きさじゃないですよ!」
「小さいと困るけど、大きくても困らないだろ」
「そういうレベルじゃないですけどね……。
で、足元に居るのが、その犬ですか?」
足元?
……なんでクロが居るんだよ!!




