伝達魔法
夕飯も終わり、シロの機嫌も上々だ。
さ、ここで魔界でした事を怒らないとね。
知っている国が攻められたからと言って、さすがに他国を蹂躙するのは間違ってると思うし。
怒るにしても手順がある。
まずは情報を入手しないと。
向こうで何をしたかによって、怒る内容が変わるからだ。
「シロは魔界で何をしてきたんだ?」
「大した事はしてませんよ?」
「教えてくれよ」
「良いですよ。まず、到着と同時にエーが魔界中に魔法を使いました」
「魔法? どんな?」
「一方的な伝達魔法です。
魔力が足りないので無理とか言うので、魔素を無理矢理渡して実行させました」
魔素を無理矢理?!
それは危険な行為じゃないかな?
「無理矢理は良くないんじゃない?」
「そうですか? 悪魔は魔素を使う事も出来るそうなので、問題無いと思ったのですが」
へ~、人間とは違うんだね。
なら無理矢理譲渡されても、死ぬ事は無いのかもな。
ここは流しておこう。
「そうなのか。それで?」
「伝達の内容は『俺が悪魔では1番強い。異論のある者は今すぐ来い!』です」
「……本当なのか?」
「魔素を渡したのでそうなるんじゃないでしょうか?」
「あ~、なるほど。
ところで、悪魔はどうやって魔素を入手するんだ?」
「魔素保有数値の高い植物を大量に摂取する事で、1づつ貯まるそうです。
これは聞いたままを言ってるので、ウソを言われていたら違うかもしれませんけど」
シロを前にウソを言うとは思えないから、事実なんだろうな。
例えばビタミンが欲しいからと、生野菜を大量に食べる感じか。
飽きそうだ。それに美味しいとかの情報が無いから、味はイマイチなんだろう。
やだなぁ、あまり美味しくない物を自分の為とはいえ大量に食べるのは。
「魔素の事は判った。
で、集まってきたんだろ?」
「そうです。10分もしない内に第1級から4級までの悪魔が集結したそうです」
「……何人くらい?」
「沢山居ましたね。聞いたところによると、1万人は居たのではと」
1万!
第1級とか言うくらいだから、実力主義っぽいとは思ってたけど。
まさかそんなに集まるとはなぁ。
俺だったら行くか?
例えば『デイトレードは俺が一番上手い! 文句のあるやつは俺と対戦しろ!』って言われたとしよう。
……あっ、行かないわ。『はいはい、そうですね』って言って終わりにしそう。
まぁそれ以前に、来いと言われても家から出ないけどさ。
「それで、その1万を倒したと?」
「いえいえ。
『よくもここまで有象無象が集まったな!
お前達の相手をするまでも無く、俺がトップと判ってしまうわ!
おっと、文句がありそうな顔をしているな。
では、俺への挑戦権を得る為に、俺よりも強い……いや、弱い猫様、いや、シロ様、いや、シロ……さん。
すみません、これで良いです? 問題無い? 後から怒りませんよね?
ヴヴン! シロさんと戦ってもらうかな?
シロさ……んに勝てたら俺が戦ってやろう。
あ? 何? 時間稼ぎ? 弱るのを待ってる? はは! 勝ててから言え! この弱者共が!!』
という流れになりまして」
「…………流れになったんじゃなくて、そう仕込んだだろ」
「違いますよ。最初は私が全てを倒すと言ったのですが、
『知らない猫にいきなり蹂躙されたって戸惑うだけで、統治出来ません』と断られました。
その後、話したようなプランをエーが自分から言ったんです」
悪魔エー、頑張ってるな……。
なんか、ゴメンな。年末にはお歳暮でも持っていくかなぁ。
「で? 倒したのか?」
「第1級と第2級、全員を1秒で倒したら終わりました」
「1秒か~……。え~と、全員死んだ?」
「いえ? 統治に必要なので、半分しか死んでません」
半分死んだって何?!
悪魔の世界では常識?
それとも半殺しの事?
「……その場に居た第3級と第4級は?」
「全員土下座してましたね」
シロが悪魔よりも悪魔な件。
怒りたいけど、怒れません。




