シロの回。厄介事4
『シロの回。厄介事4』
クロを連れて結界を出ました。
すぐにワラワラと兵がやってきます。
「クロ。死なないように手加減して魔法を使ってみなさい」
「は~い! でも、何で手加減するの?」
「主が嫌がるかもしれないからですよ」
「何でご主人様が嫌がるの?」
「交渉時に不利になる可能性があるのです」
「……よく判らないけど、判った! ガンバル!」
ちょっとまだ難しかったようですね。
さて、クロはどういう魔法を使うのでしょうか?
注意して見ていると、どうやら前足に変化が出てきました。
私のように爪が伸びる訳ではないようですが。
ほう。どうやら前足に風の魔法をくっつけているみたいです。
それで兵に触れると、吹っ飛んでいきます。
触れる前提なので体に何度か攻撃を受けているようですが、結界のお蔭で無傷ですね。
「クロ、攻撃を受けてますよ」
「うん! 触れたくらいにしか感じないから、良いかな~って!」
そういえば私はまだ一度も受けた事がありませんでした。
その程度なんですね。初めて知りました。
しかし心臓に悪いです。
「痛くなくてもちゃんと避けなさい」
「どうして?」
「主が悲しみますよ」
「えっ?! 判った! 避ける!」
理解してくれてなによりです。
「ところで、その魔法の使い方は?」
「昨日ご主人様が使ってた!」
主が使っていた?
主にはそんな魔法は使えないと思いますが。
それに結界内なので、発動しないはずです。
「何時ですか?」
「ご飯の後!」
夕飯後? ゲームをしたくらい……あぁ、ゲームのキャラですね。
確かご主人様は「龍が昇る感じで打つ拳!」と叫んでました。
あの技ですか。
確かに拳に何かを纏ってるビジュアルでしたが。
でもあの技はキャラもジャンプしてましたよ?
クロのようにてふてふと歩いていって、兵の足に触るだけではありません。
敵の飛び方も上半身が仰け反る形ですが、クロの場合は回転しながら飛んでいきますけど。
「回転しているのは何故です?」
「転がった方が怪我しないでしょ?」
それは受け身の話では?
空中で回転していては、受け身も取れない気が……まぁ良いでしょう、死んでなければ。
10分もすると、誰も私達に向かって来なくなりました。
なので走って街に向かいます。
クロは外に興味があるのか、キョロキョロして寄り道ばかり。
なので、私の背に乗せて運びます。それはそれで楽しそうにしていますね。
「この子の登録をお願いします」
「えっ?! わぁ可愛い子犬!って、登録?! もしかしてあの人の従魔なの?!」
シャティさんの顔が引き攣っています。
弟のあまりの可愛さに、喜びも表現出来ないほどメロメロになったのでしょうか?
「強さは私よりも下ですけど、強いですよ。
まだ子供ですので、採取などは難しいかもしれませんが」
「え、えっと……ギルドマスターと話しましょう! そうしましょう!」
そう言って、ギルドマスターの部屋に案内されました。
部屋に入ると、テーブルで難しい顔をしているギルドマスターが居ました。
手元には主の作った書類が。そんなに難しい書類だったのでしょうか?
「主の書類に何か問題でもありましたか?」
「ん? あぁ、シロさんか。
いやいや、書類に不備はないよ。それどころか、紙も凄いし内容も凄い完成度で驚いている」
「ではどうしました?」
「完成度の高さ故に、問題が浮き彫りになったんだ」
「はぁ」
「これを見ると、癒着や着服などの不正が簡単に解ってしまった。
どうにかしたいけど、そうすると人員が足りなくなるし……」
「そうですか。大変ですね。
それよりもこの子の登録をお願いします」
「……もうちょっと、気を使ってもらっても良いんじゃないかなぁ。
えっと、この子って……どこに?」
テーブルに座ってると見えないようですね。
テーブルに乗せましょうか。
「子犬だね……はっ?! まさか!!」
「はい……あの人の従魔だそうです……」
「名前はクロと言います。ほら、挨拶しなさい」
「クロ! よろしく!」
「よく出来ました」
「えへへ~。 そうだ! 困ってるならご主人様に聞けば良いよ! 賢いもん!」
確かに。問題点を発見するような書類を作った主なら、同時に解決策も用意しているでしょう。




