10日目(19)―通じる気持ち
手を繋いで歩く帰り道、駅までは、私たち以外にも帰る人が大勢いて。
やっぱり、ミーナの手、あったかい。繋いだままポケットに入れたミーナの手は、心も、体も、あったかくしてくれる。
「もう、すっかり暗くなっちゃったね……」
「本当だね、まだ5時くらいなのに」
日が短い季節だから仕方ないけど、もう外はほとんど真っ暗で。寒いから、ちょっと早足で駅まで向かう。
行きとおんなじように、でも人波に揉まれないように改札を通って、ホームに行くと、やっぱり、たくさんの人で溢れてた。
「電車、今度は混んでるからね」
「そうだねぇ、人いっぱいだし」
やっぱり、着いた電車は、私たちが乗る前にもう大分混んでいた。
電車に乗り込むと、ぎゅうぎゅう詰めにされてるから、ミーナとの顔が、自然に近くなる。
抱き寄せて、その距離をもっと近くする。
ミーナのにおいが鼻腔をくすぐる。それだけ、顔が近い。私の中に潜む衝動が、顔を出しそうになって。
唇を寄せそうになった瞬間に抱き寄せられて、耳元で囁かれる。
「もう、こういうとこでしちゃだめだって、カスミが言ったんでしょ?」
「そ、そうだけど……っ」
キスしたいのなんて、すぐばれちゃって、釘を刺される。
普段は、私が我慢させてるほうなのに、今日は、私の気持ちのほうが、抑えられなくなっている。
「帰ったら、いっぱいしようね?」
「う、うん……」
でも、そんな事を言うってことは、それだけミーナも、キスしたいってことかな。
『恋人』になって、今までだっていっぱいキスしたのに、今更そんなことでまたときめいてしまう。
降りる駅に向かっていく度に人が減っていったせいで、抱き合う言い訳を作れなくなって、ちょっと残念だけど腕を離す。
その代わりに、と、自然に手が繋がる。こうしてるだけで、なんだかほっとする。
「そろそろ、おうちだね」
「うんっ」
弾んでる声は、家に帰るのが、……キスするのが、待ち遠しいからなのかな。
私がただそう思ってるだけかもしれないし、ただ自分がそう思ってるのを投影させてるだけかもしれない。
でも、ミーナなら。こんなに時間を一緒にして、一緒の想いを抱いてる人なら、きっとそう考えてる。
駅まで着いて、そこから家まで歩くときも、自然と手を繋いで、今までそうしたみたいに繋いだ手をポケットに入れて。
家に帰って、ほっとするような、ドキドキするような、不思議な気持ち。まるで、ミーナに抱きしめられてるときみたいに。
「「ただいまー」」
「あら、おかえり」
その声を背中に受けて、お互い、分かってるみたいに二人の部屋に向かっていった。
今日は更新多いはずです。




