10日目(18)―真っ赤な顔
まさかの1日2話更新。ストックもないのに。
ふと、視界が暗くなる。スクリーンのほうを見ると、もうエンドロールになっていて。
結局、映画なんてほとんど観れなかったな。心の中、ミーナでいっぱいなっちゃったから。
「映画、もう終わっちゃったね」
「全然見れなかったね……、カスミのせいで」
「もう、何で私のせいなの?ミーナってば、先に寝てたでしょ?」
「そうだけど……っ」
その続きを言われたら、多分嬉しさとか恥ずかしさとか、何もかもが混ざって、顔中熱くしちゃうのに。
「だって、キスされたせいで、カスミのことしか見えなくなっちゃったもん」
耳元で言われた言葉は、やっぱり、私の心をキュンと鳴らせるには十分すぎた。
「ずるいよ、そんなこと言うの……っ」
「本当の事だもん、……じゃあ、カスミは、どうだったの?」
「私も、ミーナのことしか、見えなくなっちゃった……っ」
「じゃあ、おんなじだね」
同じことを想ってしまうのは、同じ気持ちを抱えてるから。……私とミーナが、お互いにお互いを恋してるから。
今だって、耳元から顔を離して見つめ合った視線が、自然に近づいて、唇が重なる。
暗いことをいいことに、ずっとずっと気持ちを確かめ合って。
部屋が明るくなったのに気づいて、真っ赤になったミーナの顔がはっきり見える。
「そろそろ、出よっか」
「でも、顔赤いの直さなきゃ……」
「じゃあ、ジュースでも飲んで、ちょっと休もっか」
「そうだね、あるの忘れてたよ」
よく冷えてたオレンジジュースは、火照った体を芯から冷ましていく。
ストローで飲んでるからすぐにはなくならないはずなのに、いつの間にかもう無くなっていた。
その頃には、顔の火照りも、大分収まってきて。
「わたしの顔、まだ赤くなってる?」
ミーナの顔は、もういつもと同じくらいになってるけど、……それをまじまじと見たせいで、また、顔が赤くなっちゃいそうになる。
「ううん、もういつもと全然変わんないよ」
「カスミは……まだちょっと赤いかな」
それは、ミーナの顔を見ちゃったせいだから、なんて言えない。そんなこと言ったら、またからかわれちゃいそうだから。
「大丈夫だって、これくらい」
「本当に?」
「もー、本当だって」
こうやって、話をするだけで楽しいし、心がほぐれてく。
「本当だ、さっきより、赤いの収まってるね」
「じゃあ、そろそろ帰ろっか」
「うん、……そうだね」
ちょこっとだけ、寂しそうなミーナの声。でも、私の中にも、デートから帰るってことに、寂しいって思うとこがある。帰る家も同じで、ずっと一緒にいるっていうのに。
そのくらい、今日のデート、楽しかったのかな。それなら、すっごく嬉しい。
空いたジュースのカップをゴミ箱に捨てて、また、手を繋いで歩き始めた。
にゃんにゃんしてる。