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私と愛猫(かのじょ)。  作者: しっちぃ


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90/100

10日目(15)―恋のドキドキ

90話です。

 頼んでる料理が来るまで、二人でとりとめのない話をする。


「今日の映画、楽しみだね」

「うん、すっごく人気みたいだし、どんなんだろうね」

「すっごく、面白いんだろうなぁ……」

「そうだといいねぇ、このために来たみたいなものだもん」


 映画を見るって口実でデートしてるのに、それが面白くなかったら楽しみがちょっと減っちゃう。……まあ、今まででも、十分、楽しいんだけども。

 

「そういえば、……今日、私と一緒で楽しい?」

「うん、すっごく!」

「よかった……、私も、だよ」


 そんなことを話してると、頼んでた料理が来る。私のだけ来たことに、不機嫌そうにミーナがほっぺを膨らます。そんな顔を見てたいって気持ちと、先に食べたら悪いなって気持ちが浮かんで、ミーナの分が来るまで待つことにする。

 ほんのちょっとだけ待って、ミーナの分も来る。さっきまでのむっとした顔が、急ににっこりと笑ってるのが、わかりやすくてかわいい。

 

「じゃあ、食べよっか」

「うん、そうだね」


 ミーナの分のとんかつにソースをかけてあげてから、一緒に食べる手を進めていく。私よりも箸を進める手が早いミーナに、ちょっと聞いてみる

 

「どう、おいしい?」

「うん、おいしいよ?」

「そっか、よかったね」

「じゃあ、食べてみる?」


 急にそんなこと言われても、困っちゃう。


「カスミの分、ちょっともらうから、先にそのお返し」

「ん、そっか」


 かつを一切れ挟んで、私の方に差し出してくる箸を、ちょっとだけ前かがみになって受け止めて。

 それだけなのに、なぜかキスをしたときくらいドキドキしちゃう。そっちのほうが、ずっとずっと深いことなのに。

 

「……どうだった?」

「うん、おいしい」

「へへ、よかったぁ……っ」


 甘い声で、そんなこと言わないで。胸の奥が、もっともっと高く跳ねちゃうから。


「じゃあ、……今度は、私の番だね」

「うん、……ちょうだい?」


 何でだろう、その言葉で、ほっぺが熱くなる。

 零れないくらいにオムライスをスプーン一杯に掬って、ミーナのほうに差し出す。それを口に含むとこは、なぜか見れなくて。

 スプーンに触れた感触で、ミーナがそれを食べたって気づく。


「どう?おいしい?」

「すっごく、おいしかったよ?」

「それなら、よかった……」


 ミーナの口から引き戻したスプーン。それをそのまま使い続けるってことを意識しただけで、ものすごく、体が熱くなる。

 オムライスを食べる一口ごとに、ミーナとキスしてるって錯覚しちゃうから。

 普段、二人でキスするときは、誰にも見られないとこでだけど、今は、二人きりじゃないってわかるから。

 食べ薦める手が、おぼつかなくなっていく。胸の鼓動が、どんどん激しくなっていく。


「大丈夫?もうお腹いっぱいになっちゃった?」

「ううん、そうじゃないよ……」


 携帯のバックライトをつけると、ここに着いてから、1時間近く経っていて。

 ミーナの食べてたお膳をみると、もう無くなっていた。


「急ぐから、ちょっと待っててね?」

「じゃあ、トイレ行ってくるから」

「うん、わかった」


 そろそろ行かないと、映画、楽しめなくなっちゃう。

 ゆっくりと息をしてから、意を決してオムライスを食べきる。

 

「ただいま、……って、もう食べ終わったんだね」

「おかえり、早くレジ行って、映画館のほう戻ろ?」

「わかった」


 今までとおんなじように、一人ずつのお金で払って、店を出る。

 映画館まで行く道は、やっぱり自然と手を繋いでいた。

完結予定日まであと1週間。

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