9日目(17)―甘いいたずら
「ふぅ……、そろそろ、シャワー浴びなきゃね」
いっぱいキスしたせいか、ドキドキして、もう体が火照ってきてる。これ以上湯船に浸かってたら、のぼせて倒れちゃいそう。
「そう、だね……」
ミーナの顔も、りんごみたいに赤くなってる。ほっぺを触ってみると、私の手とちょうど同じ温度。
「ふふっ、ミーナも、あつあつだね」
「もー、言わないでよぉ……っ」
お返しと言わんばかりに、ほっぺをぷにぷにされる。ミーナの手の触れる感触が、あったかくて気持ちいい。
「カスミだって、熱いね」
「もう、ミーナってば……」
胸の中をざわつかせてた気持ちも、いつの間にか引いていて。
きっと、あの気持ちは、恋心の延長線。ミーナと、もっと繋がりたい。そんな気持ちが、無意識に溢れてただけ。
でも、もう大丈夫。だって、そんなことしなくたって、ミーナと私はぎゅっと繋がってるから。
「今日も、背中流そっか?」
「いいよ、……じゃあ、私もしてあげるね?」
「へへぇ……、お願いね」
シャワーを出して、温かくなったのを確認してから一緒に湯船から上がる。
「わたしから、していい?」
「うん、じゃあ、お願いね?」
ミーナに言われて、丸椅子に座る。
後ろから、シャワーを当てられて、ちょっとだけ身がすくむ。漏れた息が、変な声になっちゃう。
「大丈夫?変なとこかけちゃった?」
「ううん、それは大丈夫だよ」
「それなら、よかった……」
ミーナが、床に膝をつく音、ボディーソープを乗せた手が、私の背中をかき回していく。
優しく触れる手に、胸の鼓動が、どんどん早くなっていく。
「カスミ……、さっきの声、めちゃくちゃかわいかったよ?」
耳元で囁かれた言葉に、私の頭の中も真っ白になる。
「な、何言ってるの……っ」
「駄目?……そんなとこも、大好きだよ、カスミ」
「もう、ミーナってば……」
さらりとそんな事言うなんて、反則。熱くなった、きっと真っ赤になってる顔が、見られないだけまだいいのかな。
そんなの見られたら、また、からかわれちゃいそうだから。
「じゃあ、流すよ?」
「うん、わかった」
シャワーが、背中を叩く感触と一緒に、ミーナが、手で泡を流してくれてる。
その指先が、私の肌に触れてくすぐったい。
「ふぅ……、終わったよ?」
「うん、ありがと。……じゃあ、今度は、私の番だね」
私の座ってたとこに、ミーナが腰をかける。
ミーナの無防備な背中に、思わず息を吞む。
「ん?どうしたの?」
「な、なんでもないよ?」
流しっぱなしにされてたシャワーで、今度はミーナの肌を濡らす。
シャワーを止めてから、私の頭はミーナにされたいたずらのお返しを考えてしまう。
それを怪しまれないように、ボディーソープをミーナの肌につける。
しばらく普通にミーナの背中を撫でて、それから指で背中に文字を描く。
「ひゃっ、……な、何……?」
「ふふ、今、何て書いたと思う?」
「ん……、『だいすき』?」
「うん、当たりだよ?」
泡のついてない首元に、そっと唇をつける。
こんな大胆なこと、自分でも恥ずかしくなる。
「えー?……キスするの、そこじゃないよぉ……」
「じゃあ、どこ?」
どこかなんて、最初からわかってる。だけど、私の中の勇気は、もう無くなってしまってる。
背中を向けてたはずのミーナの顔が、私のほうを向く。
ミーナの手にほっぺを包まれて、逃げることなんてできない。
「もう、……『ここ』に決まってるでしょ?」
もう、何回もしてきた事。体は、すっかり覚えている。
瞳を閉じた瞬間重なった唇の温もりが、私の心を溶かしそうなくらい温めた。
クリスマスイブが2人が出逢ってちょうど1か月になるしなんかおっぱじめそうだよね(書き手並の感想)