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9日目(15)―甘い気持ち

 私の机に戻って、あのときの唇の感覚を思い出す。

 キスなんて、毎日してるのに、あの一瞬だけ、なぜか頭に残る。

 

「ねえ、ミーナ?」

「何?」

「私も、ちょっと分からないとこあるから、教えてほしいなって」

「うん、いいよ?」


 本当は、嘘。今やってるとこは、むしろ私にとって簡単なとこ。

 ミーナが、席を立つ気配。私のすぐ横に来たのを、声の向きと左手に触れた手のひらの感触で知る。


「どこ、教えてほしいの?」

「ここ、わかる?」

「うん、ここはね、……」

 

 聞かなくても、もう答えは分かる。ただ、教えてもらうとこより先に進まないようにして、答えを埋めるだけ。


「ありがとね、ミーナ」

「ううん、いいよ、カスミ」


 唇を、ミーナに預ける。さっきは見下ろす角度だったけど、今度はミーナのことを見上げるように。

 ミーナの唇が、ゆっくり近づいて、そっと触れる。この感触が、愛おしくてたまらなかったから。

 心をミーナに満たされて、さっきよりもずっと勉強が捗る。

 

「二人とも、お風呂空いたわよ?」


 集中してたら、いつの間にか時間は過ぎていた。


「うん、わかった」


 その声に、お母さんが階段を下りる音が聞こえる。


「お風呂、楽しみだねぇ」

「最初のころは、あんなに嫌がってたのにね」


 最初は嫌がってたお風呂も、今はもうミーナはその時間を楽しみにしてるみたい。


「ちょっと、好きになっちゃったかも、……カスミのおかげだね」


 そんな甘い言葉、簡単に言わないでよ。もっともっと、好きになっちゃいそうだから。


「じゃあ、一人で入ってみる?」

「……絶対無理っ!」

「えー?何で?」

「だって、私が好きなのは、二人のときだもん。……カスミと一緒じゃなきゃ、嫌だよ」


 どうしよう、胸の奥が、止まらないくらいバクバクする。私の中の恋心が、あっという間に熱を帯びていく。


「もう、ずるいよ、そんなこと」


 ミーナのことしか、見えなくなっちゃう。それくらい、その言葉は、甘くて、惚れなおしそうになる。

 差し出した唇を、そっとミーナが受け止めてくれる。倒れそうな体を、抱きとめてくれる。

 このまま、ミーナに、何もかも奪われちゃいたい。そんなことを思っちゃうくらいには、ミーナのことで頭がいっぱいになる。

 しばらくそうしていて、ミーナから唇を離される。


「カスミ……?一緒に、お風呂入ろ?」


 耳元で言われた言葉に、心臓が止まりそうになった。

 ずるいよ、こんな、かわいいなんて。


「……わかってるって」


 でも、もう足に力が入らない。怪我したとこが痛いからじゃなくて、もっと、こうやってミーナに甘えてたいから。

 ミーナの温もりに、心が蕩けてしまってるから。


「お風呂入れなきゃ、明日、デートできないよ?」

「ん……、待って、今立つから」


 ただ地面についてるだけだった足に、なんとか力を入れる。一人で立てるくらいになるまで、ミーナの手は抱かれたままだった。


「じゃあ、お風呂行こ?」

「うん、そうだね」


 今日も、できるだけ長湯しないようにしなきゃ。風邪でも引いたら、明日、デートなんてできなくなっちゃう。

 下着だけ持って、お風呂場に向かう。自然と繋がった手は、ちょっと寒い廊下の中でも暖かかった。

 脱衣所の戸を閉めても、開いたままだったからか、まだ寒さは消えてくれない。

 温もりを求めた体は、自然と抱き合って。


「まだ、ちょっと寒いね……っ」

「じゃあ、もっと、熱くなろっか」

 

 その言葉を合図に、甘いキスを交わし合った。

9万字突破っぽいし15話書いてもお風呂にすら入れないなんて10万文字絶対突破するじゃん

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