9日目(11)―特別なこと
「ねえ、このまま、お昼寝しよ?」
「もー、もうそろそろ晩御飯だよ?」
こんなとこも、変わってないんだ。「ねこ」っていうのが、「寝子」からきてるっていうのもわかるくらい、猫として生きてたときのミーナは、しょっちゅう眠ってた。お気に入りだったクッションの上とか、私の膝の上とかで。
「そっか……、でもさ、しばらくここでのんびりしてよ?」
「うん、……いいよ?」
ふんわりとした雰囲気に、私も流される。
お互いに、背中に手を回す。近づいた気持ちは、こんなとこに自然と表れる。
胸の膨らみが触れ合って、ふにふにした感触を残す。こんなに近い距離で、宝石みたいに綺麗な目に見つめられる。
だから、これは、きっと魔が差した。
左手をミーナの背中から離して、耳元を軽く撫でる。
「もう、カスミってば、くすぐったいよ……っ」
猫だったときは怒ってたのに、今は何かをこらえるみたいに身をよじらす。
激しくなるミーナの吐息に、それをこらえようとして漏れる声。
慌てて手を離す。なんだか、ミーナのこと、犯しているような気がして。
「ご、ごめんね?」
慌てて謝ると、ミーナがいたずらっぽく笑う。
「いいよ?……でも、その代わり、お返ししちゃうね?」
その言葉に身構えて、でもミーナの右手の触れる感触に、胸の高鳴りが増していく。
「もー、ミーナってばあ……っ」
何でだろう、ちょっと、えっちな気分になってしまう。
普段誰にも触られないとこ、特別な人に触られてるから、なのかな。
ミーナの手が耳元から離れて、また、私の背中に回される。
「なんか、ドキドキしたでしょ?」
「うん、……すっごく」
「へへぇ……、そっかぁ」
ミーナの口元が緩む。そのまま寝ちゃいそうになってるように思えて、つい声を掛ける。
「もうすぐご飯なんだから、寝ちゃ駄目だよ?」
「わかってるよぉ……」
そう言う声は、寝る前に訊くような甘い声。
「だから、絶対、寝れないようにして?」
抱きしめられた腕が、急にきつくなる。顔が近づいて、ミーナが、目を閉じた。
何をしてほしいかなんて、もう言われなくてもわかってしまう。
「しょうがないなぁ、ミーナは」
涼しい声で言おうとして、抑えきれない気持ちが、あふれ出る。
寝がえりを打つようにして、ミーナの上に体を被せる。
そのまま、溶け合うような口づけを交わす。夢みたいに蕩けていきそうな感覚は、体がどうしようもなく求めてたもの。
そのまま、ずっとしてたかったけど、唇を離す。これ以上そうしていたら、もっと深くまで行って、戻ってこれなくなっちゃいそうだったから。
「ありがとぉ、もう、ドキドキして止まんないや……っ」
「私もだよ、ミーナぁ……っ」
抱き合った体が伝える熱に、胸の鼓動が高まっていく。
好きっていう気持ちが、私とミーナの間にほどけない赤い糸を結んでるみたいだ。
これよりも40話=「7日目(12)」の方がよっぽどビジュアル的にえっちぃんだよなぁ