2日目(2)―つのる不安は
「もー、5分経ったよ?」
言われて、名残惜しくミーナの体を離す。
「おはよ、ミーナ」
「うん、おはよう」
いつもよりは早いけど、もうご飯を食べてしまうことにする。
二人でいられるときは、いつだって幸せだ。――ミーナが、猫だったときから。
でも、たった一つだけの例外がある。
学校では、ミーナと一緒になってから、なぜかもやもやとした気分になる。
ミーナがまだ猫として人生を送ってたときには、学校が楽しいわけではないけど、こんな気持ちにはならなかったのに。
一緒に友達の輪のなかで一緒にしゃべってても、一緒に授業を受けてても。
ミーナが私以外の誰かとしゃべっていると、途端にもやもやした気分が私の中に立ち込める。
帰る家だって、寝床だって一緒だし、他の誰よりも一緒にいる時間は長いのに。
まるで、――ミーナといていいのは私だけって、嫉妬してるみたいに。
猫だったときも、私にだけなついてて、人に生まれ変わってからも、それはあまり変わらない。
二人きりでいるのが、当たり前だったからだから、なのかな。
だからって、慣れるなんて無理。きっと、これからも、ずっと。
『友達』にも『家族』にも、上手く入らない、ずっと隣で生きてきた仲で。
一緒にいるためではあるけど、キスだってするような関係。
ミーナは、私にとってどういう存在なんだろう。
私は、ミーナにとってどういう存在なんだろう。
どっちを考えても全然つかめない問いを、ずっと考えて。
気がついたら、もう帰りのホームルームも終わりかけ。
また、授業が頭に入らなかった。ミーナは、そんなそぶり、全然見せてないのに。
礼も終わって、やっと家に帰れるって思う。おうちなら、ミーナと二人きりでいられるから。
明日から、学校は二日も休みななる。その間は、二人きりでいられる。
「ごめん、今日もぼうっとしちゃっててさ、ノート見せてくれる?」
「もー、いいけど、大丈夫なの??」
「う、うん……」
心配されてしまうくらい、ミーナはけろりとしていて。
ほっとしたけど、それ以上に落ち込む。こんなこと考えてるのは、私だけなんだなって。
溜め息が出て、またミーナに心配される。
「もー、本当に平気?」
「へ、平気だよ、帰ろ?」
自然と、手が繋がる。ミーナの熱が伝わるだけで、心の中のもやもやが晴れてしまうくらい落ち着く。
私が猫だったときは、落ち込んでること、ちゃんと話してくれたのにな。
ミーナが何の気なしに囁いた言葉が、胸に刺さる。
ちゃんと、気づいてたんだ。嬉しいのに、恥ずかしい。
分かるわけないって、思ってたのに。
ミーナは、ちゃんと話を聞いてくれるし、優しいこともわかってる。
でも、どうしても言えないよ。
ミーナと二人きりじゃないと、不安になってしょうがなくなるだなんて。
そこ、ぐだぐだになってるとか言わないでください……(´・ω・`)