9日目(2)―やさしい気持ち
基本的に、私とミーナはいつも一緒にいる。
ミーナと一緒にいる時間は、きらきらした時間になって、それは、いつもの日常すら、『恋人』と一緒につくる、大事な思い出の一つになる。
こんな寒い朝の、家族全員で食べる朝食だって、思わず口元が緩むくらい。寒いのも苦手だし、ご飯だってあんまり食べられないけど、……ミーナと、一番大事な『恋人』といる時間だから。
いつもみたいに朝の準備を済ませて、部屋に戻って制服に着替える。
「今日も寒いねぇ」
「昨日雨だったし、余計に冷えちゃったね」
ミーナがいつの間にか点けてくれてたストーブで、部屋はもう暖かい。
でも、もっともっと、温かいほうがいい。ミーナの温もりに、熱くされたい。
「……だから、もっとあったかくなろ?」
「……そうだね」
目線を重ねる。そこから先は、もう何も言わなくてもお互いに分かってた。
顔を近づけて、目を閉じて、唇と唇で温めあう。
唇を離したあとの、思わず漏れる照れ笑いも、いつもと一緒。
そのまま余韻に浸ってしまう私を、ミーナがゆする。
「もー、学校行くんでしょ?」
「あ、ごめん……」
一瞬、ミーナのことしか考えられなくなって、学校のことなんて、頭から抜けていた。
慌てて、寝間着を脱いで、制服に着替える。
急いだせいで、いつも出る時間よりも、ちょっとだけ早く準備が終わる。
こういう事考えると、すぐミーナと触れたいって気持ちが、頭の中をよぎってしまう。
「ちゃんと準備済ませた?体操服とジャージ、ちゃんと入ってる?」
そんな事言って、頭をごまかす。いくら時間にちょっと余裕があるからって、キスなんてしてたら、あっという間に時間なんて過ぎてしまう。
「大丈夫だって。昨日、ちゃんと確認したもん」
ちょっと拗ねたような声でそう言って、ミーナの右手が、頭をぽんぽんと叩く。
心の中を見透かされたような気分になって、ちょっと胸がゾクっとした。
一緒にいる時間も長いし、昨日も、言ってないはずの気持ちを気づかれたし。
もしかしたら、本当に気づかれてるのかもしれない。緩んだミーナの顔は、からかってるときみたいだもん。
「「じゃあ、行ってくるね?」」
「行ってらっしゃい、気を付けるのよ?」
そんないつもの挨拶を交わして、学校に着くまでのしばらくの間、またミーナと二人きりになる。
「もう、すっごく寒くなっちゃったね」
「手、すっごく冷たいや」
それなのに、手袋もちゃんと持ってるのに、なぜか私もミーナも使おうとしない。
「じゃあ、繋いで、あっためなきゃね」
「……そうだね」
きっと、こうやって、手を繋いでたいから。
『好き』な人の温もりを、ちょっとでも多く感じてたいから、なのかな。




