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私と愛猫(かのじょ)。  作者: しっちぃ


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8日目(10)―繋がる想い出

 悶々とした気持ちを抑えて、なんとか着替えを済ませる。

 時間は、もう5時半を回ってる。おやつには遅い時間だし、そもそも、晩御飯のほうが近い時間だ。


「先に勉強済ませちゃおっか、もうおやつには遅いし」

「そうだねぇ」


 マシュマロは、晩御飯が終わるまでお預けだけど、それでもいいかな、って素直に思える。

 楽しみな時間は、最後まで取っておきたくなるし、 それに、部屋で一緒に勉強するとき、背中合わせの、何とも言えない距離がちょっとくすぐったくて好きだから。


「テスト、もう二週間なのか……嫌だなぁ……」


 ミーナがまだ猫だったときみたいに、愚痴が口から零れる。


「そんな大変なんだ……」

「そうだよー?覚えないといけないこといっぱいあるし、成績も決まっちゃうし」

「うわぁ……、カスミ、テストの近くだといっつも憂鬱そうな顔してたもんねー」


 そんなことも覚えてくれていたんだって、嬉しくなる。

 人と人として一緒に過ごした時間は長かったようでまだ全然短いけど、ミーナが猫として生きてた時間も合わせると、もう1年になる。

 それなのに、何でもない時間のこと、覚えてくれてたなんて。胸がキュンとなって、『好き』って気持ちが、また胸を覆いつくす。


「わたしは楽しかったな、だってテストの日はカスミが早く帰ってきてくれるし」


「もー、私にはそれどころじゃなかったんだんだから……」


 でも、私と一緒の時間が増えるのが嬉しかった。そんな事、『恋人』に言われて、嬉しくないわけがない。


「私も、ミーナのこといっぱい撫でられるのは……嬉しかったな」

「わたしも、……いっぱい撫でたり、甘えたりしてくれるの、嬉しかったな」


 にやけるのを、隠し切れないみたいな声に、私の中の恋心が疼く。こうやって言葉を交わせるようになる前から、『好き』を伝える方法を知る前から、お互いのこと、好きでいてたんだ。

 背もたれを回して、ミーナのほうを向く。もう、ミーナは、私のほうを向いていた。

 一緒だったんだ、ミーナも。いつもより前に顔を近づけて、目を閉じる。


 ……ちゅっ。


 重なった一瞬の温もりで、伝えたい気持ちなんて簡単にわかる。

 今まで、ずっと大好きだったよ。それは、私もミーナに伝えたかった気持ち。

 目線が重ねって、ほほ笑み合う。同じ心を分かち合ったって喜びが、そうさせるのかもしれない。


「一緒に、頑張ろっか」

「そうだね!」


 向かい合わせに机に向かって、今日の分の復習を進める。

 お母さんが「ご飯だよ」って私たちを呼ぶまで、あっと言う間みたいな気がした。

テスト勉強より正しい恋人の愛し方の勉強しませんかお二人とも(錯乱)

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