8日目(4)―のぼせる体
ちょっと更新が遅くなりました。すみません。
ちょっと急いだ道で、体は寒さを忘れていたけど。
一時間目が始まると、ちょっとずつ体が冷えてくる。窓際の一番後ろの席は、ストーブの熱を感じるのには遠すぎるから。
「寒いねぇ」
隣にいるミーナにひそひそと言うと、「寒いねー」なんてこっそり返してくる。
その言葉が、心の中であったかい。『好き』って気持ちが、胸の奥で熱を持つ。
多分、ここが家だったら、そのまま唇が重なってたかもしれない。心が繋がると、いつの間にかそうしてきたから。
ちょっともどかしい気持ちになるのは、いつもは二人きりだからなのかな。
気兼ねなく『好き』な人とキスできるとこがあるってだけで、私は幸せ者なのかな。
そんな事を考えるのに没頭してたら、チャイムが鳴った。
号令がかかり終わると、自然と、足がストーブのほうに向かう。それは、ミーナも同じみたいで、……視線が重なった瞬間、目を閉じそうになる。
ミーナも、それは一緒だったみたいで、顔が近づいてたのが、ちょっとくすぐったい。
自然と手が繋がって、それを離そうともしないことも。
教壇のへりに座って、ストーブから出る熱を存分に感じる。
寄せ合った体に、なぜかドキドキして、……ここが学校じゃなかったら、誰も見てなかったら、きっとキスしてた。
衝動をこらえようと、ミーナの胸に顔を埋める。控えめな膨らみは、思ったより柔らかい。
「もー、どうしたの?カスミ……」
でも、ぽんぽんと頭を撫でてくれる。ミーナが猫として生きてたとき、膝の上で寝てたのを、私が撫でてたときみたいに。
「ミーナ、あったかい……っ」
服越しの微かな熱は、体の中で増幅されて私の心を溶かしてく。
「カスミも、あったかい……っ」
背中に回された手の感触に、私もミーナの体を抱く。
もう、ミーナのことしか見えなくなる。軽く胸に頬ずりをして、それから、目線を上げて、顔を近づけて。……唇は、重ならなかった。
「カスミ?そろそろ二時間目始まっちゃうよ?」
ようやく、周りの世界に気づく。でも、二人だけみたいな空間にいたような感覚は、まだ消えてはくれない。
足元がふわふわしておぼつかなくて、やっぱり、ミーナに体を預けてしまう。
「ごめん、……肩、貸して……?」
「いいけど、どうしたの?」
「ちょっと、のぼせちゃった……っ」
「まったく、しょうがないなぁ……」
そんな事言ってるくせに、声は優しいし、笑みを隠しきれてない。
それをからかったら、怒るのが目に見えてるからやらないけど。
どんなミーナも、もう私は好きになっていた。
学校でもいちゃいちゃしてるとか、何なんだろうこの子達。
うちはなんてものを生み出してしまったんだろう。




