6日目(3)ー熱い想い
なんだかんだ二日連続です。
家に帰ると、ほっとして、それと同じくらいそわそわする。ミーナの大事な話って、いったい何だろう。
どういう事か聞いても、「寝る前に話すから」と教えてくれない。
もしかして、と浮かぶのは、苦い想像ばかり。
二人で一緒にご飯を食べても、全然味がしない。
いつもなら楽しくてドキドキする、二人の時間も、全然そんな気分にはなれない。
ミーナに嫌われてるのかもしれない。その不安は、心の中に暗い影を残す。
私はきっと、ミーナがいなくなったら壊れてしまうのかもしれない。ミーナが猫として生きてた最期の日、私はミーナの亡骸を見て涙が枯れそうなほど泣いてたのに。
今、ミーナの存在は、そのときよりもずっと私の中で大きくなっている。ミーナに依存してるって他の誰かに言われても、否定できないくらいに。
「ねぇ、ノート見せて?またぼうっとしちゃって」
「いいよ?最近どうしたの?」
「ちょっと、考え事してて」
辛かったら私にちゃんと教えてね、なんて言ってくれるんだろうし、実際痛いくらい辛い。
でも、どうしても言えない。ミーナのこと、犯してはいけない罪にすら手を出してしまうくらい、好きで好きで仕方がないことなんて。
「もう、カスミ?辛いときは、ちゃんと教えてね?ちゃんと聴くからさ」
伝えてしまったら、楽になるのかもしれない。でも、この気持ちは、きっと他の人から見たら異常なもの。
保健室の先生は、この想いはいけないものではないと言ってくれた。けど、それと、この気持ちをミーナが受け取ってくれるかは別問題だ。
「ありがと、でもいいよ、私の問題だし」
やっぱり、言えない。だって、言おうとしただけで顔が焼けそうなくらい熱くなるから。
「1人で抱え込まないでいいよ。だって、カスミが辛そうにしてたら、私も辛いもん」
その優しさすら、胸が痛む。だって、私は、その気持ちに、お返しできてない。
ぽん、と、ミーナの手が頭に触れる。触れた温もりにドキッとしてしまうのはきっと、触れられたい、でも触れてしまうと胸の中の何かがおかしくなってしまいそうなものに触られたから。
ミーナの字は相変わらずかわいくて綺麗で、まるでミーナそのものみたいだ。
ミーナが、私のことを大事に思ってくれることすら疑ってしまうなんて、私、今、どうにかなってるかもしれない。
「ごめんね、いつも迷惑かけて」
「ううん、いいよ」
一番謝らないといけないこと、まだ謝れてない。自己嫌悪が、頭の中を取り巻く。
一緒に入るお風呂は、なぜか目線が合わなくて、洗ってくれる手も、よそよそしい感じがして。
寝る準備を済ませて、不安ばかり募らせたまま、2人の部屋に戻る。
電気を消されて、隣り合わせにベッドに座る。
「ね、カスミ……」
何を言われるかわからず、心の中で身構えて話を聞く。
「カスミの『好き』って、どういう気持ちか、教えて?」
「う、うん……」
心臓が飛び出そうなのを抑えながら、私はゆっくり口を開いた。
次回あたりすごい事が起きると思います。