5日目(1)―胸にある気持ち
ついに20話です。やったね。
皆さまのおかげでようやくここまでたどり着けました。
ぼんやりと、夢を見ていたように、朝になっていた。
ずっと寝てると、具合も多少はよくなってきた。――ミーナのことを想う気持ちは、どんどん重くなっていくけど。
「カスミ、大丈夫?」
「うん、まあね」
さらりと言ってはみたけど、そんなに大丈夫じゃない。だって、ミーナが、すぐそばにいるから。
それでも、ミーナの近くにいたい。矛盾してるみたいだけど、それがいがみ合わずに頭の中にいるから不思議だ。
体が、ミーナのことを欲していて、つい目で追ってしまう。でも、こっちを見られるとうつむいてしまう。
ミーナの優しい視線は、今は破裂しそうになった心を、壊してしまいそうだから。
部屋は一緒だから、行動は一緒になることが多いけど、ミーナと一緒になるのを、避けようとしている私がいた。
いつも、自然と手を繋いで学校に行ってたのに、それもできない。
だって、ドキドキしすぎて、体がおかしくなっちゃいそうだから。
気づいてしまった『好き』は、もう私にもどうにもならないくらい大きくなってしまっているから。
寝ても覚めても、ミーナのことばかり考えてる私。
ミーナとキスしないといけない、なんて考えてた、初めてこの姿のミーナと出逢った日よりも、ずっと酷いんじゃないかってくらい。
「カスミ、ぼーっとしてるね」
「ひゃっ!?う、うん……」
ミーナのことしか考えられなくて、その考えてた声に突然心を射抜かれて、驚かないはずがない。
「もー、どうしたの?」
髪を撫でられる。そうやって、一番近い距離にいるミーナに、私は勝手にどぎまぎしていく。
「な、何でもないよ、大丈夫」
何でもないわけない。そんなこと、ミーナが気づかないはずがないのに。
「もしかして、まだ具合悪い?顔赤いよ?」
顔が赤いのは、想いの重さに体が壊れちゃいそうなくらい『好き』な人の顔が間近にあるから。
「ん、大丈夫、だからぁ……」
体が勝手に火照る。心配して近づいてくる顔は、キスしようとしたらできちゃうんじゃないかってくらい近い。
「もう顔真っ赤だし、また熱出ちゃった?」
おでこを、ミーナの手が触れる。それだけで、変な気持ちになっちゃいそうで。
「ごめんね?まだ治りきってないときに無理やり来させちゃって」
「いいよ……っ、だって、私が治せなかったからだもん……」
ミーナへの気持ちは、大きくなっていくばかり。
この気持ちをどうにかしないと、私が壊れちゃいそう。
もしかしたら、もうどこかおかしくなってるってことなのかもしれない。想ってはいけないはずの感情を、胸の中に膨らましていることが。
「保健室で休んでくる?」
「う、うん、……そうするね?」
そっか、と言って、肩を貸してくれるミーナ。
私とさほど大きさは変わらないはずなのに、ミーナの背中が大きく見える。
服越しに伝わる温もりを感じながら、保健室に向かう。
どうしようもないくらいドキドキして、苦しくて、嬉しくて。
もう永遠に保健室なんてたどり着かなきゃいい、なんて思ってしまう。
そう言っても、願いは空しくたどり着いてしまう。
いつもより、ずっとずっと長い時間だったようにも、一瞬だったようにも思える。
保健の先生に引き渡されて、ミーナは教室に戻る。
熱を測っても、そんなに高いわけじゃない。
「しばらく寝てていいよ」って言われたので、ありがたくそうさせてもらうことにする。
もう、お昼なんだ。手持無沙汰に時計をみて、ぼうっと考える。
初めて、ミーナと学校に行った日と、おんなじくらい意識がミーナのほうばっかにいってる。
ミーナと寝ないの、久々だな、なんて、また考えてる。
ドキドキして、眠るどころか、逆に目が覚めてしまったかもしれない。
……好き。
言葉にすればたった二文字の想いが、私の心を、体をおかしくさせていく。
こんな想いを、抱えたままミーナの隣で生きてくなんて、考えただけで体が蒸発してしまう。
でも、これからどうすればいいのかなんて、分かるわけがなかった。
だって、壊れてしまうくらい、好きになってしまったから。