4日目(1)―気づいた気持ちに
投稿遅れてすみませんでした。
――もう朝。眠った覚えがないくらい胸の奥が激しく鳴っていた。
背中から回された手は、ミーナのもので。ずっと、そうやって抱いてくれていたってわかる。
まだ、体の熱は取れない。ミーナが頭の奥に浮かぶだけで、胸が痛いのに甘くなる。
「カスミ、起きたの……?」
ほんのちょっとの気配で気づくミーナ。ほんの数日前まで、獲物を自分の手で狩れる生き物だったんだと思い出す。
「うん、おはよう」
「熱、もう大丈夫?」
耳元に息がかかる。その瞬間、何かが背骨を走る。ゾクリと走るものは、何故か体はもっと求めたがる。
まだ、ミーナにドキドキしてしまうのは、治らない。
「うーん、昨日よりは」
むしろ、このドキドキは、昨日よりもずっと増していて。
どうしたら、治るんだろう。全然、わからないよ。
「ご飯、食べれそう?」
そんなに、弱ってる声なのかな。でも、何も喉を通りそうにない。
「ううん、ちょっと……」
「大丈夫?……じゃあわたし、ご飯食べてくるからね?」
ミーナのこと考えるだけで、胸の奥がズキズキと痛んで、鼓動が激しくなって。
キスしたときとか、撫でられるときの感触が、頭にフラッシュバックしてくる。
ミーナとキスしてるのは、ミーナがいなくならないようにだし。
ちょっとしたスキンシップは、猫だったときからミーナとはよくしていた。
そう頭に言い聞かせて、何故か頭に「失望」とか「諦観」とか、そういう感情が浮かぶ。
こんな気持ちは、きっと、ミーナには思ってはいけないはずのものなのに。――『恋愛』とか、『性愛』とか、男女の交わりでしか起こらないはずの気持ちは。
それを今、私は、ミーナという、一人の女の子に対して抱いてしまっている。
言えない気持ちなら、最初から抱かなきゃよかったのに。
気づけなかったときのもやもやはもう、気づいてしまった痛みに変わっていく。
痛いよ。苦しいよ。助けてよ、ミーナ。
そんなこと思っても、助けてくれるわけないのに。
ミーナは優しいけど、届けられない苦しみは、伝わるはずがないのだから。
数分もしないうちに、ミーナが部屋に戻る。
「冷えピタ、もうぬるいでしょ?」
取り替えるね、と、体の熱で動けない私のかわりに動いてくれる。
おでこに冷たい感覚を感じる。それと同時に触れた、ミーナの指先。
否応なく、体は触れられた指に体温を上げていく。
「ん、……ありがと……」
「どういたしまして。じゃあ、ご飯食べてくるね?」
リビングに行ってしまったミーナ。今は、一人きり。
ベッドに置いてあったクッション。ずっとそばにいたからなのか、ミーナのにおいが濃く香る気がする。
ほっとするような、甘くて、熱に浮かされていく、不思議な香り。
「んんっ、ミー、ナぁ……っ」
重ねるだけじゃないキスをされて、そのまま、もっと先も。
頭の中でそんなことまで思ってしまう自分に、吐き気すら感じる。
胸が苦しい。体が熱い。ジワリと浮かぶ汗が、肌と服を貼りあわせるのが気持ち悪い。
もう、最初から、ミーナと会わなきゃよかったのかな。
そんなことを考えてしまうくらいに、気づいてしまった気持ちに心がおかしくなっていた。
何だろう、この香澄ちゃん崩壊フラグ