3日目(4)―跳ねる鼓動
今日で19歳みたいだよやったね
お風呂上がり、のぼせたように体が熱くて重い。
私の気持ちが、行き場をなくして体の中を暴れているみたいに。
「大丈夫、カスミ……」
濡れタオルを額に当ててくれる。それなのに、ミーナに触れられてるせいで、余計に熱が上がる。
ミーナが、特別な存在で、『好き』だから、なのかな。
どういう『好き』なのか、私にはまだ全然わからないけれど。
「うん、ありがと……」
弱弱しい声。風邪をひいたわけでもないんい、こんな声しか出せない。
「ひえピタっていうの、取っててくるね、もうぬるいでしょ?」
タオルを取られる。確かに、もう冷たさを感じなくなっていた。
やっぱり、ミーナは優しくて、その優しさすら今は私を混乱させる。
私が、ミーナに抱いてる気持ち。
友情でも、家族愛でも、私の思いついた中のどれでもない感情。
「カスミ、戻ったよ」
頭に冷えピタを当てられる。ひんやりとして気持ちいい。
「ありがと、ミーナ……っ」
ぼうっとした頭は、ミーナのこと以外、何も考えられてない。
「あ、そうだ」
不意にミーナの顔が近づく。体は勝手に、それに反応して目を閉じる。
唇と唇の距離が、一瞬0になった。その瞬間、柔らかくて、暖かいミーナの唇と触れ合う。
名残惜しげに、ちゅっという音が鳴った。
「今日の分、まだしてなかったね」
ただでさえ熱い体が、益々火照っていく。
「ミーナ、やめてよいきなり……っ」
「ごめんね、でも、ずっとカスミと一緒がいいの……っ」
不意に抱きつかれる。暖かくて、柔らかい体が当たる。
ミーナとキスすることが、二人でいるためだということに今更みたいに気づく。
「ううん、ごめんね……?」
私と一緒にいたいというミーナの気持ちまで傷つけてしまったような気がして、謝る言葉が、つい口から出る。
「いいよ、だって、……最初のとき、キスって大事なものって言ってたもんね」
そう言って髪を軽く漉くミーナの手。そうされても髪が指に引っかからないくらいに、丁寧に洗ってくれていることに気づく。
私のこと、誰よりも大事にしてくれるミーナのこと、傷つけてしまっている。その予感に、胸の奥がズキズキと痛む。
もう、寝てしまおうかな。胸を刺す痛みのせいで、全然眠れる気配もしないけど。
「ん、ごめん、私、もう寝るね?」
頭を侵食していく罪悪感から逃れようとするずるい私を、気遣ってくれるミーナ。
「じゃあ、電気消すよ?」
パチン、と電気が消える。一瞬、何も見えなくなる。
「わたしも、一緒に寝るね?」
そう言って、隣に入ってくる。急に、体が熱くなってきて。
ミーナのほうを見れなくて、わざとそっぽを向く方に寝がえりを打つ。すると、後ろからミーナが抱いてきて。
「おやすみ、カスミ」
そう言う声に慌てて「おやすみ」と返すのが精一杯だった。