3日目(3)―戸惑う心
お風呂の時間、なぜかミーナが嬉しそうで。
「ミーナ、どうかした?」
ミーナは、お風呂が苦手だ。猫のときから、ずっと。
嫌がって、連れて行こうとした私の手を引っかいたくらいに。
「カスミと一緒だと、何だって楽しいんだもん」
もう、やめてよ。そんなこと言わないで。
胸がきゅんとして、何も言えなくなるから。
「……どうしたの?」
きっと赤くなったほっぺたを、今更隠すなんてできない。
熱くなった体を、湯船に入ってないからのぼせたことにもできない。
「な、なんでもないよ。早くお風呂入ろ?」
声が震える。何でもないわけないって、ミーナが猫だったときでも気づくくらい。
「もー、最近どうしたの?」
きっと、ミーナのせい。でも、そんなこと言えないよ。
こんなに優しくて、愛しいミーナにこんなに狂わされてるのは、私がおかしくなってるせいだから。
もやもやした気持ちを振り払うように、服を脱ぐ。
掛け湯をして、湯船に浸かる。二人だと、ちょっと狭くて、身を寄せ合わないと入らない。
普段触れない場所が、ミーナと触れ合う。
ミーナの、普段見えるはずなない場所が見えてしまう。
いつも感じないミーナの香りがする。キスするときとか、一緒に寝るときとか、近くにいないとわからない、きっと私にしか分からない甘い香り。
そんなことが全部、私の胸の中をどきどきさせていく。
10分も入ってないはずなのに、のぼせたように体が火照る。
「ごめん、ミーナ、のぼせちゃったかも……」
「もう、大丈夫?」
そんな心配した顔を向けられて、余計に胸の奥がちくりと刺される。
ミーナにこんなにドキドキしてるのは、私の勝手なのに。
「じゃあ、体洗ってあげるね?」
「う、……うんっ」
親切でやってくれてるのはわかってるけど、今の私の心拍数を余計に上げていく。
ミーナの手が、髪に触れて、思わず声が漏れる。
「ひゃぁ……っ」
「……カスミ?」
「大丈夫、……何でもないよ」
「もう、本当に?」
そう言いながらも、さっきより優しい手つきで触れてくる。それが、逆にどぎまぎさせる。
漏れそうになる声をこらえながら、背中を、首元を、胸を、そっと触れられていく。
「終わったよ、カスミ」
「うん、ありがと」
湯船のへりに、お湯がかからないように座る。熱くなった体が、ちょっとずつ冷めていくのがわかる。
それにしても、ミーナって綺麗だな。とろけかけた頭は、気が付くとミーナのことばかり。
すべすべとした白い肌に、曲線で包まれた体。優しくしてくれる心も。
私のこと、そっと包み込んでくれる。
好き。思わず零れる言葉は、胸の中を締め付ける。
私、どうしたらいいんだろう。
わかんないよ、ミーナに抱いてる気持ちなんて。
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