×××日目―私と彼女。
ついに最終話です。
「ねえ、二人で今まででどれくらい、キスしたんだろうね」
休みの日の昼下がりに、二人の部屋でソファーでくつろいでるときに、ふと言われた言葉。
「どれくらいかなんて、もう全然見当つかないよ」
最初は、ただミーナと一緒にいるためにしていたことは、もう今はお互いを好きでいるという証明になって、それから、重ねていく回数も増えていった。
だからもう、数えることもできない。今日だって、何回キスしたのかもわからないっていうのに。
「百万回くらいしてたら、素敵だなぁ……」
横に座ってたミーナが、いきなり私の膝に座ってくる。猫のときはよくされてたけど、こうされると、ドキドキしちゃう。普段私のほうが高い頭も、ミーナのほうが高くなって、肌の匂いが香るくらい近くになるから。
「さすがに、そんなにはしてないって」
そんな途方もないくらいの数キスするとしたら、きっと一生かかってしまう。
でも、それだけの時間、ミーナとこうやってずっと愛し合えるのなら、素敵かも、なんて思ってしまう。
「じゃあ、カスミは、どれくらいしたと思う?」
「えぇ……?うーん……」
今まで、ずっとミーナと一緒にいて、キスなんて本当に数えきれないくらいしてきた。――もっと先の、人には絶対に言えないようなことだって。
「一万回くらい、とかかな」
それくらいだったら、もしかしたらしてるかも。ずっとずっと長い時間、ミーナと一緒にいて、ずっとずっと、ミーナとお互いを好きでいてきたから。
「それでも、すっごく多いね、……それくらい、してたい?」
「うん、……でも、ミーナだってそうでしょ?」
「当たり前でしょ?……わたしだって、カスミのこと、大好きだもん……」
ちゅっ。……唇を重ねるタイミングは、お互い、もう分かってる。
だって、今まで、いっぱいキスしてきたから。きっと、これからも。
「じゃあ、……これが、一万回目ってことにしよっか」
ミーナの言葉はあまりにも突然で、心の奥が、きゅうって甘くなる。
「うん、いいよ?」
見上げて、見合わせた顔は、もっともっと、お互いを求めてる。
「百万回、いつか本当にできたらいいね」
「え、本当にするつもり!?」
「嫌……だった?」
「もう、……そんなこと、あるわけないでしょ?」
ミーナとキスするの、嫌なわけがない。ただ、それは、ずっとずっと、私とキスしてたいって言うのと、ほとんど変わらない言葉だったから。
「大好きだよ、ミーナ」
「わたしも、だよ、カスミ」
お互いの気持ちに、火をつける引き金を引く。
ちゅっ、……ちゅぅ、ちゅる、……ぴちゅ、……
近づけ合った唇が、重なっては離れて、離れてはまた重なる。
一回、二回、三回、……、数を数える余裕も、頭の中から消えていく。
ミーナ、……好き。溢れる想いが、頭の中を埋め尽くして。
「ちゅ、……今、何回したんだろ……」
「途中から、わかんなくなっちゃった……」
「わたしも……、カスミのことで、いっぱいになっちゃったもん……」
言い訳みたいに言うミーナの言葉に、私の心がまたキュンと鳴る。
今までこうなった回数も、……もう、数え切れないや。
「しょうがないなぁ、ミーナは」
「カスミだって、そうでしょ?……」
そんな些細な言い合いも、子猫がじゃれ合ってるみたいなもの。
私とミーナの間には、ただただ甘い、幸せな空気だけが満ちていた。
まさか、こんなに時間がかかるとは思ってもいませんでした。
そして、この書き物が皆さまに愛されるものとなれて、本当に幸せです。個人的にも、小説家になろうでの処女作にして自己最長編を圧倒的に上回り、しっちぃとしてのエース作である今作は、とても大きな存在となりました。
1年前の自分が、今日やっと最終話を書けたと聞いたら、多分メチャクチャさぼってたんだろとか言われそうですね。本当は7月くらいには完結してるつもりでしたし。
この物語は、ここで幕を下ろします。ここで筆を置くのは、親しい友人と別れるようで、寂しくもあります。ですが、私の中で彼女たちが動くのをやめる時まで、そして、読んでくださった皆様の中で二人がいる限り、生き続けています。
長い間、この書き物を読んでくださり、本当にありがとうございました。皆さまの中に、この書き物が生き続いてくれるなら、私にとってそれ以上の幸せはありません。