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第四話 まだ見ぬ明日を

 コンサート前に着替え場所を探しに行く奈々と舞に安藤は小さく手を振った。

 「やっぱりさ。俺が大学に行くと、遠距離恋愛になる事もある訳じゃん」

 二人が去って行くのを見ながら元秋はポツリと言った。

 「あ?でも、地元にも大学はあるし。国立も受けるんだろ?」

 安藤は元秋の方を振り向いて言った。

 「そうだけど。どうなるか分らないし。大学行くと生活も変わるかも知れないし、会えない時の奈々が心配だし」

 「なんだ。ちゃんと話し合ったりしてないのか」

 列に並んだまま、周りをキョロキョロ見ながら安藤は言った。

 「ん。なんかお互いに嫌な話や面倒な話は避けちゃうというか」

 少し下を向きながら元秋は答えた。

 「とりあえず、買い物頼まれなかったし、列から外れよう。ここにいてもしょうがない。周りに人大勢いるし、知ってる奴に聞かれてもな」

 そう言って安藤は列から外れ、反対側に歩き始めた。

 「あんまり離れると、二人戻って来た時分らなくなるぞ」

 元秋は先を行く安藤の背中にそう投げかけ、後を付いて行った。

 安藤は文化センターの壁の所まで行くと振り返り、壁に寄り掛かった。

 「ここなら、通る人、見渡せるだろ?」

 「ああ」

 返事をしながら元秋も、安藤の隣で壁に寄り掛かった。

 「お前が自信ないの?奈々ちゃんじゃなくて」

 安藤が聞いた。

 「どっちも。だと思う」

 「ふーん」

 「お前は?安藤お前は?大学行くんだろ?モテまくりのお前の彼女って知らないけど。どうすんの?」

 「俺?」

 正面を見て、通る人達を眺めていた安藤が横を振り向き、元秋の顔を見ながら言った。

 「そう」

 元秋も目で安藤の方を見て答えた。

 「俺は、何処にでも行くよ。大学も一応行く。女の子の友達は多いけど、彼女はいないから。誰に相談する事はない。聞かれれば言うけど。友達は、いつか何処かで会っても、友達だから。また直ぐ友達に戻れるから。俺はお前みたいに悩む必要はない。つーか、お前の悩みも良く分らないけどな」

 言いながら、安藤は壁に背を当てたまま、ズズズーっと、しゃがんだ。

 釣られて元秋も隣でしゃがんだ。

 「なんで真似すんだよ?」

 少し笑いながら安藤が言った。

 「は?」

 そう言われて元秋は安藤の方を振り向いた。

 安藤は正面、通る人達を見たままだった。

 「だから、俺の話とか動きとか、関係ないんだ。佐野は、お前の考えで生きるんだ。前に俺に言ったの忘れた?。『一つとして同じ恋愛や人生はないんだぞ。俺は俺の道を行く。お前はお前の道を行けばいいさ』って、言ったの」

 元秋はハッとした。

 それは安藤に奈々と付き合うのは止めた方が良いと言われた時に、確かに自分が言った言葉だった。

 「相談されれば、乗るし、知ってる事は教えるけど。大抵の場合相談って、する前に自分の中で大方決まってるんだよな。お前も、自分の中で大体決まってるか、決めなくちゃいけないんだよ。お前だけの答えを」

 元秋は下を向いたまま、安藤の話を聞いていた。

 「安藤」

 「ん?」

 「お前って・・・たまに凄い臭い事言うよな。ぷぷ」

 元秋は笑いを堪えきれず、少し笑いながら言った。

 「うるせい!」

 言いながら安藤は隣でしゃがむ元秋の太腿を蹴った。

 「痛て~」

 転びそうになりながら元秋が言った。

 「あ、帰って来た!」

 その瞬間、安藤はそう言って立ち上がり、遠くに見える奈々と舞に手を振った。

 二人はオフィシャルグッズのピンクのTシャツと、上には黒のパーカーを着て戻って来た。

 

 コンサートは午後六時半、開演。

 二時間半後の午後九時過ぎまで続けられた。

 大盛り上がりのコンサートだった。



       つづく


 

いつも読んで頂いて、有難うございます。

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