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番外編 色のない季節 ー早苗、ふたたびー (三)

 「卒業式の頃には、良くも悪くも、すっきりした顔になってるのかな?」

 「どうだろ」

 「私はさあ、明日試験終るとその足で、今度は東京なんだ。とりあず一週間。東洋、駒沢、法政、明治、立教、早稲田等々。三月頭くらいまである」

 「ひえ~、一週間は泊まり?じゃあ彼氏にも会えるじゃん」

 驚いた後、少しニヤついた顔で、元秋は言った。

 「うん、会うよ。でも、せがまれてもHしたい気分じゃないわね」

 「H!?」

 早苗の口から出たそのアルファベットに思わず元秋は声をあげた。

 「あれ?佐野君、彼女とまだしてないの?」

 その様子から早苗は尋ねた。

 「て、鈴鳴さんはやってるの?うわ~、同級生の女子のそういう話は聞きたくないよ~」

 苦虫を噛み潰した様な顔で本当に嫌そうに元秋は言った。

 「なんで?そういう目で見ちゃう?服でも透けて、私の裸でも想像しちゃう?ふふ、ホント男子は子供なんだから。相手は年上で、今大学生なんだし、当然でしょ。でもまー、初体験いつだったとか知りたい?」

 意地悪そうに微笑んで、嬉しそうな声で早苗は言った。

 「知りたくないよ、そんなの。もうやめようぜ。そんな話」

 早苗の言った事は本当だった。確かに元秋は一度、裸の早苗が何処かの男と抱き合っているのを想像した。しかしそれは一瞬で、直ぐに掻き消した。気持ちが悪くなったからだ。知っている同級生の女子。元秋の道徳観念・倫理観が、元秋を不快な気分にさせた。

 「童貞くんは可愛いな~」

 馬鹿にした様に早苗は笑って言った。

 「だって、やる場所だってないだろ?奈々も、彼女もあんまり急いでそういう事して、飽きられたら嫌だって言うし」

 早苗の言葉に思わずムキになって元秋は言った。

 「あー、それはある。それ、彼女の気持ちは分るよ。それから場所は幾らでもあるよ。お互いの家の親がいない時とか。ラブホも、結構みんな使ってるよ。車なくても、みんな私服で歩いて行ってるよ。一回、安藤君見かけた時あったっけ。昔」

 「安藤!」

 その名前に思わず元秋は叫んだ。

 「知らなかった?OL風の女の人と、車で来て入って行った。私達丁度出たトコで。安藤君は、相当やってるよ」

 「そうだろうとは思っていたけど。学校じゃ、具体的な話はしないし。あいつモテてるの知ってるけど、そういう話しないし、聞いても誤魔化すんだよな」

 「それは安藤君の優しさなのかな?それとも自分がみんなと一緒に居たい為?」

 「どうだろう?でも確かに、俺も含めて誰だって、全てを人に言ったりはしないもんな。安藤の知らない俺だってあるし。俺の知らない安藤だってあって当然だよな」

 「ふふ、いいね。男子のそういう感覚。女子の友達って、もっと複雑で、ちょっとウザイ時あるんだよね。佐野君達のグループ眺めて、たまにちょっと憧れてた。さっぱりしてそうで」

 「なんだそれ?」

 羨ましがられた様で、少し恥ずかしそうに、元秋は笑って言った。


 「そう言えば、着いてから彼女とは連絡とったの?」

 ベッドに座って、テーブルを近くに引き寄せて、ポテチ等のスナック菓子を広げて、お酒を飲む二人の話は、ちょくちょく話題が飛んだ。

 「ああ、部屋に入って直ぐにLINEで連絡したよ」

 「そう。仲いいのね」

 「それはもう」

 元秋は、そこは否定しなかった。

 「ふーん。奈々ちゃんだっけ?何処がいいの?」

 元秋の言葉が面白くなかったのか、早苗は詰まらなさそうに尋ねた。

 「全てが可愛い!顔も!性格も!なんだろ?こんなに好きになったの初めてだ。大好きなんだ」

 「凄い愛の告白。ごちそうさまです。佐野君初めてのお酒で、相当酔ってるわね」

 少し笑いながら早苗は言った。

 「うん。そうかもしんない。なんか、気持ちいいや」

 「もっと気持ち良くなろうか?」

 酔った元秋の言葉に被せる様に、静かに早苗はそう言った。

 「へ?どうやって?」

 間の抜けた声で元秋が返事をした瞬間。

 「こうやって!」

 頬を赤くした早苗が力任せに元秋に抱きついて来た。

 勢いのついた二人はそのままベッドに倒れ込んだ。

 「どお?人の重みって気持ちいいでしょ?」

 元秋を抱きしめて、上に乗る早苗が、耳元で囁くように言った。

 「まずいよ・・・」

 目線を逸らしながら元秋は言った。

 「佐野君て、ホント、ウブだよね。女の子みたいで可愛い。私の事も抱きしめて。それくらいは大丈夫でしょ?」

 「・・・鈴鳴さんって、本当に俺にはキツイよな。いつも意地悪されてるみたいだ」

 少し考えてからそう言うと、相変わらず顔を見ないまま、腕を早苗の体に回し、優しく抱きしめた。

 「もう少し強く」

 「へ?」

 早苗の言葉に驚いて、元秋は少し締め上げる様に強く抱きしめる。

 「あ、そう。気持ちいい・・・一人じゃない気がする」

 「彼氏と離れてて寂しいの?」

 「・・・・・・」

 元秋のその言葉には、早苗は返事をしなかった。

 そして二人は暫くそうしていた。


 「佐野君の彼女の話聞いたら、妬ましくて、意地悪したくなっちゃた」

 「そう」

 「佐野君の。さっきから硬いの当たってる」

 「ばっ、馬鹿!」

 笑いながら言った早苗の言葉に、慌てて元秋は腕を離し、離れようとするが、早苗は抱きついたままで、離れようとしなかった。

 「ふふ。やっぱり可愛い」

 そう言って元秋の頬にキスをする。

 「あっ!駄目だって」

 「佐野君。私の事、嫌いじゃないでしょ」

 そう言って今度は、唇を重ねて来た。


     ブーーー

        ブーーーー

 

 突然、机の上のスマホのバイブが、響いた。

 止まらないバイブ。木製の机の所為で高い音を響かせ続ける。

 「電話だ!」

 元秋は大きな声を出して、力一杯、早苗を跳ね除けた。



       つづく

 


いつも読んで頂いて、有難うございます。

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