表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナミダから生まれたモノガタリ  作者: 桜ノ宮 妃緩
2/6

1.必然に導かれた2人

□ 第1章 必然に導かれた2人 □




シェイド・ヴィーナスレイド。

それが彼の名。


彼は、独りでいる時間を楽しみとして生きてきた。


人の、仮面に貼り付けたような笑顔、嘘くさいお世辞せりふ…その全てを嫌っていた。

人を大のつく程嫌っている彼は、必要以上には他人と関わらず、目立たないように生きてきたつもりだ。


しかし、そんな彼の心とは裏腹にシェイドは有名だった。

それもその筈、彼はヴィーナスレイド公爵家の跡取りであり、加えて容姿端麗だ。

整った顔立ちにサラサラの銀髪、スラリとした長身に美しい声。何もかもが誰をも魅了するのだった。

一度でも会ったことがあろうものなら、会った全ての人々が彼の虜になるだろう。

彼自身もそう思っている。自意識過剰などではない。実際がそうなのだ。


人間なんて所詮、外見さえ良ければ好かれる。

そんな陳腐なものだ。


それに、金や権力があれば、大抵のことは上手くいく。人ひとりの心を手に入れることなど、服を着ることのように容易い。


━━こんな世界、つまらない。もう飽きた。





「 貴方がシェイド・ヴィーナスレイド? 」


うたた寝をしていると、突然後ろから(正確には横から)声をかけられた。

今まで聞いてきた人の声の中で、一番澄んでいて耳に残る声だった。


「 …だったら何?俺はキミのことを知らない。」


こんな声聞いた覚えはない。

目を開けると、そこには小柄の少女がいた。

腰よりも長い金髪をおろし、黒いフードを被った少女がジッと立っている。

しばらくして、少女はゆっくりと口を開いた。


「 …私も、貴方の名前と顔しか知らない。」


少女はフードを被ったまま、こちらから目を逸らさない。

「 名前は? 」

「 …そうですね、通りすがりのアウル、と名乗っておきます。 」

アウル…つまりフクロウ。本名ではないだろう。

何処かの令嬢か、この屋敷に仕えにきたメイドか…もしくは、俺を殺しに来た暗殺者か。

少なくとも、令嬢ではないだろう。黒いフードを被った令嬢を俺は知らない。


「 用件は?俺に恨みでもあるのか。 」


メイドがこんな口を聞くわけがない。

そうなれば選択肢はひとつだ。

しかし少女は、身動きひとつせず答えた。


「 恨みなんてないわ。 」


少女の目は嘘をついているようには見えない。

「 誰かに頼まれたのか?金で雇われた暗殺者か。女を選んだのは隙を突く為か。 」

「 それも違う。 」

ふいに、少女の金髪が揺れた。その時チラリと見えたのは、犯罪者が押される烙印。

「 …じゃあ何? 」


「 ここで働きたい。雇ってくれる人がいないからここに来た。 」


そりゃあ犯罪者を雇う馬鹿はいないだろう。

少女を無視してまた眠ろうとした。

ここで殺されても別にいい。殺されるのは怖くない。目を瞑ってそのまま眠りにつこうとした。

すると、グイッと腕を引っ張られソファーから落ちそうになったと思ったら、少女に倒れ込むようによろける。


「 …ッ…!!何をする!?キミが雇われないのはこんなふうにしているからなんじゃ… 」


最後まで言う前に、フードが脱げた少女の方を見たら言葉が出なくなった。

少女はとても言葉では言い表せないような綺麗な顔をしていた。俺は、生まれて初めて“ 美少女 ”というものに出会った。



もしかしたら、この時すでにこの少女に

恋してしまっていたのかもしれない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ