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秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第十章 文化祭に願いを込めて
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第10章 4話目

 翌日、僕は生徒会室で夢野先輩と対峙していた。


「で、羽月翔平、話って何ですか? やっとラノベ部の軍門に下る決心をしたのですか」

「軍門に下るとか、そんな話ではなくって、もう一度一緒に活動しませんかって話です」


 緊迫した空気が流れる中、青木女史が僕と夢野先輩の間にお茶を置く。


「羽月くんの提案はね、部の名前も部長選任もふたつの部を一緒にした上で公正に投票で決めようって言う内容よ。人数が多いラノベ部の方が圧倒的に有利だからかなりの譲歩だと思うけど」


 夢野先輩を諭すように奈々世女史。


「ふんっ。君の魂胆はミエミエなんですよ。パンツ穿いてないのにスカートが風に舞って落ちてしまうくらいミエミエです」


 いや、それじゃモロミエだろう。

 しかしここは軽くスルーする。


「凄い例えですね。でも、圧倒的に人数が多いラノベ部の方に有利な条件だと思うんですけど」


 しかし夢野先輩は僕をチラリと一瞥する。


「私はそんな罠に引っかかりませんよ。私は三年生、そして羽月翔平、君は二年生です。私は次期部長候補になれませんが君はなれるでしょう。それに今でもラノベ部には君と仲がいい連中が多いですからね。玲奈ちゃんとか城島とか」

「でも、客観的に見ても妥当なアイディアだと……」


 夢野先輩は僕を睨みつけて言葉を遮る。


「ダメです。どうしてもと言うならひとつだけ条件があります」

「条件?」

「そう、条件です。羽月翔平、君が僕と一緒にこの秋で文芸部から引退するのなら、私も一切口を出さず部の合併を見守りましょう」

「えっ!」


 意外な提案だった。


「それって……」

「物分かりが悪いですね。君が引退すれば部の名前が文芸部に戻っても、次の部長が城島でも私は構わない。全て一年前と同じく元に戻せばいい」

「ちょっと待ちなさい!」


 青木女史が夢野先輩をめながら声を出す。


「羽月くんはまだ二年生よ。引退なんて早すぎるわ」

「それでは、この話はなかったことにしましょう」


 青木女史は夢野先輩を睨みつけた視線を僕の方に向けるとゆっくりと嘆息した。


「分かったわ。ではこうしましょう。ラノベ部と文芸部は文化祭で観客の動員数を競いなさい。お客さんが少なかった部は生徒会長権限で同好会へ格下げとします。理由は同一活動内容の部が並列するのを防ぐため。明日正式に告知します」

「奈々世ちゃん、そう来ましたか。まあ想像はしていましたけどね。あなたは所詮志賀部長の犬ですからね。しかし私は違う。私は羽月翔平、君を許さない。去年の小高副部長の意志とは関係ない。これは私の意志だ!」


 そう言うと夢野先輩は立ち上がり僕を睨みつけた。


「生徒会権限を持ち出されては仕方がない。羽月翔平、勝負しようじゃありませんか。ふふっ。まあ勝負の行方は決まってますけどね。ラノベ部は必ず勝ちますよ」


 しかし、どうして夢野先輩はそれほどまでに僕を嫌うのだろう。全く思い当たる節がない。短編小説勝負で負けたから? 深山さんを奪ったから? どれも違うような気がする。元々僕は夢野先輩に嫌われていた気がするのだが、理由が不明だ。


「ひとつだけ教えてください。夢野先輩は何故僕をそんなに嫌うんですか?」

「なぜだって? まだ分かってないのか! お前ばかりが女の子を独占するからに決まってるだろう! 弥生ちゃんも佳奈ちゃんも! あんなに可愛い子達に囲まれて、それなのに何だ、お前は彼女達を全然大切にしてないじゃないか!」

「え?」

「だからこの勝負、私は絶対に負けない。覚悟しておけよ、羽月翔平!」


 そう言い残すと彼は生徒会室を出て行った。


「羽月くん、ごめんなさいね、こんな事になって」


 青木女史が心配そうに僕を見ていた。


「いえ、こちらこそすいません。変なことになってしまって」

「玲奈から聞いてるんでしょ、わたしも文芸部とラノベ部を元に戻したいって思ってるの。わたしとしてもこの文化祭が最後のチャンスなのよ。強引な方法だけど許して」


 同好会へ格下げになると同人誌発行に必要な部費の配分が得られない。必然的に勝った方の部に人が流れ、事実上、部は統合されてしまうだろう。


「はい、その件は分かってました。だからあまり驚きません。それより……」

 僕はまだ納得できなかった。なぜ夢野部長がそんなに僕を嫌うのか。その理由が分かればあるいは何かいい解決方法があるかも知れない。僕は青木女史に夢野部長の言い分をどう思うか聞いてみた。しかし彼女の答えは僕の想像外のものだった。

「羽月くん、残念ながら夢野の言い分はわたしにも少し分かるわ。あのね、夢野は弥生ちゃんが好きなのよ。多分今でも」

「はあ、それは夢野先輩も公言していますし……」

「ホントに分かってるの? 羽月くん、鈍感すぎるのも罪よ。羽月くんは弥生ちゃんのことをどう思ってるの?」


 どう思ってるのって、どう言うことだ。小金井は美人で朗らかで気が利いて、とてもいいやつで。そりゃハリセンで殴られることも多いけど、彼女は学校中の憧れの女の子。僕なんかと釣り合うわけがない。


「あのね、夢野は弥生ちゃんが心底好きなのよ。彼女に出会ってから今でもずっと。全く相手にされなくても懲りずにね。でもそんなに好きな弥生ちゃんは彼女が想いを寄せているひとから愛されていない。夢野はそれが許せないのよ。分かる、羽月くん」

「……それって」

「わたしはこれ以上言わないけど、そう言うことよ。去年といい今年といい、文芸部はこんな問題ばかりよね」


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