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秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第十章 文化祭に願いを込めて
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第10章 3話目

 今日は文化祭の模擬店についてもう一度話をする日だ。


 部室の中からはアップテンポの音楽が聞こえてくる。何をしてるんだ?

 ともあれいつものように元気にドアを開ける。


「いいわよ繭香ちゃん! ここで左右入れ替わりましょ!」

「はいっ、弥生先輩の振り付けかっこいいですっ!」

「そこで大きくジャンプから宙返りっ!」


 お揃いのセーラーワンピースを着た小金井と立花さんが今流行の歌に合わせて踊っていた。


「何やってんだ?」

「あっ、翔平くん。見たら分かるでしょ、文化祭のステージ練習よ」

「そうです先輩。わたしたち、ノベルキュートですっ!」


 ふたりはアイドルっぽくポーズを付ける。


「じゃあ次は側転から射撃のポーズねっ!」

「なあそれアイドルのつもりか? どう見ても戦隊ヒーローの戦闘シーンにしか見えないんだが……」

「翔平くん分かってな~い! これは戦隊ものじゃなくって、『ふたりはプリキュート』の戦いのシーンをイメージしたのよっ!」

「いや、どっちでもいいけど……」


 視線を変えると大河内が何やら針仕事をしている。


「で、大河内は何やってるんだ?」

「はい~、舞台衣裳です~ 演目は金色夜叉です~」

「またえらく湿っぽいヤツだな。しかしどうして金色夜叉なのに洋風のドレスなんだ?」

「今風にアレンジします~」

「脚本はあかねが書くんですっ」


 満面の笑顔で返されてしまった。


「今月今夜のこの月を、ボクのビームで吹き飛ばしてせてみせからねっ!」

「吹き飛ばすなっ!」


 状況が理解出来なかった。


「先輩の衣裳も用意してあるっすよ!」


 月野君がロッカーから何やら取り出してくる。


「執事の衣裳っす」

「って、なんだそれ!」

「翔平くん、白板を見てよ。昨日翔平くんが新聞社に行ってる間に全部決めておいたから」


 小金井の言葉に僕は白板を見る。



 文化祭(最終案)

 ■テーマ: 全部盛りで行こう!

 ★ステージの部

  ・アイドルライブ(ノベルキュート)

  ・華麗なる小芝居(脚本・深山っち、主演、佳奈先輩)

 ★模擬店の部

  ・アイドル喫茶だけど執事がいても問題ないよねっ!

  ・同人誌即売会もあるよ

  ・作家さんサイン会もあるよ(翔平くんが手配)

 ★その他

 ・とんこつラーメン替え玉殺人事件って、どう?



「ねっ、全部盛りでしょっ!」

「全部盛りでしょっ、じゃねえよ。こんなにたくさん出来るのかよ! しかも作家さんサイン会って誰を呼んでくるんだよ!」


 しかし小金井は平然と。


「出来るわよ。みんなやる気だし。心配ないわっ」


 そう言うと僕に向かって意味ありげに笑う。


「今年の文化祭は全力疾走するって決めたの。ねえ、その方がいいんじゃない?」


 確かに。

 生徒会長の青木先輩は明日、夢野部長との話し合いの場を設けてくれた。でも、話し合いがすんなりと進むとは思えない。勝負事が好きな夢野先輩のことだ、文化祭が勝負の場になっても不思議ではない。


「小金井が言うとおり全力疾走はいいことだよ。でも、作家さんのサイン会って、僕には心当たりないし無理だよ」

「あれっ? おかしいわね。奈々世先輩は翔平くんならやってくれるんじゃないかって言ってたんだけど……」

「って、青木先輩に何か聞いたのか?」


 小金井は苦笑いしながら。


「別に。ただ奈々世先輩はね、ラノベ部を引きつけるにはラノベ作家のサイン会なんかいいんじゃないって言ってたわ……」


 うぬぬ…… 青木先輩、何をそそのかしてくれるんだ。


「あたしもそれいいなって思うし」

「えっ、いいのか小金井。お前ラノベは嫌いなんじゃなかったのか?」

「う~ん、ちょっと前まではそうだったけどね。繭香ちゃんとあかねちゃんが面白いラノベを教えてくれたし」

「……」

「本当は元々嫌いじゃなかったのよ。ただラノベ部の、特に夢野が鬱陶しかっただけ。それに……」

「それに?」

「ううん、なんでもない」


 そう言うと彼女は澄んだ目で真っ直ぐに僕を見る。


「翔平くんの願いのためなら、あたしはなんだってするよ! だから全部盛りで突っ走ろうよ」

「そうです。理由は聞いてませんけど弥生先輩からここが正念場だって聞きました。みんなで突っ走りましょうよ」


 立花さんまで目を輝かせている。

 退路は断たれているらしかった。


「なので翔平くんは作家さんとのコンタクトよろしくねっ!」

「いや、それは知らんっ! そんな人知らんがなっ!」


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