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秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第九章 夏の海には危険がちっぱい
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第9章 5話目

「うわあっ豪華ねっ!」

「どれも新鮮で美味しそう!」


 テーブル中央の大皿には大きなたいの活け作りが、シマアジやハマチ、イカ、アワビなどの刺身も添えられてドカンと鎮座している。

 その脇に置かれたサザエの壺焼き、あさりの酒蒸しのいい匂いも食欲をそそる。

 早速僕らは手を合わせる。


「いただきますっ!」


 日も沈み、お待ちかねの晩餐タイムだ。

「部長、刺身はひとり何切れずつっすか?」

「そんなの、喰った者勝ちに決まってるだろ!」

「いただくっす!」


 みんなの箸が一斉に中央の大皿に伸びる。


「この鯛、新鮮だから、甘みがあります~」

「ホント、アワビもこりこりしてて美味しいわ」

「喋ってるヒマがあったら食べるっす!」


 刺身の争奪戦争が始まった。


「あっ、そのトロわたしが狙ってたのにっ」

「先輩といえど容赦しないですっ、下克上ですっ!」

「いいもん、こっちのシマアジが美味しいんだもんね」

「ずるい、大きいの二切れも取った!」

「二切れ同時取りは反則だ!」

「じゃあ、箸二刀流でいくっす!」

「このゴマ豆腐も美味しいです」

「繭香ちゃん、豆腐はあとよ、早くしないと刺身なくなっちゃうわよ!」

「イカ刺しは細いからまとめてとってもいいっすよね」

「スプーンで根こそぎ取るな、箸で取れ!」


 かくして。

 刺身だけがあっと言う間に食べ尽くされた。


「ふうっ!」


 みんなちょっと落ち着いて、手元の料理に箸を付け始める。


「ところで今日、夢野が言っていたラノベ部に吸収合併って、どういう事かしら」


 小金井が初めて食べ物以外の話題を口にする。


「ああ、それは僕も気になってね。食べ終わったらちょっと城島に会いに行こうと思ってるんだ」

「じゃ、あたしも行く」

「えっ、それじゃわたしも」


 みんなが身を乗り出してきた。


「あんまりたくさんで行っても迷惑だろうし、僕ひとりで行くよ」


 そう言うと僕はゴマ豆腐を口に放り込む。


「ホントだ、ゴマの味が濃厚で、すっごくおいしい!」


          * * *


「よっ、羽月!」


 ホテルのロビーに城島が現れる。


「やあ城島、このホテルって中も凄く綺麗だな」

「うん、新しいホテルだからな」

「うちは相も変わらず去年も使った民宿だ」

「でも、あの民宿の食事って豪華だろ」

「そうだな、さっきも刺身の争奪戦がすごくってさ」

「去年もそうだったよな。あれは楽しかった」


 ふたり話しながらエレベータに乗って彼の部屋に向かった。

 カードをドアに差み部屋に入る。ベットが二つに小さなテーブルと椅子ふたつ。 液晶テレビも結構大きくて意外と広い部屋だ。


「一年生と相部屋だけど、彼は遊びに行ってるから。まあ座れよ」

「ああ、ありがと」


 ふたりは椅子に座ると昔の想い出話などに花を咲かせた。


「ところで今日、夢野先輩が言ってた吸収合併ってどう言うことだ?」


 僕は気になっていたことを城島に聞いた。


「俺もよく分からないんだ。ただ、夢野部長は事あるごとに「いつか文芸部はなくなる」、って言うんだけど。僕はラノベ部から文芸部に鞍替えする人が出ないように言ってと思うんだけどね」

「深山さんのように?」

「うん、特に最近文芸部は新聞への連載が決まったり、『無鉄砲』が大当たりしたじゃないか。だから心配してるんじゃないかな」

「なるほど、そうなのかな」

「俺も移籍しようかな」


 冗談めかして城島が笑う。


「何言ってるんだ、お前、次の部長だろ?」

「いや、多分違う」

「えっ?」


 城島は一年の時から部のムードメーカーで活動もきちんとこなしていた。ラノベ部の二年生は四人いるはずだけど、次は絶対に城島だと思っていたんだけど。


「多分、星野が次の部長さ」

「ええっ! どうして? だいたい星野って真面目に活動してるの?」

「う~ん、部誌に出稿したこともないんだよな、あいつ」

「じゃあ、どうして!」


 何度かラノベ部の出版物を見たけど、星野の名前は一度も見たことがない。


「う~ん、夢野部長はそう考えてるみたいなんだ」

「星野なんか女ナンパしてるだけじゃないか! 何故あんなヤツが部長なんだよ!」

「声でかいよ、羽月!」

「あっ、ごめん」


 ついエキサイトしてしまったけど。おかしいよ。絶対城島が次の部長になるべきだ。そう言えば、今の部長も順当なら左岸先輩だったはずなのに。ラノベ部の人選はおかしい。


「文芸部と同じで後任は部長が指名するからな。夢野部長にも何か考えがあるんだろうさ」


 確かにそうかも知れないけど。

 よその部の事とは言え、僕は何だか気が滅入ってしまった。

 彼の部屋をあとにしてホテルのロビーに降りていくと、左岸先輩にばったり出会った。


「あっ、左岸先輩」

「羽月くん、遊びに来てたんだ」

「ええ、城島の部屋に。そうだ、さっき城島から聞いたんですけど……」

「……」


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