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秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第八章 ロコドルの純情
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第8章 1話目

 第八章 ロコドルの純情



 きらめく無数のライトを浴びて、ピンクの衣裳に身をまとう立花さんが大きく手を振る。


「繭香ちゃ~ん」


 沸き上がる大歓声。


「皆さ~ん、ありがとうございました~!」


 僕みたいなスケベで変態でバカなクズ野郎にも素敵な笑顔を振りまいてくれる。

 たくさんのファンが一斉に彼女の元に駆け寄って。

 しかし彼女は、みんなに笑顔を振りまくと、ステージの向こうに消えていく。

 ありったけの声を振り絞り、必死に手を伸ばす僕の前を無数のファンが埋め尽くす。


「立花さ~ん 行かないで~」


 でも。

 彼女はアイドル。みんなのアイドル。

 どんなに叫んでも、どんなに手を伸ばしても、彼女はもう遠い遠い存在。


「ああっ、立花さん……」

「先輩~ さようなら~」


 ドサッ

 ガツッ


「ううう…… いででで……」


 ベットから転がり落ちた僕は頭をさすりながら立ち上がる。


「ああ、夢か……」


 ふと視線を落とすと、枕元に一冊の本。


『NZK49ersフォーティナイナーズ ビジュアルブック』


 昨晩はこのロコドルのファンブックを見ながら寝てしまったんだな。

 だからって立花さんがロコドルになる夢を見るなんて。

 彼女だったら夢に見たようにすぐに人気沸騰するんだろうな。

 そして僕なんて口も聞いて貰えなくなるんだろう。


「はあっ」


 何を考えてるんだ、僕は。


 ファンブックを見て分かったことは、49ersフォーティナイナーズのメンバーは地元のために一生懸命頑張っているらしいこと。

 元々、観光局職員の娘さん三人組から始まったグループだそうで、モデルや芸能事務所とは無縁だとか。ボランティアで頑張っていたらしい。

 人気が出てからはオーディションとかもしているそうだけど。


 そして、みかんの着ぐるみを着た『みかりん』と言うメンバー。

 アイドルなのに顔出しNGなんてあり得ないと思うけど。

 彼女はグループの精神的支柱だとかで、歌の作詞や振り付けをはじめ、ステージのシナリオや進行を一手に引き受けている才媛らしい。


 しかし、何故に着ぐるみ? 何故に顔出しNG?

 ま、あれか。

 才能には恵まれているけど容姿には恵まれなかったか、あるいは才能は飛び抜けているけれど年齢も飛び抜けているか、どちらかだろう。きっと。


 さて、今日は月曜日。

 そろそろ着替えて朝食を戴くとしようか。


          * * *


「おはようお兄ちゃん」


 食堂に入ると桜子が笑顔で僕を見る。


「おはよう桜子。あれっ、今日も凄いな、ありがとう」


 僕のトーストにマーガリンとブルーベリージャムが塗られてあった。

 最近桜子のサービスがやたらといい。

 今までトーストの準備は自分でやってたんだけど。


「えへへっ」


 笑いながら紅茶を啜る桜子。


「なあ、どうして最近こんなにサービスがいいんだ」

「うそはいけないって思って」

「うそはいけない?」

「うん。小倉くんの妹さんと話をしたときのため。もし小倉くんの妹さんが毎朝お兄ちゃんの朝食の用意をしていたら、「わたしもしてるわ」って言わないといけないでしょ!」

「そんな理由か」


「え~ ちゃんと感謝してよ! 「いつも兄に感謝されてる」って言わないといけないんだからさ」

「そんな理由か」


「お兄ちゃんってば!」


 ま、理由はともあれ、僕にとってはいいことだ。


「冗談だよ。感謝してるよ、桜子。桜子は最高の妹だよな」

「えへへへっ」


 おだてておけば、もっと良いことがあるだろう。

 妹もおだてりゃジャムを塗るのだ。

 僕はありがたくジャムトーストを頬張った。


          * * *


 キンコ~ン カンコ~ン


 その日もあっと言う間に授業は終わり。

 気が付くと放課後。

 僕はまたしても生徒会室に呼び出されていた。


「校外活動は、事前に届けを出さなくちゃダメでしょう!」

「はあ、でもあれは広告を取っていただけで……」

「疑われそうな場合も届けを出すのよ。このわたしがあなたの申請に文句を付けたことが一度でもある?」

「……ありません」


「でしょ。みんなわたしを松高のマザーテレサと呼ぶんですからね」

「この前はナイチンゲールでしたよね」

「そしてまたあるときは、西太后!」

「ごめんなさいっ!」


 やっぱり、怒られていた。


「校長先生、突っ込んでこなかったからいいけれど。あれ、わざと見逃してくれたのよ」

「はあ、すいません」

「じゃ、もういいわよ」


「あの、そういうわけなので、僕たち文芸部は地元の魅力を伝えるために取材をしようと思ってます。えっと、また申請を出しに来ますね」

「分かったわ。何かあったら相談に来なさい。これでもわたし、市内の観光スポットやお楽しみポイントは詳しいんだから」

「はい、ありがとうございます」


 僕は青木奈々世女史に頭を下げると部室へ向かった。


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