第7章 2話目
決定事項
ひとつ 季刊誌発行特別部費 千円を徴収する
ふたつ 「埠頭」共同発行をラノベ部に説得する ← 無理
みっつ 「埠頭」発行費用不足分をどうするか、各自考えて明日発表する
よっつ ポテチは川中町のスーパーねこ屋が安い
「えっと、これでいいかな」
僕は白板の前に立ってみんなを見回す。
「異議なしよ!」
「明日いい案を考えてきますねっ!」
「スーパーのねこ屋は~ 安いけど種類は少ないです~」
「定番があったらいいじゃないか、ポテチは!」
取りあえず目の前の問題である季刊誌『無鉄砲』の追加印刷費用は何とかなった。
あとは『埠頭』の発行費用をどうするか。
僕も今晩考えてみなくちゃ。
「じゃあ、『無鉄砲』の追加印刷始めましょうか!」
小金井の声が飛ぶ。さすが切り替えが早い。
「そうですね~ あっ、佳奈もリレー小説書き終えましたから~ 次、立花さんよろしくね~」
「はいっ!」
金はないけど活気があって。
みんなはまた生き生き役割をこなしていく。
と、
部室のドアが叩かれた。
トントン
「はいっ、どうぞ!」
「失礼します……」
「あっ、月野さんっ」
少しバツが悪そうに入ってきたのは、元イケメンシスターズの月野君。
「あれっ、どうしたの?」
「実は、とっても言いにくいんですけど、俺を……」
「……」
「文芸部に入部させて貰えませんか!」
「えっ?」
俯いていた顔を上げ、月野君は真っ直ぐに僕を見た。
「えっと、文芸部の部誌を読んで凄く面白くて、それで…… 本当はもっと前から、運動会の文芸部の応援見てていいなって思って、でも僕はあんな事したから。それでも、『無鉄砲』読んだら面白くて、やっぱりどうしても入りたいって思って!」
僕は部室を見回す。
みんな笑顔だ。
「勿論、大歓迎だよ!」
「あ、ありがとうございます」
「うわっ!」
小金井、大河内、立花さんの満面の笑顔。
深山さんに至ってはガッツポーズを決めている。
「じゃあ早速、この出来たての部誌を図書室と生徒会室に置いてきて!」
「部費もお忘れなく~ 毎月三百円。お支払いは現金のみの受付です~!」
人使いが荒い小金井と大河内。
「はいっ!」
それでも部誌『無鉄砲』を手に持って嬉しそうに部室を出て行く月野君。
「じゃ、わたしスーパーねこ屋に行ってポテチとジュース買ってきます!」
「さすがは繭香さん~、分かってらっしゃる~ 歓迎用だからどっさりよろしくね~」
頑張って喰えよ~、月野君。
「ねえ翔平くん、男子部員が入ってきて喜んでるでしょ!」
「あっ、よく分かるね、小金井」
「分かるわ、顔に描いてあるもの……」
「って、何するっ!」
小金井が僕の頬にニコニコマークのスタンプを押しつけていた。
「描いてあるもの!」
「描いたんだろが!」
鏡を見ながらほっぺたの印を拭き取る僕に、小金井が続ける。
「しかし、これでラノベ部との共同出版の可能性は完全に消えたわね」
「……ああ、そうかもな」
先週、青木先輩から予算半額の話を聞かされたあと、僕は左岸先輩と『埠頭』の共同出版について話をした。
左岸先輩が語った内容は僕の予想通りだった。
『埠頭』の共同出版を提案して推進していたのは左岸先輩。しかし文芸部を敵対視している夢野部長は強行に反対したらしい。
そもそも『埠頭』への思い入れが強くないラノベ部。星野が入部したことも相まって共同出版はしないと言う意見が趨勢になったとか。
「わたしももう一度努力してみるけど、正直、ダメだと思うの」
それが左岸先輩の答えだった。
「月野君がうちに来たとなると、夢野の態度は更に硬化するわ。何とか五万円で発行する方法を考えなきゃ!」
「そうだな、小金井。安い印刷屋とか探してみるよ」




