表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第六章 魔法少女がついた嘘
52/129

第6章 4話目

 月野君の前にコンソメ味と梅味と檄辛味のポテチが並ぶ。


「今日はひとりで来たのかい?」

「はい。先日きちんとお詫びができていなかったので」


 うつむき加減に反省の色を見せる彼。

 深山さんの気持ちを思うと簡単に許せるはずはない。

 でもイケメンシスターズ三人の中で一番マシなのは彼だった。

 深山さんを奪いに来たとき、月野君だけは深山さんに詫びていた。

 あとの二人は単なる色ボケ野郎だったけど。


「俺は、深山さんを騙して悲しませました……」

「騙して、悲しませた……」

 何故か立花さんが彼の言葉を復唱する。


「その事を許して貰えるとは思いません」

「許して貰え、ない……」

 立花さん、復唱しながら青くなってるような。


「でも、きちんとお詫びだけはしておきたくて」

「やっぱり謝らないと…………」

 立花さんの様子を気にしながらも、僕は月野君に声を掛ける。


「それは深山さんに言ってあげて」

 深山さんは自嘲気味な笑いを浮かべる。


「わたしはもう怒ってなんていませんよ。騙されたわたしも悪いですし」

「いや、深山さんは悪くないです。僕が悪かったんです。ごめんなさいっ」

「月野さん、あかね、今日は嬉しいですっ」

「えっ?」


 みんな深山さんの顔を見る。

 彼女は吹っ切れたような明るい顔をしていた。


「わざわざ謝りに来て戴いて。月野さん、ありがとうございます」

「深山さん……」


 拍子抜けするほど、あっさり丸く収まった。

 もうこれでいいよね。

 小金井、大河内、立花さん。僕はみんなを見て。


「月野君は夢野先輩に嵌められてあんな事をしたけど、でもこうやって謝りに来てくれた。ごめんって言ってくれた。もうこれでいいよね」

「ええ、いいわよ。だからほら、ポテチ食べなさいよ」

「はい~、そうです~」


 その時初めて月野君は笑顔を見せた。


「ところでさ、月野くんはラノベ部に入ったの?」

「いえ、入ってません。夢野先輩には破門され、先輩後輩の縁を切られましたけど」

 苦笑しながら彼は言う。


「いいんじゃないの、そんなの。こっちから願い下げでしょ!」

「いえ、あれで夢野先輩は後輩思いでいい人なんですよ。ただ女の子の事になると暴走気味というか、期間限定商品みたいというか……」

「何その、期間限定商品みたいって?」

「ああ、何でも許されると思ってるんです!」

「いま、さりげなく凄い事言ったね、月野君。ま、ポテチ食べなよ!」


 小金井は彼の前にコンソメ味、梅味、激辛味、そしてわさび味のポテチを並べながら。

「星野はどうしてるの?」

「ああ、星野先輩はラノベ部へ入りましたよ。何でも『女子部員勧誘担当副部長』に任命されたとか」


「「「「「はあっ?」」」」」


 五人の声がシンクロする。

「入る部を間違えてるわね。星野はアイドルサークルでも作ればいいのに」


「ところで……」

 月野君が遠慮がちに。

「ひとつ質問してもいいですか?」

「うんいいよ、乙女の秘密以外なら何でも」


「えっと、俺、まだ謝っていない人がいるんです」

「謝っていない人…… あっ!」


 みんな一瞬で理解したようだった。


「あの時のお姉さまは何処に?」

「あっ、それはね。そこは部長の翔平くんが説明するわ、ねえ、翔平くん!」

 あっさり振るなよ小金井!


「えっとね、彼女はね…… あっ、そうそう、彼女はね、月野君は深山さんに謝っていたからもういいって。許すって。そう月野君に伝えてくれって言ってたよ」

「そうなんですか。でも、俺、やっぱり本人に会ってちゃんと謝らないと!」


「月野君。彼女の秘密に触れたものは、謎のムキムキな男達によって薔薇の花園に連れ去られ、恥辱と陵辱の限りを受けながら新たな自分を覚醒させられて、二度とお日様のもとに戻れなくなるけど、それでも聞きたいかな?」

「いえ、何となくやめておきます」

「うん、それが賢明だよ」


「ちっ!」


 あれっ、いま深山さん、舌打ちした?

「深山さん、どうかしたの?」

「あ、いえ、何でもないですっ」

 少し焦ったように見えるけど。


 そんな僕らを不思議そうに見ていた月野君。

「じゃあ、お姉さまに伝言お願いします。ごめんなさいって。そして、もう一度お会いしたいって」

「分かったよ、伝えておくよ。もう一度会えるかどうかは保証しないけど」

「分かりました。お願いします」


 やがて彼が帰ると、安堵した僕は暫く放心した。


 五分ほど経ったのだろうか。

 気が付くと大河内は『無鉄砲』の原稿を持って来ていたらしく、深山さんとモニターを覗き込んでいる。

 小金井はウキャウキャ呟きながら、リレー小説の続きを書いているようだ。


「そうだ、立花さん!」


 僕は立花さんを見る

 ちょうど彼女も僕を見ていた。


「あの、先輩、お願いがあります」


 そう言う彼女は僕にベージュ色の付箋紙ふせんしを差し出す。



  今日の六時に

  川中町の公園に来てもらえませんか。



 綺麗な字。

 僕は小さく頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼやき、つっこみ、ご感想はお気楽に!(はあと)
【小説家になろう勝手にランキング】にプチッと投票
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ