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秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第五章 秘密の美女(ボク)に恋しなさい
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第5章 4話目

 翌朝。


 いつもより少しだけ早めに教室に入った。

 既に十人程度が歓談したり宿題をしていたり。

 そんな中、山本と話をしていた市山が声を掛けてきた。


「なあ羽月、聞いたか? 転校生が来るらしいぞ、それも凄い美人の!」

「えっ、うちのクラスに?」

「それは分からないけど、昨日下見に来てたんだって。モデルみたいに背が高くてスタイル抜群らしい!」

「ふうん、そうか。ごめん、ちょっと用事があって」


 深山さんの一件が気になる僕は生返事をして席を立つ。

 そして廊下に出ると、小走りで駆けてきた立花さんに出会った。


「あの、羽月先輩! ちょっとお話が!」

「あっ、立花さん、どうだった? 僕も話を聞きに行こうと思って……」

「それが、先輩、ちょっとこちらへ!」


 慌てた様子の立花さんは僕を階段があるホールまで連れてくると困ったような顔をして。


「さっき深山さんと話をしたんですけど、それが……」

 彼女はその時の様子を振り返る。



「ねえ、あかね。ちょっと話があるの」

「あっ繭香! 昨日はごめんね部活休んで」

「いえ、それはいいけど。それよりあかねは二年の星野先輩って知ってる?」

「えっ!」

「あと、A組の月野さん」

「……あの、さ、繭香には話すけどさ。わたしね、星野先輩と月野さんに告白されたの……」

「えっ!」

「わたし、こんなこと初めてで。友達に聞いたら星野先輩ってたくさん彼女がいるみたい。でも、わたしは嬉しくって。何股も掛けられてるとか遊ばれてるとか、そうかも知れないけど、でも、わたしは嬉しくて……」

「あかね……」

「月野さんにも、「君と友達になりたいって」って言われた……」



 立花さんは深山さんの言葉を僕に語りながら少し目を潤ませる。

「わたし、夢野先輩が裏で糸を引いているって言えませんでした…… あかねは星野先輩と月野さん、どちらにするかとか、まだ考えきれないみたいで。自分自身混乱していて、そんな自分を分かってるけど、気持ちが制御できないみたいで」

「なるほど……」

「でも、放っておいても傷つくのはあかねで、だからどうしたらいいか分からなくて」


 キンコン カンコーン


 予鈴が鳴る。

「分かった。昼休みに部室に集まろう。小金井と大河内も呼ぶから」

「はい、分かりました」

 取りあえず僕たちは各々の教室へと戻った。


          * * *


 昼休み。


 僕は弁当を持って文芸部に向かった。

 小金井と大河内、それに立花さんも弁当を持ち集まってくれた。


「昼食の時間に呼び出してごめん」

「何言ってるの、当然でしょ!」

「ありがとう。じゃあ、食べながら話をしようか」


 立花さんは僕に話してくれた今朝の出来事をもう一度他のふたりに説明した。

 話を聞きながら小金井も大河内も表情が暗くなる。


「酷いことをするわね!」

「純情な女心をもてあそぶとは~、月に代わっておしおきです~」

「そうは言っても深山さんを傷つけたくないし、実際どうしたらいいのか、考えが浮かばないんだよ」

 そう言う僕の顔を見て立花さんが追加説明をする。


「あかねって中学は名門の女子中らしいんです。今まで男の友達はいなかったみたいで」

「免疫ないんだ」

「はい。本人も分かってるみたいですけど……」


 みんなが顔を見合わせる。

 そして暫し無言。


 みんな打開策を考え込む中、最初に口を開いたのは小金井だった。

「星野のヤツ、とっちめてやろうか!」

「とっちめるって、そんなことしたって」

「そうね、意味ないわね。じゃあ、ここはストレートに直接問い詰めてやるわ!」

「私も助太刀します~」

 小金井と大河内が拳を交わす。


「じゃあ、あたしも月野さんを!」

「立花さん!」

「だって、あかねのためですよ。ここで黙っていては女がすたります!」


 ホントに我が部の女子は頼もしい。


「他に今できる事ってないからね。繭香ちゃん、宜しく頼むわよ」

「はいっ、弥生先輩!」

「ごめんな、僕は何も出来なくって」

「翔平くんは仕方ないでしょ! あいつら女には弱いけど、翔平くんが問い詰めても意味ないわよ。それより……」


 小金井は思い出したように僕に向かって悪戯っぽく笑いかける。


「聞いてる? 転校生が来るって言う噂。それもすっごく美人で背が高くて」

「ああ、聞いたよ。今朝市山から聞いた」

「えっ、二年生にもその噂があるんですか! うちのクラスでも同じ噂が流れてますよ。モデルみたいにすらっと背が高くて栗色の髪の凄い美女だって」

「やるわね、翔子ちゃん!」

「えっ、まさかその噂って、僕?」


「当たり前でしょ! 他に誰がいるのよ。昨日目撃したって言う化学部の岩本くん、今日早速ラブレター持って来てたらしいわよっ!」

「うぶっ!」

「ちょっと翔平くん、嬉しいからってご飯つぶ飛ばさないでよ!」


「うちのクラスの高田さんは~、早速薔薇の花束を~」

「ごめん。何だか気分悪くなってきた」


「そんなこと言って、ホントは嬉しいんでしょ、羽月先輩!」

「んなわけないよ! 立花さんまで何言ってるんだよ!」


「えっ、翔平くんってその趣味があったの? 薔薇組の方?」

「違うよ! 男になんか興味ないよ! 男より女、そして女より二次元だよ!」


「翔平くんの、ばかっ!」


 小金井に同じシチュエーションでバカ呼ばわりされたのって、二度目のような。

 でも、今日の小金井は大して怒ってはいなかった。


「でもね翔平くん。あたしも見たわよ、アニメの『おにたい』。あたし少し反省したわ、これからの女はもっと積極的にいかないとダメだってね」


 何を反省したのか分からないけど、あんまり見習っちゃいけないような……


「羽月先輩って二次元?」

 一方立花さんは僕の顔を見ながら小首をかしげていた。


「ともかく、また放課後に情報交換しよう!」

 僕は強引に話を納めると、弁当箱に残っていたりんごを口に放り込んだ。


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