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秘密の本は、わたしのお店で買いなさい!  作者: 日々一陽
第十二章 秘密の数だけ輝いて
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第12章 2話目

 文芸部室は文化祭の大成功祝賀会会場と化していた。


「遅かったわね、翔平くん!」

「さあポテチ食べ放題っすよ、羽月部長」


 生徒会室での用事を済ませて部室に辿り着いた僕を待っていたのは紙吹雪ならぬポテチ吹雪だった。


「おい、勿体ないことするなよ。うぎゃっ!」


 ウーロン茶が宙に舞っていた。


「いいじゃないですか~ プリン吹雪が吹き荒れていないだけでも~」


 プリンを頬張りながら大河内がまったりと呟く。


「じゃあ僕もプリン食べようかな」


 そう呟きながらテーブルに歩み寄ると目の前にプリンが差し出される。メイシルフィード特製巨大プリンだ。


「先輩どうぞっ。佳奈先輩差し入れの、非売品のプリンですっ」


 嬉しそうに微笑む立花さん。黒パンストが艶めかしい。


「文化祭の戦果もまとめておいたからねっ」


 小金井が指差す白板には文化祭の売り上げ集計が書かれていた。



 文化祭 結果発表

 ■文芸誌販売

   埠頭  230部 完売御礼

   無鉄砲 200部 完売(タダだけど)

 ■ざんねん喫茶

   売り上げ  15万6800円

    ケーキセット   172食

    プリンセット   118食

    パンケーキセット  82食

    クレープ     452食

 ■サイン会

   まおエロ 一巻  188冊 (売上げは遠野さんが笑顔で没収)

        二巻  158冊 (右に同じ。分け前なし)

 ■ノベルキュート ファンクラブ

   入会希望者  84名



「なあ、ノベルキュートのファンクラブって何だ?」

「なんだか、たくさんの人が応募してくれたらしくて……」


 小金井は困ったような顔をして、横目で月野君を見る。


「ごめんなさいっす。冗談で『ノベルキュート ファンレターはこちら。ファンクラブ入会希望も待ってるわん』って書いた投書箱を置いていたら、本気にした人がたくさんいて……」

「月野君が~ 『返信用封筒と一緒にファンレターを投函したら、もれなくお返事が貰えます!』なんて書いちゃったから~ そんなファンレターがたくさん投函されて大変なんですよね~」


 大河内の話を聞きながら立花さんも苦笑している。


「ホント、結構来てるんですよね……」


 立花さんの視線を追うとテーブルの上に束になったファンレターの塊がみっつ。


「やっと仕分けが終わったところよ」


 ポテチを頬張りながら小金井も苦笑い。


「仕分けって?」

「繭香ちゃんへのファンレターとあたしへのファンレター、それにふたりへのファンレター。このみっつ」

「ファンレターって…… これからも頑張ってくださいとか、応援していますとか、もっと短いスカートがいいですっとか、そんなのか?」


「「う~ん……」」


 小金井と立花さんは顔を見合わせる。


「そう言うのもありますけど……」

「今度デートしませんかとか、僕と付き合ってくださいとか、半分はそんなのだよね」

「えっ!」


 何だろう。急に僕の胸がざわつく。


「そ、それで、その返事って? まさかデート受けたりとか……」

「もう、翔平くんったら、何必死になってるのよ?」

「あくまでファンレターですから。お礼はしますけどデートとかはしませんよ」


 ふたりは僕を見てくすりと笑った。


「でも、弥生先輩と繭香は頻繁に告白されてるですよねっ。放課後の校舎裏とか屋上とか下校途中の公園とかプールの真ん中とか引っ張りだこですよねっ!」


「そうなの!」

「もう、あかねったら」

「隠さなくてもいいと思うですっ! 繭香が迷子にならないように待ち合わせ場所まで道案内をしてるんですよね、弥生先輩」

「あかねちゃん、そう言うことは言わないの!」

「……ごめんなさいです」

「告白って……」


 思わず立花さんを見る。

 じっとファンレターの束を見つめる彼女の横顔は野に咲くスミレのように清楚な気品を想わせて、大輪の向日葵のような笑顔とはまた違う一面を見せてくれる。


 束ねられたファンレター。

 どれが誰へのものなのか分からないけど、こんなにたくさん……


「あらっ、ファンレターに嫉妬してくれてるの翔平くん!」


 小金井の声に我に返る。


「どっちに嫉妬してるの? あたしへのファンレター、それとも繭香ちゃんのファンレター?」


 嫉妬?

 立花さんには恥ずかしいところを見られて僕の恋は終わったはず。

 今更ジェラシーなんてあるはずない……


「別に嫉妬とか、そんなんじゃないから。って言うか、このプリンやっぱり美味しいね」

「じゃあまた店長に無理言いまくって貰ってきますね~ プリン!」


 大河内の声に僕は愛想笑いを浮かべた。


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