第4話
その4
私が和馬と知り合ったのは
中学生の時
1年生のころから同じクラスだけど
口をきいたことはなかった
入学したての頃は小さくて
目立たない男子だったのに
2年生に上がるころには
背も高くなって、顔もはっきりしてきて
急にモテだした
そのころから和馬の周りには女のうわさが付いて回るようになった
でも私には関係ないことだった
はずなのに
見てしまったのだ
いわゆる修羅場ってやつを
夏だったような気がする
部活もないし、暑いし早く帰ってアイスでも食べようと思っていたとき
廊下の真ん中で和馬と彼女らしき人が揉めていた
絶対別れない!と泣き叫ぶ彼女が和馬のほほをぶった
びっくりして目が離せないでいた私は、最悪なことにぶたれた和馬と目が合ってしまったのだ
「あ、姫条さんだ♪今帰り?」
「・・・・・・蒼樹・・・くん?」
この修羅場でなんでそんなノー天気でいられるの!
だめだ、一刻も早くここから去らないと
すぐに和馬から目をそらして
「じゃあね」と足早にその場を去ろうとしたら
「まさか!あんた姫条と付き合うから私と別れるって言ってるの!?」と
とんちんかんなことを和馬の彼女が言いだした
はぁ!何それ!
なんで今ちょっと言葉を交わしただけでそんな風に思えるんだ!
「ちがうよ!姫条さんは関係ないよ!」
という和馬の言葉を無視して
彼女は私の胸ぐらをつかんで詰め寄ってきた
「ちょっとかわいいからって調子に乗るな!」だの
「泥棒」だの「軽い女」だの
低レベルな悪口を言いだすから
つい、そう・・・本当につい
彼女を放り投げてしまったのだ
やりすぎたとは思うけれど、後悔はない