降雨、順調と追跡
「で、面白いものって?」
「此れだ」
家に着き、真夜中を越したが、幽霊たちと雹は元気そう。
そもそも夜中は幽霊たちの活動時間か。
俺も寝たのでそんなに眠くは無い。
「何此れ」
「小屋を見付けてな、其処にあった白骨死体が抱えていた。白骨死体は女性だったのだが、其の女性が書いた日記だ」
「ふぅん…預かっててもいいかな?」
「私は構わない」
時雨は首を横に向けて俺の方を見る。
「?」
「いや、見付けたのは想儀だから一応聞いておこうかと思ってな」
「別にいい」
「じゃあ預かっとくね」
雹はボロボロの日記を脇に置く。
一瞬会話が途切れた。
此処で聞いておこう。
「今回の肝試し、私用があるって言ってたけど何だったんだ?」
「ん、ちょっと追い掛けてる霊が居てね。彼処に居ればよかったなと思って。他にもあるけど、そっちは大体分かったから」
雹は少しだけ表情を真剣なものにした。
俺は気になったが、その表情を見ると訊くに訊けなかった。
「私は霙に合流してくる。お疲れ様」
雹は日記を持って窓から飛び出ていった。
「忙しい奴だな」
「実際忙しいんだろう。追い掛けている霊が居ると言っていたし」
「どんな霊なんだろうな」
「何であれ面倒そうだ。関わりたく無いな」
「雹なら巻き込んできそうだけど」
「まぁ…其れなら其れで構わんのだがな」
時雨は少し嬉しそうに顔を上げ、天井を眺める。
さて、風呂に入ってくるか。
腹も減ったのでさっさと入ってこよう。
「紗奈、すまんが飯用意していてもらえるか?」
「分かりました」
あまりこういう頼みごとはしたくないんだけどな。
ふと、周りの音に耳を澄ませてみる。
幽霊たちの話し声に紛れて、窓を叩く雨の音が聞こえてきた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「雨?ああ、好機だ!此の儘追い詰めるぞ!」
ヘッドセットと思考を介して霙と陽葉に連絡する。
幽霊は水気の多い場所を好む。
雨の日の夜は何処でも幽霊が活発になり、一般人にとっては危険度が増すが、斬霊師にとっては好機。
雨が降ってきたのは予想外ではあるが、此方に有利に働く予想外。
此処でなんとしても捕まえる。
「陽葉、奴との位置は?」
「南に直進中、私は今背中を追ってる。距離はやや遠い」
「おーけーおーけー」
霙が私と反対方向から囲むように追跡してる。
真っ直ぐ逃げるなら陽葉が、横に逸れるなら私と霙が捉える。
斬霊師に気付いて逃げるということはある程度の意思知性があるということ。
だからといって此れ以上逃げられる訳にはいかない。
此奴を追うのは今日で終わりだ。
刀を喚び、腰に構えて速度を上げる。




