日常、再開
瞬間、爆音が響いた。
「なっ、なんだ!?」
俺も、霧咲も、時雨さえも何が起こったか理解出来ていなかった。何が起きたかは直ぐに分かった。理解は出来なかった。
隣にあったはずの祠が、跡形もなく木っ端微塵に砕け散ったのだ。
「なぁ?」
つい間抜けな声が出る。
「これって…」
大体分かってる。
「成功でしょうか…」
そうじゃなきゃ、突然建物が爆発するはずもない。爆弾でも仕掛けられていなければ、だが。
「本当か?」
時雨は疑問に思っているようだ。
「霧咲、どうだ?成功なのか?」
「祠が消滅した時点で、時雨様と私が存在しているということは、少なくとも、寄り代の移動は成功している筈です」
霧咲が、何かを探るように俺の体のあちこちに手を翳す。
「心幹に時雨様の魂を感じます」
心幹とは心のある場所だそうだ。
「じゃあ成功…か」
「やってみて良かったですね!」
妙に自慢気且つ、嬉しそうな霧咲。見た目からは想像しにくいテンションの上がり方だ。
「これで一段落だな」
時雨は何事もなかったかのように腕組みをする。
口付け、という感覚はなかったので、俺も割と平静だった。時雨のお陰だな。
「これからどうするんだ?」
「私たちは玖乃川様が亡くなられるまで、一生玖乃川様の御側に」
「へ?」
「何故驚く。地縛霊みたいなものだと言っただろう。私たちは、お前から離れられん」
分かっちゃいたけどさ。
「と、いう訳でとりあえず家へ行こう。階段やら地面に座るのはもう飽きた」
「誰の家に」
「順応性は高いと思っていたのだが」
時雨は、やれやれ、と溜息を吐く。
整理する時間くらいくれてもいいじゃないか。
「私たちが家に行くのがそんなに嫌か?私たちを受け入れたのは想儀の方だったと思うが」
「まあ、いいけど」
午前零時過ぎ。人影一つ、影二つ。
俺の日常は少しだけずれた。…少しならいいんだけどな。




