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告白、心の内

靴を履き替え、正門を抜ける。


「では、また夜に」

「おう」


門を出てすぐに翠雨と別れる。

マカを家まで送り届け、帰宅。


「ただいま、っと」

「おかえりなさい」


霙がエプロンを着けて出迎えてくれる。

なんかこう…素晴らしいな。


「あれ?またお姉ちゃんは一緒じゃないんですね」

「帰って無いのか?」

「はい」

「雹なら帰ってるよ?」

「「え?」」


陽葉が白シャツに黄色い半纏、下は短パンという面白い格好で棒アイスを咥えている。

本当に式神なのかと疑いたくなる格好だ。

いや、俺の中の式神像も定まっちゃいないが。


「二階の窓から入ってきて、想儀さんの部屋で寝てる」

「何でそんなややこしいことを…」

「お姉ちゃん、早く寝たい時はいっつも塀を飛び越えて直接部屋に行く癖があるんです…多分其れを擬似的に行ったのかと」


塀って…10m以上はあったあの塀か?


「どうやら今夜が楽しみみたいだな」

「ああ…」


どんだけ楽しみにしてんだよ…

ま、分からんでも無い。


「さて、俺も寝るかね…」

「あの、今夜何かあるんですか?」

「ちょっと肝試しに行ってくる。霙も来るか?」

「私と陽葉は夜の巡回があるので」

「そうか。ふわぁ…眠いし、ちょうどいいな。21時半に起こしてくれ」

「分かった。おやすみ」


みんなに見送られながら二階へ上がる。

陽葉の言った通り雹は俺のベッドで寝息を立てていた。


「なんつー無防備な奴…」


雹は制服を床に脱ぎ捨てて下着姿で寝ていた。

其れが分かるということは布団も被らずに寝ているということ。

見た目は小さい女の子でも中身は19歳なんだから、もうちょっとそういうところ、気にしてほしいものだ。


「俺も居るんだし、なぁ」


女性だけなら問題無いかも知れないけど、いや、問題はあるか…将来的に。

俺はそっと布団をかけてやる。


「ふふ、世話のかかる子ね」

「うお!?」


今日は驚かされてばっかりだな…


「驚きっぱなしね」

「分かってんならよせよな…そういや今日は大人しかったな」

「観測者だもの」

「観測者?」

「気にしないで。其れより、年頃の女の子の下着姿を見て何とも思わないのかしら?」

「年頃っつったって…見た目子どもだからなぁ…」

「あら、成長しないんだから仕方無いじゃない」


確か、奥義取得時の見た目から変化しないって言ってたな。


「ねぇ、貴方はもう少し自覚した方がいいわ。人を惹きつけるチカラが貴方にはあるんだから、人の好意に気付きなさい」

「其の…人を惹きつけるチカラって何なんだ?」

「聞きたい?」

「ああ」


雫の表情が固くなったのを見て、俺は頷く。


「寝たいでしょうから手短に済ませるわね」


ベッドの足元、端の方に腰掛ける雫。

俺は椅子に腰掛け、雫を見据える。


「心幹の意味から話そうかしら。まだ理解して無いわよね?」

「ああ」


初めて聞いた時からさっぱり。


「簡単に言えば心の広さ、豊かさ。一般に心が広いと言われている人は通常の人の2~2.5倍ね」

「俺は…どうなんだ?」

「通常の人の8倍よ」


………

とんでもねーな…


「其の心の広さは誰をも惹きつける。幽霊を数人受け入れることも出来るってこと。そして貴方に惚れる人が多いのも其の所為」

「はぁ…」

「何?其の微妙な顔」

「いや、何で俺はそんな特異なチカラを持って産まれたのかな、って」

「両親が心の広い人なんじゃないの?」

「ん…まあそうだな」


確かに俺の両親は心が広いが…


「もう一つ、面白い話聞きたいかしら?」


雫が笑みを零しながら問う。

まー此処まで聞いて聞かない訳にもいかんだろう。


「聞くよ」

「陽葉ちゃんの記憶を見た時に一緒に雹の記憶も流れ込んできて、私の中に封印しておこうと思ったんだけど、貴方には伝えておこうと思って。貴方が雹の心を惹いた瞬間のことを」


興味深いな、其れは。


「簡単に説明するとね、雹は貴方と出会う前から貴方のことを知って、惚れていたの」

「何…?」

「名も無い道で貴方とすれ違った時に貴方の心を見て、惹かれた」


雫の説明を纏めると…

俺に惹かれた雹は何とか接触しようと策を練った。

時雨と紗奈を斬るフリをして近付こう、と思い立った。

時雨に何度も近付き、追い返されるフリをして時雨の記憶に残り、出会った時の時雨との関わりも作った。

作戦は成功、俺と同居するまでになった…


「おかしいとは思ってたんだ。雹が時雨の悪戯程度で追い返されるなんて」


最初の頃の時雨と紗奈に対する態度、憐れまれるような態度は嘘だったってことか。


「私が話せるのは此処までね。此れ以上知りたければ本人に直接聞いてみなさい。じゃあ、おやすみ」

「ああ…ありがとう、雫」


雫は柔らかい笑顔を見せ、部屋を出て行った。

俺は椅子を立ち、雹の寝ているベッドの枕元へ行き、腰掛ける。


「雹…お前は俺のことを…」


雹の頭を撫でようと頭に手を伸ばした。


「………」


雹と目が合った。


「…いつから聞いてた?」

「最初っから」

「はぁ…悪かったな、仕舞っていた記憶を聞いちまって」

「いいよ別に。知ってもらいたかったけど言い出しにくかったことだから。多分…雫は其れを分かってたんだろうけど。じゃ、私は降りるね」

「おい、待て!」


ベッドを飛び降り部屋を出て行こうとする雹を呼び止める。


「何?」

「お前は俺のこと、好きなのか?」

「好きだよ。大好き」


雹はとびきりの笑顔を見せ、部屋を出て行った。


「………」


一人残された俺は床に敷いてある布団に座り込む。


「大好き、ねぇ…」


雹だけじゃあないんだろうな。

さて、これからどうすっかなぁ…


「寝るか…」


取り敢えず、夜に向けて躰を休めよう…


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