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察知、勘と直感

「なんや、騒がしい子やなぁ」


音伊先生はニコニコしながら雹の退室を見届ける。


「ほな、片付けしよか」

「片付け?」

「流石に此の儘にはしておかれへんやろ。さ、やるで」


俺に向かってウィンクする音伊先生。

雹は此のことを見越していたのか、そうでないのか。

部室の近くには水の通っている水道があり、其処で洗い物を済ませる。

十数分後、片付けが終了した。


「いやぁ、みんなでやると早く済むなぁ」


音伊先生は鍋の入った袋を肩に掛け、腰を伸ばす。

おお、スタイルもいい…


「何処を見ている?」

「ひぇ?」


いつの間にか翠雨が横に立っていた。

いや、時雨も右隣に立っている。


「今のはどっちが言った?」

「さあな。それより想儀君、何処を見ていた?」


もうどっちが喋ってんのか分からなくなってくる。

取り敢えず今のは俺の呼び方と眼鏡をかけていることから翠雨だと分かった。


「何処でもいいだろ。俺はいちいちお前らに何処を見てるか報告しなけりゃいけねーのかよ」

「普段なら気にも留めんが、其の視線が想儀らしくなかったのでな」


今度は時雨か…


「お前ら落ち着け。喋るのはどっちかにしろ」


時雨と翠雨は顔を見合わせる。

そして、翠雨が先に視線を逸らし、紗奈と談笑に入る。

と、時雨は時雨で窓を開け、空を眺め始めた。


「おいおい…」


どっちかは問い詰めろよ。

いや、別に問い詰めてほしい訳じゃないんだけど…ちょっと寂しいじゃねぇか。


「そう君」

「おぅ!?」


突然現れた声に間抜けに驚いてしまった。


「ご、ごめん…驚かせちゃった?」

「いや、驚いてなんかねぇよ?」


ミエミエとかいうレベルじゃないくらいの嘘。


「で、何だ?」

「其の…何処を見ていたのかな、って」


ちょちょちょ…


「いやぁマカが気にすることじゃあ…」

「ちょっと、気になるな」


ううむ。

マカがこんなこと聞くなんて珍しい。


「どうしても聞きたいか?」

「う、うん」

「後悔しないな?」

「そんな大層なことなの?」

「大したことはねーよ。音伊先生を見てただけだ」

「そう…」

「どうした?」

「ううん、何でもない。あの二人に伝えてくるね」

「え?ああ…」


止めようかと思ったが、マカがあの二人と話してくれるなら本望だ。

未だ窓の外を見詰める時雨へ声を掛けるマカ。

成長したなぁ…


「玖乃川君」

「ぬぉ!?」


もう横とかから不意に話し掛けてくるの止めてくれねーかな。


「そないに驚かんでもええやん」

「す、すみません」

「お礼は君が最後や。片付けの手伝い、ありがとうな」


背の高い俺を見上げて礼を言う音伊先生。

笑顔が素敵ですね。


「いえいえ、音伊先生の奢りで食べさせて頂いたんですから。そうでなくとも当然ですよ」

「ふふっ、ええ子やなぁ。先生が撫でたろか?」

「いやぁ…」


是非とも撫でてもらいたいが、遠慮しておこう…


「あの、想儀、でいいですよ。下の名前で呼んでもらっても」

「そう?ほんなら想儀君、と呼ばせてもらおかな。それとも呼び捨てか…あの子と同じようにそう君、とか」


悪戯な笑みを浮かべる音伊先生。


「ま、まぁ好きなように…」

「冗談や、冗談。其の呼び方はあの子だけの特別なもんやろ?」

「そういう訳じゃあ」

「まあまあ。ほな、また後でな」


後半の言葉は部室に居るみんなに送り、陽気に手を振り部屋を出て行く音伊先生。


「なんか…雹に似てんなぁ」


大きくは似ていないが、根本の言動は似ている気がする。

子どもっぽいところとか、特に。


「ああ、私もそう思うよ」


時雨が俺の肩を叩く。


「さ、一旦帰ろう。今日の夜は長いぞ」

「ああ」


時雨は部屋を出て、俺たちを待つ。

俺が鞄を持って時雨に続き、更にマカ、紗奈、翠雨と続く。


「鍵はどうするんでしょう」

「其の辺に無いか?」


一度部屋に戻って探してみる。


「ねぇな…」

「放って帰っても問題無さそうな部屋だがな」


翠雨が少し呆れた目で部室内を見渡す。

部室に有るのはパイプ椅子とそこそこのテーブル、鍋の時に使った器、ゴミ箱、ロッカーくらい。

そもそも此の廃棟に来る人も居ないだろう。


「んじゃ、今日のところは此の儘帰るか」

「そうだな」


俺たちは廃棟の廊下を歩き、下駄箱を目指す。


「で、どうだ?雨は降りそうか?」


廃棟の階段を降る途中、時雨に問う。


「ん…いや、空は快晴、風の向き、速度、雲の位置的に今夜から明日にかけて此の地域に雨を降らせる程の雲は来ないよ」

「そういうことじゃなくて、時雨の勘で」

「うむ…分からない、と言っておこう」

「時雨にしちゃあ珍しい返答だな」

「そうか?」


性格はともかく能力は万能に近い時雨が曖昧な答えを出すなんて。


「想儀が何を考えているかが分かるようになってきた。私は想儀が思っている程万能では無いぞ」

「思考を読むんじゃねぇよ」

「私と想儀は繋がっているから其の気になれば思考を読むことも出来るが」

「やめとけ」

「ふ、勿論、そんなことはしないさ」


ま…分かってるけどね、時雨がそんなことしないってのは。


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