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心中、それぞれの想い

 祭りの会場である神社に近付くにつれ、浴衣を着た、それらしい人が増えていく。

 震えるマカの左手を雹が、右手を俺が握る。雹の隣に霙、俺たちの後ろに紗奈、前に時雨。まるでマカの護衛をしているSPのようだ。

 時雨と紗奈は、何も言わなくてもマカを護ってくれる。

「ここからだな」

 長い参道に様々な露店が並んでいる。

「まずあれ。リンゴアメ」

「あっ」

「おっと」

「ぐお」

 いきなり走り出すもんだから、マカが足を縺れさせて転びそうになる。マカを引っ張っていこうとする雹を引っ張り返す。

「襟掴まなくてもいいじゃない…」

「いや、すまん…急だったから」

 リンゴアメを人数分購入。

「焼そばだ」

「ああ、焼そばだな。今リンゴアメ買ったとこだが」

「こんなんは買ったもん勝ちなんだよ」

 何と勝負してんだ。

「射的!」

「お、射的か。俺得意だぜ」

「下手なやつは大抵そう言うよね」

「…勝負するか?」

「後悔しても知らないよ」

 猟銃のようなモデルガンを持ち、横に並ぶ。マカは右手で俺の服の裾を握り、左手は霙に握ってもらっている。

「さて、と」

 思いっきり身を乗り出し、高得点の下の段にある、そこそこの点の的を狙う。

 俺の放ったコルクの弾丸は、見事というか当然というか、命中し、的が倒れる。

「そんなちまちまやってたら勝てないよ?」

 そうは言うが、リーチの差は歴然なので、射撃の腕自体が同等ならば、これで勝負が決まるようなもの。

「ふむ…」

 遊びにしてはやけに真剣な顔で、銃口を動かしている。狙っているのはどうやら一番上の段の的のようだ。

「ここだ!」

 雹の放ったコルクは、的に当たる。だが高得点の的は中々倒れないように出来ている。

「どんなもんよ?」

 軽い音を立てて、的が倒れた。

「まだまだこれからだろ」

 渡された弾丸は七発。柄にもなく熱くなってしまった。

 結果は…

「後悔しても知らないって言ったのに」

「そんな…」

 負けた…だと…

 雹は一発も外すことなく弾丸全てを高得点の的に当て、全て倒した。

 俺はまあ、そこそこの点を三つ程しか倒せなかった。

「全部高得点なんて…反則じゃないか…?ん?反則?」

「景品なんだろうな?」

「なぁ」

「何?リベンジは受け付けません」

「まさか未来を見てたってことは無いよなぁ?」

 奥義の一つ、未来視。銃口を動かす度に未来を見て、当たる未来が見えたらそこで射つ。こうすれば外れる確率はゼロに近付く。

「ん、んな訳ないじゃない…」

 明らかに動揺したな。分かりやすいやつめ。

「それならいいんだけどさ」

 わざと引っ掛かってやる。

「人を疑うなんてねぇ?」

「ああ、そうだな。俺が悪かった。許してくれ。すまなかった」

「え?いや、そんな謝られても…その…」

 手をパタパタさせて困惑している。時雨が雹をからかう理由が分かる気がする。

 が、素直過ぎる雹をからかうのは心が痛むので、ここらへんにしておこう。

「ほら、景品だってよ…でけぇなおい」

「在庫余りなのかな」

 やたらでかい熊のぬいぐるみが出てきた。雹の半分くらいの大きさはある。

「ちょ…前が見えない…」

 ぬいぐるみに負ける十九歳…

 持ってやりたいが、マカの為に両手を塞ぐことは出来ないし…

「よこせ」

 一生懸命にリンゴアメを舐めていた時雨が、ぬいぐるみを引ったくる。

「持ってくれんの?」

「永遠の忠誠を誓うなら持ってやろう」

「じゃあいいですー」

「冗談だ。紗奈、そっち持ってくれ」

「分かりました」

 ぬいぐるみの頭を時雨が、足の方を紗奈が抱える。

「どんな風の吹き回しなのさ」

「お前は私に出来ないことが出来る。その礼だと思えばいい」

「何それ」

「本音は、こんなとこでお前がぬいぐるみ相手に時間を食うのが見ていられなかった。憐れみに近いな」

「返せ」

「嫌だ」

 時雨は大人なのか子どもなのか…

「マカ、何か欲しい物あるか?」

「ん…綿あめ…かな…」

「綿あめか。毎年あっちの方に…あれ?」

 霙が居ない。

「っと、あんなところに」

 射的の時の雹同様、真剣な面持ちで金魚を掬っていた。

 上手くもなく下手でもなく、といった感じで、四匹程掬った辺りでポイが破れた。

 そして、リリース。

「持って帰らないのか?」

「あ、はい。金魚掬いは掬って終わりだと思っていますから。持って帰って大切に出来ない訳ではないですけど、金魚が本当に欲しい人が大切にしてくれれば、私はそれでいいのです。掬うのが楽しいので」

 そう言って、器をおじさんに返して立ち上がった。

「綿あめ買いに行くけど、行くか?」

「はい!」

 そのつもりで周りを見ると、

「マカ、あーん」

「あ、あーん…あつっ…」

 雹がマカに焼そばを少し分けてあげていた。

「どう?」

「美味しい…かな…ありがと」

 ぎこちなく笑うマカ。あれは嫌なんじゃなくて、本当に熱かったんだろうなぁ。

「楽しいか?」

「うん…」

「やっぱ俺一人じゃどうにも出来ないな、こういうのは」

 たくさんの人と触れ合うことが大事なんだろう。

「そっ、そう君にはたくさんお世話になってるし、感謝も凄いしてる、よ?」

「どうしたんだいきなり」

「私はそう君のお陰で生きていられているの…」

「大袈裟だな」

「かも知れないけど…」

 マカが握る手に力をいれる。

「これからも、私の我儘…聞いてくれますか…?」

 何を言い出すかと思えば…

「当然だ。どんな些細なことでもいいからな。頼りまくってくれ」

「うん…!」

 マカは柔らかく微笑んだ。



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